【北摂パブリック紀行 Vol.6】 人が集まって、にぎやかなコンビニ


素敵なまちには、みんなが集まって楽しめる素敵な場所がある。北摂の“市民や企業が育てたパブリックな場”を訪ねるまちづくりシリーズ。第6回は、なぜか人が集まってワイワイガヤガヤのコンビニエンスストアです。

(シティライフ2016年4月号の掲載記事のノーカット版)

 

■「エンタメ教室」が開かれる不思議なコンビニ

JR吹田駅に近い吹田栄通り商店街。ここに2015年11月にできたコンビニエンスストア「ファミリーマート吹田栄通り商店会店」が面白いと聞いて、昨年の12月中旬に出かけました。栄通り商店街は、JR吹田北口から地下道をくぐって南に出たところにあります。ここにあるファミリーマート、1階は普通のコンビニです。

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栄通り商店街とファミリーマート

 

2階に上がってビックリ。広いイートイン(買ったものを食べられるスペース)に椅子が並べられ、子ども向けにボケ、ツッコミなどを伝授する「すいたエンタメ教室」が始まろうとしていました。子ども達がつぎつぎに集まり、始まりを待っています。この日は次の予定もあったので、不思議なコンビニと思いながら店を出ました。

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エンタメ教室を待つ子どもたち

 

■人で賑わうコンビニはどのようにできた?

2月下旬、改めてこの不思議なコンビニを訪れました。1階で食べ物を買って2階に上がると、約40席のスペースに10人ぐらいの人が食事や休憩をしています。私は、下で買ってきた豚まんとコーヒーで昼食です。

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イートインで食事や休憩する人々

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豚まんとコーヒーで食事

 

食事のあと、オーナーの清水慎一郎さんから話を伺いました。

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オーナーの清水慎一郎さん

 

住民のみなさんからは、「コンビニができて便利になった」「朝食などに利用できるのでありがたい」「気軽に2階が利用できる」と喜んでいただいています。コンビニは24時間営業ですが、イートインは6~22時に食事・休憩の他に、若いお母さんたちの集まり、子どもといっしょの生け花、がんに関する相談など、地域の色々なグループに利用いただいているとのこと。ボードに貼られたカレンダーには、イベントが開催される日にグループの名前が書き込まれていました。

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グループの名前が書かれたカレンダー

 

その隣には、各種グループのイベントの案内チラシなどが貼られていました。

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チラシが貼られたボード

 

イートインのあるコンビニは全国的に増えているが、40席もあるところは少なく、栄通りのような「イートインスペースを活用した、地元のイベントの開催などを通じて、地域および商店街の活性化に取り組むコンビニ」(ファミリーマートのホームページより)はめずらしいこと、ファミリーマートは今後地域密着型の店舗を増やしていく予定である。そして、地域のグループやみなさんに、もっともっと使っていただける場所にしたいと話されました。

さらに、このコンビニは一朝一夕にできたのではなく、何年にもわたるいろいろな人の想いや協力があって初めてできた。その中心にいたのが栄通商店会の会長・阪田孝次郎さんとのこと。そのあたりを詳しく知りたいと阪田会長を訪ねました。突然の訪問にもかかわらず、温かく笑顔で迎えていただいた阪田会長から、次のような話を聞きました。

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阪田孝次郎会長

 

栄通りは、かつては大変賑わった商店街だったけど、JR吹田の駅前再開発が行われた1980年頃から空き店舗が増え始めた。現在ファミリーマートが入っているところは、かつて花屋と文房具屋だったが、20~30年間空き家だった。阪田さんは、栄通り商店街をもう一度明るく元気にしたい、そのために地域の人が集まる場所(寺子屋やミニ繁昌亭など)をつくりたいと考えていた。阪田さんが行った理髪店で、たまたま隣にいたファミリーマートの人に進出を打診。それから数年が経過し、紆余曲折があったのちに、建物所有者の協力やファミリーマートの努力もあって、地域密着型のコンビニができた。

