【北摂パブリック紀行 Vol.11】ちょっと変わったまちかどの本屋さん


市民や企業がつくった“みんなが集まって気持ちよく過ごせる場所”を訪ねる北摂パブリック紀行。第11回は、子どもやママが集まる「ちょっと変わったまちかどの本屋さん」です。

千里ニュータウンの新千里西町にある笹部書店は、本屋さんらしくない本屋さん、なぜか人が集まる本屋さんとして、これまでいろいろなところで紹介されています。私も何度も訪れていますが、どんな人がどんな風に利用しているんやろ・・。NHKの人気番組「ドキュメント72hours」(※)ふうに取材してみたいと思って8月の初旬、笹部書店を訪れました.。しかし、折からの猛暑とともに、お店にも迷惑をかけられないと、72時間はおろか、数時間の取材でのレポートになりました。
※いろいろな場所を3日間密着取材することによって、想像をはるかに超える、多様で生き生きとした、人々の「いま」を紹介する番組(NHKホームページより)

 

■訪ねたのはイベントの日
8月5日の午後、笹部書店さんを訪れました。入口にテントが張られ、雑貨が並べられていて、いつもより賑やかな雰囲気です。尋ねると、一ヶ月に1回開催されている北摂のクラフト作家さんたちの作品を集めた展示販売とのこと。

DSCN2106笹部書店の入口

 

中に入ると、笹部さんの奥様が温かく迎えて下さいます。ぱっと見は普通の本屋さんです。

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一見普通の本屋さん

 

しかしよく見ると、奥のテーブルで数人のママと子どもたちが何かしています。この日は、月に数回開催されているイベントの日。「ステンシル体験ハンカチづくり」と「フォトアルバムづくり」でした。子どもたちもママと一緒に一生懸命です。いただいたチラシによると、8月は「ハンドジェルネイル」「夏休み親子リボン作り体験」「ブレスdeチェック」「大人のための朗読会」「パステルアートでうちわを作ろう」「『勇者たちへの伝言』サイン会」「保険の見直し相談」など、なんと10日間、13種類ものイベントが予定されていました。

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親子でフォトアルバムづくり

 

笹部書店の中には、どんなものが置かれているんだろう? あらためて店内をチェックさせていただきました。まず目につくのがパンコーナー。数は多くないですが、棚に手づくりのパンが並べられています。隣には、「コーヒー200円」などが書かれたボードがつるされ、軽い食事もできるようです。

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パンコーナー

 

入口近くには、駄菓子コーナーがあります。ここは、地域の子どもたちにとって大切な場所。お父さん・お母さん、おじいちゃん・おばあちゃんの頃と同じように、お小遣いをもって駄菓子を買いに来るようです。

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駄菓子コーナー

 

レジの下には、地域のサークルやイベントなどのチラシ・・・。地域の情報センターの役割も果たしているようです。

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チラシが置かれた情報コーナー

 

よく見ると、レジの下に堆肥の「とよっぴー」(給食の調理くずや食べ残しと街路樹の剪定枝を混合し発酵・熟成させた堆肥。豊中市とNPO法人とよなか市民環境会議アジェンダ21の協働による製造)も置かれています。「とよっぴー」が近くで手に入るので助かる・・と花好きのお客さんから言われるとのこと。

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とよっぴー

 

本のことを忘れてはいけませんね。本は、入口付近から雑誌類、趣味や実用書、文庫や新書など大人向けの本が約2/3を占め、奥には絵本・児童書など子ども向けの本が約1/3を占めています。入口付近で女の子が座って夢中で本を読んでいました。この子は文学少女になるのかしらん?なんて想像したり・・

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本を読む女の子

 

■ちょっと変わった本屋さんはどのように生まれ、使われている?
今の笹部書店は、どのように生まれたのか?店主の笹部勝彦さんに聞きました。約10年前、お父さんから笹部書店の経営を任せられた頃、本離れがどんどん進んでいた。これではいけない、まず人が集まってくる場所に変えなければ・・・。
そう考えた笹部さんは、本棚を減らし、読み聞かせや工作のためのスペース、喫茶や駄菓子のコーナーを設けた。そうすると、千里に引っ越してきた子育て中のママたちがやってきて、子どもを遊ばせながらおしゃべりするなど、少しずつ人が増えたそうです。ここで話しているうちに、同じマンションに住む住民同士であることが分かって、仲良くなった例などもたくさんあるようです。
子どもたちは、駄菓子を買いにやってくる。そして、笹部のおっちゃんやおばちゃんといろいろ話をする。子どもたちが「ささべ」と呼ぶ本屋さんは、いつの間にか子どもたちが下校後に家に帰ってから一緒に遊びに出かけるときの「集合場所」にもなっているようです。

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“こんにちは”と元気な笹部さん

 

ママたちの信頼が厚い「ささべ」は、子どもの「はじめてのおつかい」の店に選ばれることもあり、ちゃんと買い物ができているかしら?と、ママが木の陰でこっそり見ている場面もあるとか。
「ささべ」と一緒に育った子どもも、今や大学生や社会人。「ここによう来て遊んだんや・・」、かつての男の子が彼女を連れて来て、ちょっぴり自慢げに話すケースもあるようです。

 

■笹部書店はサードプレイス?
そろそろ失礼しようかなと思っていたら、「おっちゃん、あたってた」と男の子が入ってきた。どうやらくじ付き駄菓子が当たっていたようです。「ほんならもうひとつもってかえり」と笹部さん。「これ、ようあたるねん」、男の子は駄菓子をもう一つもらって出て行きました。

ママは育児から解放されてママ友とおしゃべりできる場所。子どもは友だちと待ち合わせしたり、遊んだり、夢中で駄菓子を選んだり、大人と話して少し背伸びした気分になれる場所。
笹部書店は、気楽に集まって、気さくに話したり、心地よく過ごせる、「自宅」でも「学校」「職場」でもない、「第三の場所(サードプレイス)」なのでしょうか?もちろん、“みんなの”という意味での「まちなかの事業者が育てた“パブリックな場所”」ですね。笹部さん、これからも子どもに人気の「ささべ」であり続けて下さい。

※あなたの近くの「いいなと思える場所」を教えて下さい。ありふれた、小さなところでもかまいません。

 場所ではなく、みんなが交流する場やネットワークでもかまいません。コメント欄にお書き下さい。


この記事を書いた人:

茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから・・・。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった素敵な場所を発掘・紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
http://citylife-new.com/news/43419.html