【北摂パブリック紀行 Vol.9】元気いっぱいのシニアグループ・どこボラ


市民や企業がつくった“みんなが集まって楽しめる場”を訪ねる北摂パブリック紀行。第9回は、シニアたちがエネルギーを発散させて多彩な活動を展開する「どこボラ」です。(シティライフ2016年7月号の掲載記事のノーカット版)

■ひ孫のような子どもと楽しむ「天竺川鯉のぼり風舞フェア」

4月下旬、豊中市旭丘団地の横を流れる天竺川の上を数十匹の鯉のぼりが泳ぎ、招待された保育園・幼稚園の子どもたちが歓声を上げていました。ひ孫のような子どもたちを“ハイタッチ”で迎えるのは、70代、80代を中心にした泉丘小学校区の高齢者グループ「どこボラ(どこでもボランティア)」のメンバーです。今年で第3回を迎えた「天竺川鯉のぼり風舞フェア」と名づけられた催しは、まちを住みやすく美しくを合い言葉に「どこボラ」から生まれた「天竺川のぞみ会」と「どこボラ」との共催です。鯉のぼりの寄贈を受け付けたり、鯉のぼりをつけたロープを川の上に張ったりなど、すべてどこボラメンバーの“手弁当”仕事です。マンションが多く、鯉のぼりもあまり見られない地区の子ども達は、こうして天竺川を泳ぐ鯉のぼりをシニアたちと楽しむのです。この日、招待された豊中市の浅利市長の姿も見られました。

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天竺川を元気に泳ぐ鯉のぼり

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子どもたちをハイタッチで迎えるメンバー

 

■いつまでも元気に楽しもう「どこボラ歩こう会」

どこボラの中で毎月開催されているのが140回を超える「どこボラ歩こう会」です。5月中旬には奈良の東大寺周辺へ出かけました。朝9時半、約30人が桃山台駅に集合。電車に乗り、難波で乗り換え、奈良で下車・・そのたびに何人かがトイレに急ぎます。引率した瀧さんによると、トイレが近い車輌に乗るよう誘導するとか。どこボラのメンバーは、転害門~正倉院~二月堂~東大寺を約3時間ゆっくり歩き、最後は奈良駅の近くで“ご苦労さん会”をして、豊中に戻ってきました。

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桃山台駅に集合

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大仏池越しに大仏殿を眺める

 

■みんなで勉強「お楽しみ講座」

これより先の4月中旬には、“みんなで勉強”を・・と2ヶ月に1回の「お楽しみ講座」が地域の集会所で開催されました。この日のテーマは「太陽も必死で生きている」、講師はニュートリノなどの研究をされている土岐博先生(大阪大学名誉教授)。難しいテーマだから参加者が少ないのでは?との心配をよそに70名近くが集まり、資料を急いで追加コピーしなければならないほどでした。

太陽は核融合を繰り返しながら重力と戦い、エネルギーを発生させることにより、地球上の生物に住みやすい環境を与え続けている。土岐先生が難しそうな内容をわかりやすく話されたこともあり、講演が終わってから次々に手が挙がり、質問が相次ぎました。ほとんどは男性でしたが、宇宙の成り立ちなどに関心があるシニアがこんなにもいるのかと驚きでした。

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会場は参加者でいっぱい

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 講演する土岐博先生

 

■その他の活動

その1週間後には、年2回程度開催されている「ミュージックカフェ」“ときめき夢サウンド・ハワイアンの集い”がありました。これには、会場一杯の約130名が集まり、なつかしいハワイアンのメロディーに酔ったようです。

どこボラは、このほかにも、こだわる男たちの料理「キッチンプラザ」(3ヶ月に1回)、気軽にうたごころを楽しもう「あすなろ句会」(毎月)などがあり、新しく「映画を見て語る会」、テーマを決めてじっくり語る「ギロン会」なども企画されているようです。

 

■どこボラはっぴいニュース

どこボラの活動の中で大切な役割を果たしているのが「どこボラはっぴいニュース」です。最初は50部だったのが、近年はA4版×4ページのオールカラーで毎月800部を発行。開催された行事の報告、開催予定行事の案内のほか、「あすなろ句会」での投句のほか、「長い人生には その人だけの 出会い がある」と題する“メンバーの半生をふり返っての随筆”が掲載されています。表紙には“高齢者たちよ 力つたなきものたちよ 上を向いてみんなで青春しないか”と冠言葉が添えてあり、このはっぴいニュースがめざしているものが伺えます。

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元気いっぱいの「はっぴいニュース」

 

手にするだけで元気が出てきそうなはっぴいニュースを心待ちにしている読者も多いとか。ちなみに編集を行っているのは、書くことが好きだと言い、時代小説を数冊出版されているという西井弘和さん。なんと86歳だそうですが、お洒落でエネルギッシュなためか10歳は若く見えます。はっぴいニュースがどこボラのメンバーの心に火をつけ、新しいメンバーが集まってくる上で果たしている役割は大きいようです。

はっぴいニュースの発行には、費用がかかります。そのために過去2回の支援金を募集し、これまで約140人から約30万円が集まったとか。そして現在第3次の支援金を募っています。豊中市の「とよなか夢基金(市民公益活動基金)」の支援も一部得ていますが、行政に頼りきることなく、自分たちでお金と労力を出して、自立的に活動しようとしている姿勢が素晴らしいと思います。

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支援金を呼びかける記事

 

■どこボラはどのように始まった?

どこボラの活動がどのような経緯で生まれたのか、代表の吉澤久雄さんに伺いました。どこボラは、吉澤さんが地域の福祉委員会の会長をしていた2003年に、福祉委員会の一躍を担う“新しいタイプの福祉活動”をやろうと仲間たちと話し合って発足。「歩こう会」「キッチンプラザ」「お楽しみ講座」の3つを軸に活動を展開し、その後メンバーの数とともに活動は前述のように拡大したようです。

IMG_9893どこボラ代表の吉澤久雄さん

 

どこボラの理念はとてもユニークです。仲間のみんなと話し合って、「福祉」を「みんなが幸せになるための活動」と定義づけ、みんなの幸せをめざそう。そして、「老若、男女、障害のあるなし、強い弱い、上下、世話する人される人の区別なく、どこでも・だれでも・いつでも参加し、楽しみつつ自己実現しましょう」としたそうです。このオープンでフラットな理念が地域の高齢者たちの心をつかみました。このことによって、近年は校区外からのメンバーも増えているとのことです。

全国には、老人会、老人クラブなどの組織があり、健康づくりのための健康講座やグラウンドゴルフ、ボランティア活動、趣味・文化活動などを行っています。これらの中には、高齢者の健康・生きがいづくり対策として行政と歩調を合わせている例が少なくないようです。「どこボラ」の活動は、これらの活動に似ていますが、福祉の概念を広く捉えた地域の自発的活動からスタートし、多彩な活動へ拡大して行った点でやや異なります。吉澤さんによると、泉丘校区にも老人会があり、「どこボラ」に参加されているメンバーもいるとのこと。いずれにせよ、一つの小学校区の高齢者グループが自立して、これだけ多彩な活動を展開している例は稀でしょう。

高齢者一人一人が持てるエネルギーを全開して多彩な活動を展開するどこボラは、これからの超高齢社会に求められる“新しいゲンキ印の福祉”かもしれません。


この記事を書いた人:

山本 茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった”みんなが集まれる素敵な場所“を発掘し、人とともに紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
http://citylife-new.com/news/40538.html