【北摂パブリック紀行】野間の大けやきとありなし珈琲


魅力的なまちには、誰でも利用できたり、気持ちよく過ごせるパブリックな“場”があります。そこに人が集い、その場づくりに参画する人が生まれることこそが「まちづくり」につながるからです。このコーナーでは、そんな北摂の“パブリックな場”を紹介していきます。


取材・文/山本 茂
北摂のまちづくりに長く従事。現在は千里市民フォーラム代表など。
趣味は山登りと料理。

シティライフ2015年11月号の掲載記事のノーカット版


素敵なまちには、“みんなが利用できる素敵な場所”がある。そんな市民や企業が中心になってつくった北摂の「パブリックな場」を訪ね、人とともに紹介します。第1回は、大阪北部の能勢町東郷地区にある樹齢1000年の「野間の大けやき」と、そこで来訪者に珈琲を提供しながら能勢の魅力を伝え、移住する人も増やしたいと活動しているグループ「大きな樹」です。満開のコスモスがよく似合う10月の初め、野間の大けやきを訪れ、珈琲をいただきながら「大きな樹」代表の平田さんからお話を伺いました。

≪野間の大けやき≫


野間の大けやきは、樹齢1000年と推定されている高さ約27m、幹周り約13m、最大枝張は約39m×約36mの巨樹であり、国の天然記念物に指定されています。現在は、北にある野間神社に合祀された旧蟻無(ありなし)神社の鏡内にあり、神木として地域の人々に大切に守られてきました。

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野間の大けやき


2004年、大けやき周辺の広場・駐車場の整備とともに、大けやきに関する資料、能勢の民俗資料などを展示する目的で「けやき資料館」が整備されています。

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けやき資料館とくつろぐ地域のみなさん


≪「大きな樹」の活動のはじまり≫

野間の大けやきがある東郷小学校の児童数は現在32人と非常に少ない。2011年に大けやきのある東郷学校を廃止し、能勢町西部の大阪府民牧場跡地に統合する話が出た。このままでは東郷地域は、ますますさびれる。自分でできることをやろう!と、2011年12月に7人が集まって、「東郷地域おこし協議会」の準備委員会を開催したそうです。話し合ったのは、空き家を減らし、高齢化や子どもの減少を食い止め、子どもの声を絶やさない(持続する)まちをつくること。
どこか能勢に似たようなところで地域の活性化を実現した例はないかと調べていたとき、徳島県神山町に空き家の活用などによる活性化の好例(※)があると聞き、ヒアリングに行った。そして、漠然と人を増やすのではなく、来てもらいたい人に住んでもらい、まちが元気になっているとの話に感心したそうです。
※「日本の田舎をステキに変える!」をミッションに、ITベンチャー企業の「サテライトオフィス」の誘致、「ワークインレジデンス」による移住の推進、「神山アーティスト・イン・レジデンス」などのアートプロジェクト、実践型の人材育成を行う「神山塾」などによって若者が集まる魅力ある田舎を実現し、過疎的地域活性化のモデルとして全国的に注目されている。推進役を担っているのがNPO法人グリーンバレー(理事長:大南信也)。http://www.in-kamiyama.jp/about-us/



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神山町(グリーンバレーのホームページより)


神山町から帰ってみんなで話し合ったことは、野間の大けやきには人が来ている。ここを拠点に能勢町東部の情報を発信し、もっとたくさんの人に来てもらい、そして移住もしてもらえたら・・ということだったようです。

≪活動の始まり≫

野間の大けやき周辺は、2004年に資料館、広場などが整備され、以前より訪れる人も増えていましたが、大けやきに来る人がどんな目的で来ているのかは良く分からなかった。これを知るためにも、2012年11月にオープンカフェを試験的に実施し、ここでアンケートを実施したところ、野間の大けやきには小京都で知られる「篠山」や茅葺き民家集落で有名な「美山」に行く途中に、トイレ休憩に寄る人が大半。能勢を目的に来る人は少ないことが分かったそうです。これではいけない、野間の大けやきを目的に来て、地域の人と交流してもらい、能勢の情報を提供できたらいいなと、オープンカフェを本格的に始めようと考えるようになったとのこと。

≪NPO化とありなし珈琲本格スタート≫

野間の大けやきの広場とけやき資料館は能勢町が管理しています。町と話し合った結果、特定の団体が広場を利用することは認められないが、公益目的の法人なら認めようとの話になり、2014年4月に「特定非営利活動法人大きな樹」を設立、同時にオープンカフェ「ありなし珈琲」を本格的にオープンさせました。ちなみに、移動式のスタンドは知人から譲られたものとか。大けやきをバックに、スタンドとグリーンのテント、椅子などがとってもオシャレです。

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移動式スタンドと平田さん(左)



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珈琲をいただきながらくつろぐビジター



現在は、大けやきを何度も訪ねるリピーターが多くなったとのこと。大けやきでは、2月からフクロウが子育てをして、5月に巣立つ。また4月下旬にアオバヅクが南からやってきて、7月下旬に帰っていく。この姿を見たり、写真に納めようと訪れる人も多いとか。


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フクロウとアオバヅクの展示(けやき資料館)


平田さんの話を聞くために訪れた10月の初めの日も、リュックサックを背負ったハイカーたち、車でドライブ中のカップルやファミリー、バイクに乗ったライダー、カメラを構えた写真撮影の人など、いろいろな世代・目的の人がたくさん訪れ、珈琲をいただきながら、幸せそうな顔で大けやきを眺めていました。
そして、奥さんに「家のことを何もしてくれない」とこぼされると話す平田さんですが、その顔はどことなく嬉しそう。みんなに喜ばれる場所をつくり、地域の活気も生まれてきたという自負があるからでしょうか。



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ありなし珈琲


≪大きな樹の活動≫
大きな樹のメンバーは27名、30~50代と比較的若い。大きな樹は、珈琲サービスが目的ではない。もっと多くの人に能勢に来てもらい、楽しんでもらい、住んでもらいたいと願っている。このために、大けやきに近いバイパス道路沿いの草刈り(月一回)やアジサイの手入れを行っているそうです。能勢電鉄妙見口駅から大けやきまで歩いてもらおうと、2015年3月に、廃道に近かった林の中の道をボランティアと一緒に整備して「ありなしの道」として蘇らせた。能勢町東部の酒蔵(島田酒店→秋鹿酒造→能勢酒造)を訪ねるツアーも実施。サツマイモの植え付けと収穫祭、むかし遊びや紙芝居などのイベントも不定期に実施している。年末には、しめ縄づくりと餅つき大会も予定しているとか。


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けやきの下に咲いていたコスモス


野間の大けやき周辺の広場やオシャレ感いっぱいの「ありなし珈琲」が若い人たちを惹きつけているのか、近年東郷地域にはカフェやレストランが増えたそうです。
平田さんたちの願いは、能勢を訪れる人に加えて、能勢に移住し、農業を支えたり、地域に必要な店を始めるなど、能勢の力になってくれる人が増えること。現在は、野間の大けやきという「点」だけど、これを「線」「面」にしていきたいと。平田さんたちの活動によって、能勢町の東部がもっと楽しく、にぎやかになることを願ってやみません。


この記事を書いた人:

シティライフ編集部
北摂・阪神の地域情報紙『シティライフ』の編集部です。 市民記者の皆様と一緒に、地域密着の情報をお届けします。

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