地域の人々が集まる場所にするために、知り合いに相談したところ、芸能界にも詳しいコラムニストの岡力(おか りき)さんの協力で「エンタメ教室」が開催されることになった。子どもを持つ若いお母さんたちに広報したいと、地域の市民グループに通じた長谷川美津代さん(※1)に協力を求めた。このことがきっかけとなり、「栄えるカフェIN吹田」と名づけられたイートインは、長谷川さんが代表をつとめる「NPO法人市民ネットすいた」が受付窓口など(※2)を行っている。

※1:吹田傾聴「ほほえみ」代表、「NPO法人市民ネットすいた」理事長など

※2:具体にはNPO法人市民ネットすいたが指定管理する「吹田市立市民公益活動センター(ラコルタ)」がグループの登録や利用の受付、調整などを行っている。

※3:登録団体は「吹田ホスピス市民塾」「コミ亭居酒屋」「吹田の空襲を語り継ぐ会」「Rojiura art street」「ミラクルマジック」「のぞみふれあいコーラス」「和(子どもと一緒に生け花)」「みくまり(若いお母さんたちの集まり)」など約25

 

■「コミ亭居酒屋」に出かけてみた

イートインのスペースは、実際にどのように使われているのだろう? そう思って、3月下旬に開催された、お酒や飲み物をいただきながらのだれでも参加できる交流会「コミ亭居酒屋」に出かけました。この日の参加者は20余名。年配者が多い中で、初めて来たという30代と思われる比較的若い4人が目立ちました。それぞれが下で買った食べ物やビールなどをいただきながら自己紹介。食べ物の交換も行われます。

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コミ亭居酒屋の自己紹介タイム (しま柄の後姿が長谷川さん)

 

それにあわせて、「東日本大震災のチャリティーイベントをやります」「小さな太陽光発電をめざします」「盲導犬を育てる会の写真展をします」「浜屋敷のさくらまつり、民博夜話に来てください」など、それぞれが関わっている活動やイベントが紹介されます。あわせて、案内チラシが配られます。

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配られた案内チラシ

 

時間の経過とともに、参加者の席がシャッフルされ、あちこちで色々な話が展開します。栄通りに近い中学校の同級生であり、吹田のまちづくりに興味があるという4人の若者は、パワフルなシルバーたちに囲まれて、ややタジタジだったようです。

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あちこちで色々な話題が展開

 

「いろんな人といろんな話ができて仲良くなれる『コミ亭居酒屋』・・いいでしょ」、長谷川さんが笑顔でそう話されました。普通は居酒屋で見られる風景が、コンビニ2階のイートインで展開されているのがかなり不思議・・・

 

■地域に貢献する商業施設へ

かつては大型のスーパーマーケットが商店街を潰すと嫌われ、その後コンビニエンスストアが地元の商業を侵害したり、地域の風紀を乱すと非難されました。しかし、阪神大震災などを契機に、コンビニは高齢者などに便利で、緊急時の食糧調達などに役立つ施設として認識されるようになりました。そして栄通り商店街のファミリーマートのように、今やコンビニを含む商業施設は、地域や商店街の活性化に取り組む時代になったようです。CSR(企業の社会貢献)なしでは企業が生き残れない時代なのかも知れません。

「地域に貢献するコンビニ」が実現したのは、地域を元気にしたいという阪田会長の長年の想いと働きかけ、地域密着型コンビニの先駆をめざしたコンビニ側の英断、阪田会長のネットワークである岡さん、長谷川さんなどたくさんの人々の協力があったから・・・。そして、「栄えるカフェIN吹田」は、これから地域の人々にもっともっと利用されるのだろうな。そんなことを思いながら、3月下旬というのに寒さが身にしみる夜の栄通り商店街を歩き、千里へのバスに乗りました。


この記事を書いた人:

山本 茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった”みんなが集まれる素敵な場所“を発掘し、人とともに紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
http://citylife-new.com/news/37235.html