【北摂パブリック紀行 Vol.18】食を通じた多文化の交流拠点“comm cafe”


市民がつくった“みんなが集まれる素敵な場所”を訪ねる北摂パブリック紀行。今月は、多様な外国人市民が“食”を通じて多彩な交流を展開している「comm cafe」です。

 

■チャリでcomm cafeへ

箕面市に住む外国人の市民が母国の料理を日替わりで提供し、これを楽しみながら日本人・外国人が交流する“ちょっと変わったカフェ”があると聞き、1月の暖かい日にチャリで出かけました。千里ニュータウンを抜けてしばらく走ると、広い道路沿いにおしゃれな店が並ぶ小野原地区に出ます。

小野原地区の街並み

 

通りの角を曲がってすぐに端正なデザインの「箕面市立多文化交流センター」が現れます。

箕面市立多文化交流センター

 

玄関を入った正面が「comm cafe」です。

comm cafe入口

 

■いずみさんのベトナムランチをいただく

どうやらこの日のメニューはベトナム料理のようです。掲示板には、この日のワンデイシェフ、ベトナム出身の「いずみさん」のプロフィール紹介がありました。「明るい性格が魅力的!日本在住30年。インドシナ難民として香港にたどり着く。沖縄に漂着した夫と日本で暮らせるようになるまでの3年間、毎日ベトナム料理の屋台を営みながら2人の子どもを育てました。看板メニューのブンボーフエ(古都フエの牛肉麺)は連日1時間で完売するほどの人気メニューだったそうです。」とある。

いずみさんのプロフィール

 

久々のベトナム料理を期待しながら、comm cafeへ入ります。午後1時を回ったというのに、女性客を中心に半分以上の席が埋まっています。

comm cafe内部

 

おじさんはちょっと場違いかな?と思いつつ、勇気を振り絞って席に着くと、外国人のボランティアが注文をとりに来ました。この日のメニュー「ベトナムランチ」には、牛肉のフォーと、A:パインセオ(お好み焼き風)、B:揚げ春巻き、C:生春巻きのいずれかがセットになった3種類が用意されていました。いずれにもデザートがつき、値段は850円。揚げ春巻きのセットを注文しました。

この日のメニュー

 

注文を終え、やや冷静になると、まわりの様子がわかってきました。隣の席では韓国語の会話のレッスン。韓国出身者が日本人に韓国語を教えているのでしょう。うしろの席は、英語と日本語の混じった会話が飛びかうにぎやかなグループ。本場の外国料理を楽しみに来ている2~3の日本人女性グループもありました。

料理を待っている間に、テーブルにあった「1月のカレンダー」を見ました。土・日・祝日を含むほぼすべての日に、韓国・バングラデシュ・ベトナム・モロッコ・スウェーデン・香港・多国籍などの料理とワンデイシェフの名前が書かれています。

原則として日曜日・祝日を除く日の9:30~11:30が朝カフェ、11:30~14:00がランチタイム、14:00~17:00が午後カフェ。日曜日・祝日は、「シェフおすすめのスナックorスウィーツ」(9:30~17:00)、「モーニングセット」(9:30~11:00)のようです。

1月のカレンダー

 

まもなくランチが運ばれてきました。テーブルに置かれたベトナム料理は、見るからに“本場もん”です。料理をいただくと“本場もん”であることが確信になりました。約10年前に訪ねたホーチミン、フエ、ハノイのどこでも味わったことのない奥深い味でした。「いずみさん」の料理がかつて1時間で完売したことを納得です。

牛肉のフォーと揚げ春巻きのベトナムランチ

 

■comm cafeはどのようにできたか

外国人と日本人が混ざり合って、本場の外国料理を楽しみながら交流するcomm cafeはどのようにしてできたんだろう? アポなしでしたが、リーダーのキムさんとボランティアリーダーのチェさんが気持ちよく応対してくださいました。

キムさん(左)とチェさん(右)

 

