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資源を無駄にしない 地ビールでシティサーキュレーション(都市型循環)

2019.09.20

二宮商店街の一角にある「INTHA DOOR BREWING」( 神戸市中央区琴ノ緒町3-3-26-1F)。2015年に地元神戸に根付いたビールを作りたいとの想いでスタートした地ビールの醸造所だ。六甲布引の水を100%使用して作るビールで翌2016年にFARMERS MARKET(地産地消をテーマに毎週土曜日、東遊園地で開催する青空市場)に参加。ここで同じ志をもつ生産者とのつながりが生まれ、現在では大麦やホップ、旬のフレーバーに使う副材料も一部神戸産だ。

そして2018年には神戸の生産者と「KOBE LOCAL BEER PROJECT」を立ち上げた。資源を無駄なく利用し、地元生産者と醸造所の互いの利益を考える、理想的な循環を目指している。

麦汁の原材料である大麦やホップは、有機農法で野菜を作っているナチュラリズムファーム( 神戸市西区)のもの。FARMERS MARKETで出会い、栽培を請け負った生産者だ。期間限定のスペシャルビアに使う果物や野菜などの副材料も地元産。さらに彼らが目指しているのは、シティサーキュレーション(都市型循環)による地元生産者との共生だ。

醸造後、大量に出る麦芽カスを何とか活用したいと考えていた時、グラノーラ専門店である「一粒万倍グラノーラ」(神戸市中央区下山手通3-3-1)からこの麦芽を使えないかという申し出があった。廃棄モルトを焼き上げ乾燥させることで独特の匂いを消して香ばしさを出し、栄養価の高いビアモルトグラノーラとして商品化にすることができた。またIN THA DOOR BREWINGの店舗メニューでもこのグラノーラを使ったサラダを提供している。

 

「一粒万倍グラノーラ」のグラノーラを使ったメニュー、ローカルベジシーザーサラダ

 さらに余った麦芽カスはナチュラリズムファームに戻し、麦畑の肥料として活用。良質な土づくりに役立て、またそこで大麦を育てる。資源を無駄に廃棄したくないという考えのもと、更に利益を生み出す好ましい循環が生まれているのだ。

ローカルエリアでの循環は、単に輸送費の削減にもなるが、鮮度面でも有利だ。獲れたてのホップは、通常真空パックに入れ冷凍保存して輸送するが、ここでは生のフレッシュホップを使用することができる。
更に顔が見えることで、良質なものを届けたいという気持ちと責任感が生まれ、コミュニケーションによって問題点を逆に強みにする共生関係を生み出している。

有機農法で野菜を作っているナチュラリズムファーム

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