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近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトが 設計した「ヨドコウ迎賓館」 将来の世界文化遺産登録候補に挙がる

2019.11.28

ユネスコ世界遺産委員会は今年7月、アメリカ人建築家のフランク・ロイド・ライトが手掛けた米国内8作品について世界文化遺産登録を決定。米政府の推薦書には将来の追加登録を目指す作品の1つとして、米国外で唯一、日本の芦屋市にある「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」が挙がっていた。

バルコニーより本建物を見た写真

明治末期から昭和初期にかけ、阪神間で育まれた文化や生活様式は「阪神間モダニズム」とよばれ、西洋文化の影響を受けた独自のスタイルが形成された。現在も当時を物語る建物が残っており、同館もその1つだ。山邑酒造株式会社の8代目当主の別邸として、1918年にライトによって設計され1924年に竣工。1947年からは株式会社淀川製鋼所が所有し、社長邸や独身寮などに利用された後、1974年に国の指定重要文化財となった。1989年からは一般公開され、今年2月には3度目の保存修理工事による約2年間の休館を経て、改めて一般公開が再開された。

同館は六甲山地から延びる丘陵の山肌に沿って階段状に建てられ、敷地は南北に細長い。北側に門、玄関が南の端にあるのは、「門から玄関までゆっくり建物を眺めて歩けるように」という計らいによるもの。内装や外装にふんだんに使用されている石材は大谷石(おおやいし)で幾何学的な彫刻が施される。

玄関や館内2階の応接室などの入口が狭く作られているのは「次に続く空間を広く感じさせるように」というライトの意図で、応接室内に入ると左右対称の重厚な空間が広がる。東西のはめ殺しの窓からは緑豊かな景色が広がり、天井付近にはマホガニー材の木枠で作られた小窓が多数。岩井館長によると、小窓や応接室のドアノブなどの金具は、世界遺産に登録された「落水荘」(アメリカ・ペンシルベニア州)にも似たものが用いられているそうだ。

応接室(2F)

3階の和室は当初の設計にはなかったが、日本人である施主の依頼で作られた。西側の廊下に連続する大きな窓や、欄間などに施された植物の葉をモチーフにした飾り銅板も同館の特徴。廊下の窓から飾り銅板に透けて降り注ぐ木漏れ日のような光が鮮やかで、3間続きの和室に並ぶ大きな掃き出し窓は外開きで室内も明るい。

4階の食堂の天井は中央部が高い四角錐の形で、四角錐の頂点付近にあるハート型の木組みを見て「教会のようだ」と話す来館者もいるという。暖炉の壁面にあるマホガニー製の飾りや小窓が特徴的。バルコニーからは、南は大阪湾、南西方面には淡路島を望む。壁よりも外側に飛び出した庇は、ライト建築の特徴の1つであるキャンチレバーにあたる部分で、建築時に施工監理者であった南信はこの庇を「夏帽子」のつばと例えたとか。

食堂(4F)

ライトは「有機的建築」を提唱し「自然と建築の調和」を建築思想として掲げていた。六甲山地の地形を生かし、周辺の自然と一体化となるよう建築された同館は、ライトの建築思想が具現されている。日本で設計した住宅建築として、ほぼ完全な形で現存する唯一の建物である同館。いくたびもの保存修理工事を経て創建当時の姿を留めている。

ヨドコウ迎賓館

住所
芦屋市山手町3-10

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