阪神・淡路大震災20年
そのときに備えて
“知る”という防災


震災ビジュアル阪神・淡路大震災から20年が経ちました。そのあいだにも日本では数多くの自然災害が起こり、2011年3月に襲った東日本大震災の被災地では、復興に向けた活動が続いています。20年という節目を迎え、私たちは未来のために何を考え、何を備えるべきなのでしょうか。『災害と共に生きる』ための方法を、一緒に学んでいきましょう。

 

3人のキーマンに聞く
身を守る『備え』とは?


災害が襲いかかったときに、自分の、そして大切な人の命を守るために備えるべきこととは?さまざまな「防災」をお聞きしました。

 

大阪大学大学院 人間科学研究科 減災人間科学・ボランティア行動学教授
認定特定非営利活動法人 日本災害救援ボランティアネットワーク理事長
渥美公秀(あつみ・ともひで)先生のお話
渥美先生
1961年大阪府生まれ。神戸大学文学部勤務時代に西宮市の自宅で阪神・淡路大震災に被災。これをきっかけに、災害ボランティア活動の研究や実践を続ける。1997年に現職就任後、NPO法人日本 災害救援ボランティアネットワークの理事長を務め、イラン南東部地震、新潟県中越地震など国内外の災害現場で活動している。

 

 

 

「防災」と構えずに
日々の生活に取り入れる

阪神・淡路大震災での私自身の被災体験を含めて、NPO法人日本災害救援ボランティアネットワークを設立し、防災・減災に関する研究・啓発を進めてきました。でも、まちを要塞のようにガチガチに固めるような防災は現実的ではないですし、「防災訓練をしよう」と呼びかけても具体的なイメージがわかないと関心を持ちづらいですよね。それより、日々の生活の流れに防災を取り入れるほうが自然で、無理なく継続することができます。そこで私たちはあえて「防災」という言葉を使わずに、災害に備える大切さを伝えています。
その一環として実施しているのが、「わがまち再発見ワークショップ」。小学校低学年の子ども対象に実施しており、自分の住むまちを探検しながら防災拠点を発見し、マップにまとめて発表します。子どもたちに楽しんで参加してもらうのも大切なのですが、この企画の本当の狙いは大人にも関わってもらうことなんです。
まず、子どもたちにはこれが「防災活動である」とは伝えていませんので、「防災拠点を自然に見つけさせることが目的である」ということを知っている地域住民に、子どもたちの道案内をしてもらう必要があります。親たちが仮に防災に関心が低かったとしても、自分の子どものことなら一緒に参加してくれますよね。子どもが楽しくまちを歩き回り、それに関わる大人もいつの間にか地域の防災について詳しくなっていく。そこに意義があるんです。

何人かのチームに分かれ、子どもたちがメモを取りながら、探検隊になったつもりでまちを歩く様子。大人はそっと防災拠 点へ誘導するだけ。

何人かのチームに分かれ、子どもたちがメモを取りながら、探検隊になったつもりでまちを歩く様子。大人はそっと防災拠点へ誘導するだけ。



わがまちワークショップ2

(左)小学校へ戻り、自分たちが取ったメモを頼りにマップを作成。気付いた点を話しあい、共有する。(右)まとめたマップをそれぞれ発表。別のチームのマップを見ることで、自分たちのチームとは違う視点に気づくことも。 写真提供:日本損害保険協会



いざというとき、「命を守る」ことに
専念できる環境づくり

世間で防災が意識され始めてから、防災グッズや非常食などの備蓄をする方が増えたと思います。しかし、私があの日被災して思うことは、真っ暗闇で何が起きたか分からず、突然タンスが倒れかかるような状態の中で、とっさに防災袋を抱え外に避難することは難しいということです。限られた条件のなかで役立つ防災グッズも時には必要ですが、なにより一番大切なことは、例えばタンスが倒れてこないように固定するなど、何か起きたときに何も起こらない環境を作っておくことが大事なのです。
また、近隣の方達とつながりを持つことも重要です。不安な環境下で人間関係を一から作るのはとても難しいので、
日頃から挨拶をしたり、地域イベントに参加したりして顔を合わせましょう。もし避難生活を送るようなことになって
も、知り合い同士なら安心して助け合えます。いざというときに「助け合って命を守る」ことだけを考えられるような
環境づくりを習慣づけてほしいと思います。

 

 

