農でまちを盛り上げる 神戸・阪神間の都市農業


近年、全国的に農家の高齢化が進み、後継者不足が深刻化。神戸・阪神間でも1年以上作付けされていない耕作放棄地が増加している。こうした様々な課題を抱えながらも、神戸・阪神間では、自然豊かな農村も広がり、その土壌や気候を生かした農業が営まれている。都市農業を継続・発展させるための取り組みを取材した。

【都市農業のメリットと現状の課題】
 市街地やその周辺地域で行われる農業を「都市農業」という。消費地に近い場所で栽培ができる都市農業は、様々なメリットがある。新鮮な農産物を市街地に供給できるほか、住民にとっての農業体験・学習の場、緑地・水辺など自然豊かな景観、災害時の避難場所、雨水の保水や生物保護など、多様な機能を持っている。
 一方で農地と民家が隣接しているために、農薬散布や農作業音など、近隣住民の理解を得ながら営農する難しさも抱えている。

【多様化する都市農業
 神戸市は生産額トップクラス】
 雨が適度に降り、気候が温暖なため栽培がしやすい神戸・阪神間では、米や野菜、花など様々な農作物が生産されている。特に、生産地が消費地と近いため、傷みやすく輸送に向かない小松菜やほうれん草など葉物野菜の生産が盛んだ。一種類を大量に作るより、様々な農作物を小ロットで生産する小規模農家が多く、消費者からの要望に応えて野菜を作るケースもある。担い手不足が問題となる中でも神戸の農業は盛んで、農業産出額で比較すると政令指定都市の中では全国で6位、人口100万人以上の都市ではトップを誇る。
 販売方法も多様化している。これまでは中央卸売市場を通して農作物が流通するのが一般的だったが、近年では生産者自身が直売所を設置したり、飲食店などと直接取引するケースが増えている。
 また、都市部と農村部の距離が近いため、農村部に住んでも生活する上での利便性が高く、新たに農業にチャレンジしやすい環境でもある。若い人たちの間でも、新しいライフスタイルとして農業を選択する人が多く、神戸市では毎年約50人が新規で農業に参入している。

【農業を活性化するため 
 官民で農村暮らしを推進】
 地域活性化のため神戸市では、「神戸・里山暮らし」と銘打って、農地の斡旋だけでなく農村地域での暮らしの提案も行うことで新規就農を促している。農村で空家となっている古民家を活用し、地域のコーディネーターが空き物件や農地を紹介。時には野菜の育て方もレクチャーし、就農者をサポートする。
 中でも、北区の農村地域である淡河町では、「淡河の明日を考える会」という市民団体が主体となって町おこしに取り組み、成果を上げている。淡河町は、水稲やチューリップなどの農産物の生産が盛んであると同時に、昔から宿場町としても栄えてきた町。老朽化した宿をリノベーションして復活させたり、週末には地元でとれた野菜でカフェを開いたりと様々なイベントが開催されている。こうした移住プロモー
ションにより、農村が活気を取り戻しつつある。

【神戸・西宮の農産物を
 地元へ、世界へアピール】
 神戸市では神戸産の農水産物の海外展開やブランド化を目指し、「食都神戸2020」構想を推進している。2015年には農業者、漁業者、流通事業者からなる「食都神戸海外展開促進協議会」を設立。世界最大級の国際総合食品見本市である「香港FoodExpo2015」に出展し、神戸産の食の魅力を世界にアピールした。東京オリンピック開催の2020年をめどに、「神戸の食」に注目を集めたい狙いだ。
 市内においても、神戸産の農産物への認知度がまだ低いため、地産地消を進めようと毎週土曜に三宮駅前の東遊園地で「ファーマーズマーケット」を開催。生産者自らが出店する本来のマーケットの形にこだわり、新鮮な野菜を販売することで、消費者との交流だけではなく、生産者同士のコミュニティ形成を促し、自主的に農業を継続できる体制づくりを進めている。
 また、2012年からは「KOBE“にさんがろく”PROJECT」を神戸市が実施。農漁業に若者のアイデアと企業のノウハウを活かした新たな商品開発やイベントが活発に行われている。
 西宮市では、西宮産の農産物を購入できる直売所を紹介するポータルサイト「あぐりっこ西宮」を運営している。また、とれたての新鮮な野菜が購入できる「農業祭」を11月に開催。市民に西宮の農業への理解を深めてもらうことで、安心安全な食と、緑豊かな住環境の維持を目指している。

【生産者と消費者、販売者が協力し、支え合う都市農業へ】
 新規参入した若手農家には、有機に特化した栽培や変わった品種の野菜栽培など、こだわりを持つ人が多く、また、こうした作物は、飲食店のニーズも増加している。しかし、季節や天候に左右される農業は安定供給が難しく、ニーズはあっても限られた農家では対応できないという現状がある。神戸市の農水産課は、「スーパーなどでは年中同じ野菜が品揃えされていますが、季節によって生産できない野菜があるのは当たり前のこと。メニューありきで野菜をオーダーするよりも、自然の摂理に合わせたメニュー展開が増えれば、農業の在り方も変わるのでは」と話す。様々な枠を乗り越え、消費者、生産者、販売者がお互いを理解しあえる関係づくりが、今後の都市農業の成功の鍵といえる。


この記事を書いた人:

阪神版
兵庫県 西宮市、芦屋市を中心に地域情報をお届けしています。

HP: http://platnavi.net/ebook/citylifenew/citylifehanshin/book.html


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