【北摂パブリック紀行 Vol.13】いろんな人が集まる“まぜごはん”なガダバ


市民や企業がつくった“みんなが集まって気持ちよく過ごせる場所”を訪ねる北摂パブリック紀行。スタートしてから1年が経過しました。今回は豊中市南部の庄内にある、いろんな人が集まって“まぜごはん”のような活動が始まっている「しょうないガダバ」です。

「庄内にいろんなことやってる“ガダバ”があるよ」と聞いた。ガダバ? 聞いたことない。ガダバってなんだ。今回のパブリック紀行は、ガダバの正体を見つけることからスタートしました。

■久しぶりの庄内へ
まだまだ残暑が厳しい9月の初旬、久しぶりの阪急庄内駅で下車。商店街を“西”にしばらく歩き、新しくできた道路(穂積菰江線)を越えたところで道をロスト。やっぱり庄内はわかりにくい。スマホで調べ、一筋北に行った交差点を西に行くと、住宅や医院、飲食店などが混在する通りにそれらしい雰囲気の建物が見えてきました。

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住宅と店舗が混在する通りにあるガダバ

 

入口付近に地場の野菜、陶器のとりかえコーナー、駄菓子などが並べられています。

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陶器とりかえと地場産野菜コーナー

 

ガラス戸の向こうに、テーブルを囲んで代表の小池繁子さん、管理人の井坂さんたちが談話中です。「いらっしゃい」と中に入れてもらいました。この日は、学校や家にいるのがつらい子どもたちが立ち寄れる「まちの保健室」を開催中でした。「誰も来てへんけど、来てても、来てなくても、いつもこんな感じ。どうぞ、どうぞ・・」と言われるままに、井戸端会議に入らせてもらいました。

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「まちの保健室」開催中の小池さん(中央)、管理人の井坂さん(右)たち

 

■小池さんって何者?

そもそも、このざっくばらんすぎる小池さんって何者?と尋ねてみました。小池さんは、若い頃は保育士だったそうです。結婚して、子育てが一段落した約10年前に、庄内の図書館で廃棄される図書を譲り受け、販売して得られるお金を地域に役立てる豊中市との協働事業である「しょうないREK」を立ち上げたそうです。ちなみに、RはRecycle、EはEvent、KはKawaraban。リサイクルとイベント、情報つなぎで地域を元気にする活動のようです。「しょうないREK」は、10月23日に開催された千里文化センター(コラボ)の「コラボまつり」にも古本市を出店し、大変にぎわったようです。

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コラボまつりでの古本市の様子(フェイスブックより)

 

「しょうないREK」の活動を皮切りに、小池さんの市民活動が加速していったのでしょうか、その後岡町駅近くで始まった「おかまちコミュニティカフェkitto」(2009年~)に参加します。小池さんによると「コミュニティカフェが事業になるかどうかに興味がありスタッフとして参加した」そうです。ここで、学生たちでつくるグループ「ODEN(Okamachi Deep Education Network)」といっしょに、主に一人親家庭や外国人などの学習サポートと居場所づくりを目的とする「わにまーる放課後塾」を実施。放課後塾には、庄内から電車に乗って通う子どもも多く、庄内でもやってほしいとの声があった。運良く現在の建物と、管理人として常駐していいという井坂さんを見つけ出し、セルフ塗装や内装工事を行って約1年前に「しょうないガダバ」がスタートしたとのことです。ここまで聞いただけで、事業を次から次に展開しいていった小池さんの執念のようなものを感じますが、本人にはいたって自然な流れだったようです。

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見たことがあるようなマークは絵が好きな子どものアイデア

 

■「しょうないガダバ」の活動あれこれ

話しているうちに、「しょうないガダバ」では、「わにまーる放課後塾」「まちの保健室」のほかにも、「ガダバアカデミー」(専門家を呼んでのディープな講座)、「ごはんの会」(一人よりみんなで食べる)、「なんでもガバダでDIY」(食事、木工などを自分でつくる)、「ゆるヨガ」、「先生のためのゆるカフェ」など、いろいろなことが行われていることが分かりました。

「ガダバアカデミー」では、これまで「君はハイチを知っていたか」(7月)、「パレスチナから遠く離れて」(9月)、「『生』と『死』を問い直す〜尊厳のある死を迎えるための『尊厳誕』とは〜」(10月)など、ディープな内容のセミナーが開かれています。子どものための放課後塾とはまた違う、ガダバのもう一つの顔です。
「しょうないガダバ」のフェイスブック

 

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9月のガダバアカデミーの案内

 

