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「子どもの水難」は人ごとじゃない!茨木・安威川の事故から学ぶこと

2019.08.16

夏になればよく目にする子どもの水難事故のニュース。大きく報道されるのはほんの一部だ。

公益財団法人河川財団の資料によると、2017年1年間の水難死亡事故は679人にものぼる。うち、子どもの死者・行方不明者は26人。そして、子どもの水難死亡事故の約6割は「川」と「湖」と統計結果がでている。※警察庁統計

なぜ川や湖での子どもの水難事故が多いのか?
その原因を探るため、大阪大学大学院で子どもの事故防止について研究されている岡まゆみさんを取材した。

事故後の新聞。事故を防ぐ研究のために大学院に入学したことを取り上げられている

岡さんのご主人は、2012年、茨木市の安威(あい)川で溺れた小中学生を助けようとして亡くなっている。「当時、川を横切るブロックの上で子ども達は遊んでいました。その付近の水深は見た目には浅そう。「見た目には浅い」これが川の危険なポイントなんです。主人も、だからこそ助けられると思ったのかもしれません。」

徐々に深くなっていく海と違って、川は思いもよらない場所が深くなっている。


看板ピンクの丸印の箇所が事故現場

捜査関係者によると「事故が起きた場所は、茨木川と安威川の合流地点。二つの水流がかき混ざることによって滝のような強い水圧が深い川底へ押し寄せ、浮き上がれなかったのでは」という見解だった。

「川辺にはそのような川底の地形を知らされる看板はありません。海のように遊泳できる場所が指定されているわけでもない。管轄である行政に現場の改善を求めると『河川の使用は自己責任における自由使用ですので、何もできない』という答えでした」。

岡さんのアイデアが採用された看板

しかし、岡さんの声が届き、安威川には看板が立てられていた。ウォーキングやランニングをする人々や園児の散歩道である、のどかな川沿いの風景に、突如現れる看板にはドキリとさせられ、川に潜む危険への注意発起には十分な力を持っていそうだ。

このように、川は危険な場所がわかりにくいというのに、スリルを好む子どもたちは川遊びに夢中になる。遠出をした時には、地元の人でも行かない場所に興味本位で行ってしまうから怖い。

「決して子ども達だけで川遊びをさせてはいけません。必ず大人が同伴してほしい。だからといって、大勢の家族で川沿いでバーベキューなどをした際に、大人それぞれが『誰かが見てくれているだろう』と安心してはだめです。
『誰かが見てる』は『誰も見てない』のと同じ!」と岡さんは強く訴える。

左:ライフジャケットのTシャツを着る岡さん  右:「おはよう朝日です」出演時のスクリーンショット

万が一事故が起きた場合は、素人がむやみに救助するのではなく即119番をすること。クーラーボックスや空のペットボトルなど浮くものに掴まらせること。そして予防策としては、子どもたちにライフジャケットを着せておくことだという。「ライフジャケットは安価ではない上に暑く、カッコ良くないからか、なかなか浸透しないので、アウトドアブランド「モンベル」の『子どもたちにライジャケを!』の活動に協力できるオリジナルTシャツを着用しています」と取材当日も着用してくれていた。

茨木市立中津小学校PTA総会「みんなで守ろう子どもの安全、子どもの事故予防」の講演

岡さんは「子どもの水難事故」について、大阪ユニセフ協会などでの講演やTV・ラジオ出演で注意を呼びかけ、水難事故に限らず、子どもの事故全般の予防を訴えるために各小学校や地域ボランティア団体で講演をしている。

「皆さんの安全意識が少しでも高まってもらえるよう、どこにでもお話しに行きます!」そんな岡さんの思いが一人でも多くの人に伝わり、子どもの事故をなくしてほしいと願う。

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