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野鳥がもつ本来の姿をリアルに表現!バードカービングの日本チャンピオン 岩橋徹さん@兵庫県三田市

2019.06.10

一瞬、剥製かと思うほど細かな描写と色彩が織りなす野鳥の彫刻「バードカービング」。その歴史は長く1800年頃、アメリカでカモ猟の「おとり」として鳥の木型(デコイ)が使われた後、木材を使用した野鳥彫刻が誕生。1970年代に日本で初めて紹介され、1997年に日本バードカービング協会が発足した。

同協会が主催する日本バードカービングコンクールは、ジュニア・ビギナー・初級・中級・上級・マスタークラスに分かれ、全国各地から数多くの作品が東京に集結。なかでも三田市在住の岩橋さんは、コンクール全体の1位となる日本バードカービング大賞を8回も受賞する実力の持ち主。自然が残る自宅周辺には、ヤマガラやエナガなどの小鳥も訪れるそう。

学生の頃から双眼鏡で野鳥観察をするほどカラフルな色合いに魅了された岩橋さんは、手先も器用だったそう。バードカービングを初めて知ったのは、1992年、奈良県内の作品展だった。美しい色彩も表現できる彫刻に衝撃を受けた後、会社勤めをしながら基礎を学び始めた。バードカービングは、羽毛の中央の軸である羽軸や骨格構造、羽の形などを知らないと生き生きとした作品は作れないのだとか。

大賞受賞作品の数々

 

大賞受賞作品「コガラとヤシャブシ」より

 

野鳥の形態を知る為、同市にある「兵庫県立人と自然の博物館」の協力のもとで、一種につき剥製の羽根など約70か所を計測。

はく製の寸法計測例

計測した寸法をもとに一番重要な石塑粘土(せきそねんど)で作る粘土立体図を作成。尾羽や翼は厚紙で補強し実寸の完成形を作る。次に粘土立体図をトレーシングペーパーに置き、真上真横から見た形を写したら、いよいよ木材へ。チュペロと言われる軽くて柔らかい木に写し、電動グラインダーで頭部分から少しずつ削った後は、目にガラス玉を付けアクリル絵の具で色付けすれば「バードカービング」の完成だ。

粘土立体図(左)からの制作工程(作例:ルリビタキ)

 

羽根の重なる部分は電熱ペンで焼き付け段差を表現

 

制作には時間もかかり、年間で多くて4体制作するのが限界だとか。岩橋さんが次に狙うのは、発祥の地アメリカで行われる「ウォード・バードカービング・チャンピオンシップ」のワールドクラス!「全ての形・色に意味がある。不思議な世界だからこそ面白いです」と岩橋さん。いつか野鳥への愛情が詰まった作品が世界一に輝くよう心から応援したい。

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