「しょうないガダバ」では、最近「カウチサーフィン」という動きが始まっています。「カウチサーフィン」とは、直訳すると「カウチ(ソファ)でサーフィンする」のような意味ですが、ゲスト(旅人)がSNS上でホスト(宿泊場所の提供者)を見つけ、多くの場合無料で宿泊させてもらいながら、国や文化を越えて交流することのようです。「しょうないガダバ」が登録を行ったところ問い合わせが相次ぎ、9月にはアジアを1年かけて旅しているイスラエル人のカップル、イギリス人の男性、10月にはブラジル人の女性がガダバに宿泊し、交流したとのことです。

 

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最初の宿泊者のカップル(フェイスブックより)

 

■「しょうないガダバ」のめざすもの

「しょうないガダバ」の新しい動きをもう一つ紹介しましょう。それは、10月に開催された「しょうないガダバ」に集まるメンバーの合宿です。場所は大阪市西成区釜ヶ崎にある「ココルーム」。一泊しながら、「宗教」「男と女」「LGBT」「差別」などいろいろなことについて語り合ったようです。研修がどうだったかは、「心地よい風の吹くところ」「またここに来て話したい!」「共有する時間、楽しかった!」などの感想がよく示しています。
研修の中味もさることながら、興味深いのは会場に「ココルーム」を選んだこと。ココルームは、「大阪・西成に誕生した野生的な庭とユニークな部屋を持つ36ベッドのゲストハウス。安宿の面白さに加え、地域に根ざした活動を10数年続けてきたココルームの幅広い活動が重なって、不思議な魅力を醸し出している。地域の人が入れ替わりたちかわりやってきて、旅人がいて、釜ヶ崎芸術大学やまちかど保健室など、いろんな活動があって、庭には鳥や猫、バッタがやってくる。」とホームページで紹介されています。

 

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「ココルーム」の入口(「しょうないガダバ」に似ている)

 

放課後塾、保健室、アカデミー、ごはんの会、DIY、ゆるカフェ・・・、「しょうないガダバってなに?」と思っていましたが、「ココルーム」での研修の様子を見て、ガダバが分かってきた気がしました。もしかして、小池さんたちは「ココルーム」のような場所をめざしているのでは?と・・

 

■ちがいを越えてともに生きることができる場所へ

私たちの国は、高度経済成長を経て成熟社会・安定社会へと移行しました。しかし、少子高齢化、グルーバル化などの影響もあって、若者の就職難、貧富の差の拡大、これらに伴い学びたくても学べない子ども、まともな食事ができない子ども、引きこもりなどの問題が出てくるようになりました。地域のコミュニティの変化などによって、居場所のない人、自己充実を実感できない人が増えていると言われています。いじめ、自殺、LGBT、外国人排斥など、問題をあげだしたらキリがありません。
そんな住みにくい世の中になったかもしれないけど、どっこいそうでもないよ。「しょうないガダバ」においでよ。顔を見て、心を少し開いて、自分の口で話せば、本当の自分、忘れかけていた大切なものが見えてくるよ。本当に困っていたら、助けてくれる人もいるよ。もしかしたら、君が他人の力になれるかもしれないよ。代表の小池繁子さん、副代表の上村有里さんをはじめ、「しょうないガダバ」のメンバーはそう考えているのではないのでしょうか。「しょうないガダバ」のパンフレットに、「しょうないガダバがめざすものは、いろいろな背景や文化を持つさまざまなひとたちが、ちがいを越えてともに生きることができる場所をつくること」と書かれているように・・・。

9月に「しょうないガダバ」を訪れたときの話に戻ります。別れ際に、「ところでガダバって何ですか?」と気になっていたことを尋ねました。そしたら、「“西”はアラビア語で“ガダバ”。“庄内の西”にあるから『しょうないガダバ』って名前をつけたの。そしたら、ガダバは西ではなかった。違うけど、まあいいかって・・アハハ」と返ってきた。
「ガダバをいろいろな人が、ゆるくつながりながら、使っていく場。ここに来れば楽しい、いろんな人に会えて、いろんな話が聞ける場にしていきたい。大切なのは、場所、つながり、遊びごころ」と語る小池さんたちにとって、名前は「ガダバ」でも「ガバダ」でも、はたまた「ガガ」でも、なんでもよかったようです。

豊かそうに見えながらさまざまな問題が出てきた21世紀の初頭に、豊中市庄内という下町感たっぷりのまちに生まれた、“まぜごはん”なような多彩な活動を展開する「しょうないガダバ」のこれからに期待しましょう!


この記事を書いた人:

茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから・・・。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった素敵な場所を発掘・紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
http://citylife-new.com/news/45626.html