地域情報紙「CITY LIFE」が発信する
地域密着のニュースサイト

CULTUREコラムVOL.3 梅花から「令和」を込めて 「嫉妬の力」

2019.11.01

大阪に誕生した世界遺産(百舌鳥古墳群・古市古墳群)の中でも、もっとも大きな古墳の主とされる仁徳天皇は、文献上、はじめて難波(大阪)に遷都します。奈良との往来には葛城山を通る必要がありました。麓を支配する氏族から皇后にイワノヒメ(磐之媛・磐姫)を迎えます。いわば民間から誕生したはじめての皇后です。現存するもっとも古い歴史を記す『古事記』には、とても嫉妬深い人物であったと記されています。例えば吉備国(岡山)から嫁いだ黒日売(くろひめ)を船から降ろし、故郷まで歩いて帰らせました。紀伊国(和歌山)へ出かけている間に新たな妃が迎えられようものなら、儀式に使う葉をすべて海に投げ捨て難波宮を通り過ぎます。船で淀川を上り、京都経由で実家に戻ろうとします。
でも、なぜ遠回りを?彼女は帰ることが戦につながることを知っていたのでしょう。当時の支配者が日本を治めていく上で必要とした他の女性たちとの結婚に反対してはいません。悪口を言うこともなく、歌を詠んで天皇を讃えます。皇后が恐れたのは、皇位継承を争う皇子たちの誕生でした。彼女の嫉妬が功を奏したことは、仁徳天皇以後の系譜によく表されています。『万葉集』巻二「相聞(そうもん)」部の巻頭には、時代的にもっとも古く、彼女の作とする歌が四首連作で掲げられています。一首目は、

と、「あなたがお出かけになってずいぶん経ちました、山を訪ねて迎えに行きましょうか、そのままお待ちしましょうか」と悩み、後の歌では待ち続けることの切なさを嘆きます。『古事記』には、皇后としての政治手腕として用いられた嫉妬が、『万葉集』には内に秘められた愛情として表現されています。

梅花女子大学教授 市瀬 雅之

現代訳から原文までを用いて『万葉集』に文学を楽しむほか、『古事記』や『日本書紀』等に日本神話や説話、古代史をわかりやすく読み解く。中京大学大学院修了 博士(文学)。著書に『大伴家持論 文学と氏族伝統一』おうふう 1997年、『万葉集編纂論』おうふう2007年、『北大阪に眠る古代天皇と貴族たち 記紀万葉の歴史と文学』梅花学園生涯学習センター公開講座ブックレット 2010年。ほか執筆・講演・講座多数

 

newstest

北摂・阪神の地域情報紙『シティライフ』編集部です。 地域密着の情報をお届けします。
HP http://citylife-new.com/

記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。