シティライフアーカイブス 佐井寺の茅葺き屋根


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佐井寺の茅葺き屋根

現在、そして未来にもつながる過去の情報を取材、編集し、記録する特集です。
北摂の歴史から、私たちの住むまちの魅力を学び知る機会になればと思います。
第27回は「吹田市佐井寺の茅葺き屋根」について紹介します。


歴史案内人


元毎日新聞編集局長で関西大学文学部非常勤講師の深井麗雄さんが1年次生、赤坂怜美さんらと佐井寺地区を取材しました。

 



日本昔話しをほうふつとさせる茅葺き屋根が全国的に減りつつある。大阪でも例外ではないが、吹田市佐井寺地区で最近葺き替えた茅葺きの農家を見つけた。その農家で聴くと、先人の知恵や意外な苦労がうかがえる。マンションが増えるなかで、水田や農家が案外残っている佐井寺地区の魅力を探ってみた。

茅葺き屋根住宅の魅力と葺き替え

 くだんの農家の小田龍太郎さんによると、茅葺き屋根の母屋は江戸末期の建築で、茅が腐り雨漏りがするようになってくるため、1世代に1回くらいの間隔で茅の葺き替え工事を行っている。

茅葺き屋根は一般的な屋根と違い、夏と冬の温度差が少なく、過ごしやすいという。茅の厚さが35センチくらいもあるので断熱効果があるためらしい。夏は涼しく、冬は暖かいというわけだ。台風などの影響についても、被害を受けたことは
ないようだ。



吹田市佐井寺にある茅葺き屋根


 

茅葺き屋根の意外 -カラスのキッチン-

 困ることは、カラスの悪さだ。カラスは自分の巣を作るため、その材料としてちゃっかり屋根の茅を取って行くのだという。また、茅が腐ると虫がつき、それをカラスが好んで食べにくる、ということが度々起こっているらしい。カラスにすればマイホームの資材置き場であると同時に、グルメを楽しむキッチンでもある。

対策として、針金を茅葺の中に入れ、茅を取られないようにしたり、貝の光の反射でカラスを寄せ付けないようにしているそうだ。



 

茅のメリットと悩み

 屋根の材料として茅が使われる理由は、茅は海岸に生えている植物で、満潮時になると30センチくらい海水に浸かる点にあるという。塩分を含むため、腐りにくいというのだ。

 しかし、茅は次第に減少傾向にあり、昔は十三の淀川から取っていたそうだが、茅が取れなくなってしまい、それから岡山県の海岸の方へ移った。しかしここもコンビナートができ取ることができなくなってしまった。今では青森県から茅を刈り取り持ってきているそうだ。

また、近畿で茅を刈る人が減ったことも、使える茅が少なくなっている原因になっているという。

 

佐井寺の農業と「牛仲間」

 小田さん宅のある佐井寺地区はかっては典型的な農村だった。それが昭和の末期から都市化の波に洗われ、昔ながらの農法が徐々に姿を消していった。そこで1992年にオープンした吹田市立博物館が佐井寺地区の農作業風景を映像として残そうと、地元の農家の協力で撮影した。それが今でも残っていてビデオコーナーで見ることが出来る。

 佐井寺には「牛仲間」という言葉がある。耕運機などの機械がなかったころ、牛は貴重な働き手だった。それで農家が3〜4軒で一頭の牛を飼い、交代で世話をした。それが牛仲間だ。佐井寺自治会の会長、西盛(しげる)さんは5年前まで牛を飼っていた。住吉大社のお田植え神事にも牛を提供していたが、牛を住吉大社と自宅間を1往復させる車代が15万円もするので牛を手放したという。



佐井寺地区の農作業風景を再現した写真。地元農家の協力で実現し
た。1989年、吹田市立博物館による撮影。




 

取材を終えて

 日本の昔話に登場するような茅葺き屋根の農家が大学近くにあることに気づ
き、取材をさせてもらいました。冬は暖かく夏は涼しい家屋で地球温暖化の防止
にもつながるわけですが、「カラスが大敵」などの苦労が意外でした。
関西大学文学部 1年次生、赤坂怜美


この記事を書いた人:

シティライフ編集部
北摂・阪神の地域情報紙『シティライフ』の編集部です。 市民記者の皆様と一緒に、地域密着の情報をお届けします。

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