就業支援や移住促進にも活用 公営住宅が保育施設に


戦後、整備が進められてきた公営住宅。
現在、大阪府や兵庫県でも大量の公営住宅のストックが存在しているが、人口減少や高齢化などの社会情勢の変化に伴い、多様な取り組みが展開されている。

【大阪・兵庫の公営住宅の成り立ちと現在】
 公営住宅とは、国民が豊かで安定した生活を送ることを目的に、地方公共団体が安価な家賃で供給する住宅をいい、昭和26年に制定された公営住宅法に基づいて供給されている。
 公営住宅には府や県が運営するものと、市や町が運営するものがあるが、府営・県営住宅は、府県全域に共通の課題解消やより広域的な需要に対応するために生まれた。その一つが、戦後復興期や高度成長期における住宅難の解消だ。当時、住宅の焼失や大都市圏への人口の流入による住宅不足が都市問題となり、これに対する住宅供給を行うために公営住宅が大量に建設された。また、兵庫県では阪神・淡路大震災後の復興住宅としての役割も果たしている。現在は、新規整備による住宅供給から、昭和30~50年代に整備され老朽化が進む住宅の建て替えや耐震改修等に重点がシフト。管理戸数は、平成27年時点で、大阪府では約12万8千戸、兵庫県では約5万2千戸にのぼる。
 公営住宅は所得などに条件があり家賃が安価なため、特に交通の便が良い北摂・阪神間の一部地域では、応募倍率が10倍前後と人気が高い。一方、人口減少や高齢化により地域のコミュニティが失われつつある今、公営住宅はそこに住む人のためだけではなく、地域住民全体の資産として、福祉施策と連携した住民サービスを提供する役割が重要性を増しており、地域の交流や若い世代にとっての魅力あるまちづくり、高齢者や障害者などの福祉サービスへの利活用が推進され始めている。

【空室を活用したまちづくりへ一歩】
 公営住宅に住む人の高齢化は年々進み、大阪府、兵庫県とも約60%を高齢世帯が占める。そのため、高齢者の社会的孤立を招くなど、地域コミュニティの機能低下が危惧されている。こうした課題の解決を図りつつ、全国的に深刻化している待機児童増加などの問題に対し、新たに専用施設を整備するのではなく、既存の公営住宅を活用する動きが広まっている。
 大阪府では、地域の課題解決に対しては、広域行政である府が行うより基礎自治体である市や町が身近なサービスとしてより細やかに取り組むことが望ましいとして、府営住宅の市への移管を進めている。平成27年には大阪市へ約1万戸の移管を実施しており、今後は池田市や大東市でも移管を進める予定だ。また空室を利用し、島本町で小規模保育所、豊中市でも一時預かり保育施設を整備。待機児童対策に役立てるだけでなく、公営住宅の住民と団地外のファミリー層との交流を生んでいる。また、市町村やNPO法人が主体となり、高齢者の交流の場や見守り活動の拠点として活用されているほか、失業状態にある若者の自立支援やコミュニケーション力の養成などを居住しながら行う、就業支援の一環としても活用されている。
 兵庫県では、住宅の高齢化を緩和しコミュニティの活性化を図るため、一定戸数において新婚・子育て世帯や若年、多子世帯の優先入居を実施。さらに親、子、孫の三世代の近居や隣居の促進を図っている。また、県外からのファミリー層の移住を促進するため、入居資格である県内在住・在勤の要件を緩和。県内への移住、定住を希望する人を対象に、1~2年間の「お試し居住」も実施している。 単なる住宅供給にとどまらない、公営住宅の多様な活用が、若い世代の増加や地域の活性化の促進に結びつくと期待がかかっている。


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阪神版
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