【北摂パブリック紀行 Vol.21】ワイワイまちを元気にする“ええまち比也野里”


市民がつくった“みんなが集まる素敵な場所”を紹介する北摂パブリック紀行。今月は、高齢化や買物難民などの問題を抱えながら、どっこい頑張っている西脇市比延地区のまちづくり協議会「ええまち比也野里(ひやのさと)」です。

 

■まちづくり協議会とへそ・で・ちゃ

兵庫県西脇市は、古くから播州織や釣り針、最近はラーメンで有名なところ。東経135度、北緯35度の交点にあることから、「日本のへそ」のまちをアピールしています。その西脇市の東部、加古川を挟んで、町家や集落、田畑・山林が篠山市まで東西に細長く伸びるのが西脇市比延地区(1,508世帯、3,902人 2017年4月1日現在)です。

東部の中山間地域

 

全国の地方都市や農村部と同様に、ここ比延地区でも人口減少や高齢化が進んでいます。これとともに、地域の交流機会の減少、スーパーの撤退(買い物ができない)、バス路線の廃止(高齢者等の移動困難)、空き家や放置された田畑の増大、竹林の維持管理が困難などの問題が生じてきました。

このような状況が進む中で、比延地区は、約10年前に、まちづくり(※)に関心のあるメンバーで構成される「比延地区まちづくり協議会」(現在の「ええまち比也野里」 藤井琢己代表)を西脇市で最初に発足させました。そして、疲弊し・さびれていく比延地区をなんとか元気な、人々のふれあいのある地区にしようと、農協跡地を活用したコミュニティセンター「こみせん比也野」(市からの指定管理受託)を拠点に、多彩な事業に取り組んできました。

※地域の課題解決と望ましい将来像の実現のために、住民が中心になり、行政と力を合わせて、さまざまな資源を生かして、持続的に取り組むこと

具体的には、買物難民の解消と住民の交流のために、農協跡地(「こみせん比也野」)を利用した売店(食料品・惣菜・日用品)+カフェ+ギャラリーの「へそ・で・ちゃ」の開設、ホタルの保全活動、秋の比也野まつり、講談や音楽のライブなどです。

へそ・で・ちゃと事務所がある「こみせん比也野」

へそ・で・ちゃ(売店)

へそ・で・ちゃ(カフェ)

比也野まつり(子どもたちの木工教室)

 

■ふるさと夢プラン

「まちづくり協議会」が発足してから10年を目前にした2013年度、比延地区の人々は、これからのまちづくりを考える「ふるさと夢会議」を開催。約1年間の意見交換や検討などを踏まえて、将来像「人つながり、未来につなげる、比也野里」とともに、具体的に取り組む事業と概略のスケジュールなどを記した「比延地区ふるさと夢プラン」を2014年3月に作成しました。そして、2014年度から、夢プランに基づいた事業をひとつずつ進めているのです。

ふるさと夢会議でのグループ討議の発表

主な事業とスケジュール

 

≪笑顔いっぱい比也野号≫

まず、篠山市に近い東部の中畑町、住吉町などの買い物が困難な地区を主な対象として、食料品や惣菜、日用品を乗せた移動販売車「笑顔いっぱい比也野号」を週1回巡回させています。スピーカーから流れる元気な歌声とともに販売車が広場に到着すると、待っていた住民が集まってきて、食料品や総菜、お菓子などを買い求めていきます。

笑顔いっぱい比也野号

比也野号の内部

≪オーナー制竹林≫

比延地区の高嶋町は、明治時代以降、高級料亭からも珍重された、柔らかくて美味しいタケノコの産地として知られてきました。しかし、タケノコ掘りは高齢者には重労働。近年、竹林の管理が難しくなり、荒れた竹林が目立つようになりました。西脇市の市民が食べたいと思っても、なかなか手に入らなかったブランド物のタケノコ。これではもったいないと、まちづくり協議会が数軒の竹林を借り上げ、市内外の人々に竹林の維持管理やタケノコ掘りを有償でしてもらう「オーナー制竹林」を始めました。

高嶋町のタケノコ

 

約100坪ほどの竹林のオーナー料(賃料)は年間2万円。やや高そうに見えますが、4~5月に200~300本が収穫でき、自家消費するほかに知人に配って喜んでもらえる。なによりもタケノコを掘るのが楽しいと大好評です。