特定非営利活動法人プラス・アーツ 理事長
永田宏和さんのお話
永田さん
1993年大阪大学大学院修了。2005年阪神・淡路大震災10周年事業で防災学習プログラム「イザ!カエルキャラバン!」を開発。2006年NPO法人プラス・アーツ設立。現在、全国各地及び、タイ、フィリピン、中米、南米チリなど海外での防災教育普及に取り組む。企業の防災アドバイザーも数多く務める。

次世代と世界に伝えたい
新しいカタチの防災 

震災時に必要な知識を身につけてほしいと、子どもや親子を対象として始めたのが「イザ!カエルキャラバン!」です。これは、おもちゃの物々交換「かえっこバザール」と、ゲーム感覚で防災の知恵や技を学べる訓練プログラムを組み合わせたもの。「これなら家族で参加しやすい」と、神戸から全国へ、そして世界へと広がっています。
このイベントが広がるうえで大切なことは、地域性や主催者の方向性に応じて自由にプログラムを編集できるということ。なぜなら地域や国によって起きる災害が異なります。また、タイなどの自然災害が多い国でも「防災」という考え方が浸透してないため、命を守るためのプログラムを地域住民自身で作りあげ、継続していくことが重要だからです。近い将来、世界中で生まれたプログラムが様々な国で横断的に実施されれば、アイデアの行き交うプラットフォームができますね。
その他にもカードゲームで防災キーワードを覚える「みんなで遊んでたすカルテット」などで、防災について考えてもらうきっかけ作りをしてきました。これらを通じて、普段から親子で震災について話し合ってみる機会になればと願っています。

「イザ!カエルキャラバン!」の様子。子どもたちは訓練用の水消火器を使って、的当てゲームをしながら火事の時の対応や消火器の使い方を学ぶ。

「イザ!カエルキャラバン!」の様子。子どもたちは訓練用の水消火器を使って、的当てゲームをしながら火事の時の対応や消火器の使い方を学ぶ。



EVENT
HAT神戸連携防災イベント
「イザ!美かえる大キャラバン!2015」
1月25日(日)13時~16時
防災教育・啓発をおこなう様々な団体による防災の体験プログラムが並ぶ、国内最大規模の「イザ!カエルキャラバン!」。使わないおもちゃがあれば持っていこう。参加無料。
会場:JICA関西、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
http://1995kobe20th.jp/
問:078-335-1335(NPO法人プラス・アーツ)

issue+design〈イシュー プラス デザイン〉代表
筧裕介さんのお話
筧さん


1975年生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。1 9 9 8年株式会社博報堂入社。2008年山崎亮氏他とissue+design 設立。以降、社会課題解決、地域活性化のプロジェクトに取り組む。代表プロジェクトに震災ボランティア支援の「できますゼッケン」、育児支援の「親子健康手帳」など。

 

 

 

 


知恵と創造力で課題に向き合う


僕たちは地域が抱える社会課題を市民の創造力で解決し、安心して暮らせる社会の実現を目指しており、その中の一つとして災害に関する課題と向き合っています。例えば、南海トラフ巨大地震発生時に、大きな津波被害が予想される神戸の課題を解決するために神戸市危機管理室と共同開発したのが「神戸市津波防災ウェブサービス ココ
クル?」。これは現在地にどのくらいの高さで津波が来る可能性があるのか、画面の色とピトグラムでわかるようにしたスマートフォンサービス。安全な場所を正確に伝えられるよう、情報の整理を徹底しました。
また、過去の教訓を未来へつなげることも大切です。阪神・淡路大震災の際、「避難所で被災者同士が助け合うには?」という課題からできた「できますゼッケン」。仕組みはいたって簡単で、「散髪」「トイレ掃除」といった自分にできることを書いて背中に貼るだけ。東日本大震災の避難所では公式ツールになりました。
僕たちは時にコンペでアイデアを募集して、一人ひとりが知恵や想像力を働かせる大切さを呼びかけています。なぜなら問題と向き合う意志が、いざというときに力を発揮すると信じているからです。

INFO
「震災20年 神戸からのメッセージ発信」特設サイト
「新しい神戸をつくっている人々の話」
神戸市の事業の一環で開設。
「震災を経験した神戸だからこそできること」を発信していく。
http://1995kobe20th.jp/



この記事を書いた人:

シティライフ編集部
北摂・阪神の地域情報紙『シティライフ』の編集部です。 市民記者の皆様と一緒に、地域密着の情報をお届けします。

HP: http://citylife-new.com/


http://citylife-new.com/news/16955.html