箕面市に住む外国人市民は約2,000人。人口約12万人に占める比率は他市と変わらないけど、出身国は約90か国ときわめて多い。箕面市内に大阪大学外国語学部(旧大阪外国語大学)があることも影響しているとのこと。このため、外国人市民の社会参加や国・文化の違いを乗り越えた相互理解と交流が不可欠となっています。

10年ほど前、東南アジア出身の外国人市民を中心に、「友達がいなくて淋しい」「日本語が話せない」などの悩みや相談がたくさん寄せられました。多くは女性だったので、つくり慣れた各国の「家庭料理」をみんなで一緒につくりながらおしゃべりしたら、仲良くなれるのではとのアイデアが出ました。不安があったけど、レンタルカフェで試験的に実施。「これなら行けるんじゃない」との手応えがあり、毎月1回のペースで開催したそうです。この成果を踏まえて、「箕面市立多文化交流センター」(2013年5月~、公益財団法人箕面市国際交流協会<MAFGA>が運営)のオープンと同時にcomm cafeが設置されました。

comm cafeでは、外国人市民だけで構成される午後カフェ担当の「チームシカモ」(シカモはスワヒリ語のあいさつ)をはじめ、シェフ25人、ボランティア約30人がシフトを組み、ランチや飲みものをほぼ毎日提供しています。材料の調達~準備~料理は、すべてワンデイシェフにまかせられており、その日の売り上げから諸経費(水光熱費など)を差し引いた額がシェフに支払われます。ボランティアは無償ですが、その日のランチが食べられるそうです。

このほか、comm cafeを会場に、留学生による「よるカフェ」や「民族音楽ライブ」なども開催されています。

 

■comm cafeはどんな役割を果たしている?

comm cafeは、外国人市民にとってどんな場所なんだろう? 淋しさは解消されたんだろうか。日本語の習得に役立っているんだろうか。キムさんとチェさんに尋ねると、「家庭料理や飲み物をいただきながら、くつろいだ雰囲気の中で、日本人と普通の交流ができる」「教科書にはない、実生活に基づいた日本語を身につけることができる」など、外国人市民に大好評ですとの返事が返ってきました。

これを聞きながら、外国人と日本人との交流は、しばらく前までは“表面的で固い雰囲気”の中でしか行われていなかったのかもしれない。そうだとすると、「つくる」「食べる」「しゃべる」という“ありふれたこと”を通じて交流できるcomm cafeは、画期的だったのではと思いました。

これからの抱負や課題はありますか?と尋ねると、「今のカフェを長く続けたい。いろいろな国の料理をみんなに体験してほしい。そのために、いろいろな国の外国人市民に、料理を提供するチャンスを与えたい。でもシェフが特定の国に偏ったり、子どもの病気で急に休まないといけなくなったり、続けてほしいのに3年ぐらいで帰国するなど、シェフの確保が大変です。」「ワンデイシェフとcomm cafeの利用者の交流もねらいだけど、スペースが広く、お客さんも多いので、なかなか難しいですね。」とチェさん。

 

改めて考えるまでもなく、国や地域の気候や自然、暮らし、他地域との交流などから生まれた「料理」は“文化”そのものだ。その料理をいただきながら、これまた高度な文化である「言語」を超えておしゃべりするのは“文化の中の文化”かもしれない。

次はどの国の文化に触れよう(どの国の料理をいただこう)と考えながら、笑顔がステキなキムさんとチェさんに見送られました。

 

comm cafe

〒562-0032 箕面市小野原西5丁目2−36

箕面市立多文化交流センター内 Tel:072-734-6255

 

※この記事は、「City Life West」「City Life East」の2017年4月号に掲載される「北摂パブリック紀行:食を通じた多文化の交流拠点“comm cafe”」のフルバージョンです。


この記事を書いた人:

山本 茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった”みんなが集まれる素敵な場所“を発掘し、人とともに紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
http://citylife-new.com/news/50955.html