2017年4月下旬には、竹林のオーナー、ええまち比也野里、西脇市観光協会の共催による「たけのこ収穫祭」を開催。北播磨だけでなく、阪神間や南大阪、四国からも訪れた約150人の人々が、タケノコ掘りに悪戦苦闘したあと、比延地区ならではの料理(タケノコの天ぷら、タケノコ入り豚汁、シカ・イノシシの焼き肉など)を楽しみ、一日中盛り上がりました。

たけのこ収穫祭

 

■まちづくりの次のステップをめざして

比延地区のまちづくりは、2016年から新しい段階に入りました。増え続ける地区の課題解決のためには、まちづくり協議会だけでなく、区長会、老人会、PTA、子ども会、防犯や福祉の団体、企業など、より幅広い団体や人の参加が不可欠。このような考えのもとに、様々な団体がフラットにつながって話し合い、活動していく「地域自治協議会」の設立に向けた検討会を1年間続けました。

検討会では、「自治協議会のめざすものが分からない」「新しい組織ができたらまた忙しくなる」「区長会(住民に信任された区長の集まり)とまちづくり協議会で進めたら良い」など、地域自治協議会が十分理解されていないことによる誤解や疑問の意見が出されました。しかし検討会を重ねるにつれて、「多様な課題を解決するためには、何をするかではなく、いろいろな団体や人が集まって、まず話しあうことが大切」「まちづくり協議会(ええまち比也野里)がやってきた方向で、よりたくさんの人が参加して進めたらよい」「まず一つのことに具体的に取り組めば、きっと組織の形や進め方が見えてくる」など、前向きで具体的な意見が出されるようになりました。

こうして一年間にわたる喧々ガクガクの検討会をへて、2017年の5月下旬、隣の黒田庄地区と肩を並べて、西脇市で最初の地域自治組織である「比延地区自治協議会」が発足しました。まちづくり協議会「ええまち比也野里」は、「区長会」とともに「比延地区自治協議会」を主導する役割が期待されています。このような考えから、「比延地区自治協議会」の会長には、「ええまち比也野里」会長の藤井琢己さんが選ばれました。

自治協議会設立総会の資料

 

総会終了後に藤井会長に抱負を伺うと、「高齢者の徘徊対策や子どもの見守りのために防犯カメラ設置し、空き家の活用も進めますよ」「80歳まで、あと10年ちょっと頑張るわ。代表はいずれ若い人に代わってもらうけどね・・」と元気な声が帰ってきました。

事務局の高橋章子さんからは、「夢プランがひとつずつ実現しています。これまでのように、みんなでいろんなことを解決して、乗り越えていきたいと思います。」と、笑顔と一緒に返ってきました。

藤井会長(右)と高橋さん(左)

 

地方の都市や農村的な地域は、社会の変化の中で困難な課題をいっぱい抱えています。だから、その地域が疲弊して、コミュニティが崩壊しているのかと思えば、意外にそうではなく、人々は明るく、元気に、仲良く暮らしています。藤井会長や高橋さん、「ええまち比也野里」につながる人たちのように、どっこい頑張っている人たちが支えているのです。そして、『播磨国風土記』の時代から続いてきた比延地区のように、里山ののどかな自然、長い年月の間に培われた文化や風土、近隣のつながりなどが、人々を大きく包み込んでいるのです。

「まちづくり協議会」から「地域自治協議会」へと、まちづくりの活動を展開させようとしている西脇市比延地区。地域の課題をみんなで解決しながら、比延地区ならではの「地域自治」の形を見つけ出し、あとに続く北播磨の、いや全国のモデルになってほしいと願います。

※比延地区の詳細はこちらをどうぞ

※ええまち比也野里のフェイスブックページはこちら

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この記事を書いた人:

山本 茂
北摂を中心に地域計画・まちづくりの仕事を長く続けました。現在は、千里ニュータウンと周辺をもっと魅力的にしたいと、仲間といろいろな活動をしています。まちづくりの第一歩は、市民や企業が地域の魅力を再発見しながら、できることから。「北摂パブリック紀行」は、市民や企業がつくった”みんなが集まれる素敵な場所“を発掘し、人とともに紹介しようとスタートしました。趣味は山と料理。オレンジ色のハスラーに乗って全国の山へ出かけます。
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