受診率向上で早期発見へ がん撲滅の鍵は検診


 医療の進歩により、1990年代半ばをピークに、日本人のがんによる死亡率は減少している。一方で、高齢化が進む中、がんにかかる割合は1980年代以降増加傾向にある。生存率が高まっているとはいえ、患えば生活の質を下げるがん。予防や早期発見のためには、何をすればいいのだろうか。

【がん死亡の原因の多くがタバコと“要因不明”】
 2012年の国立がん研究センターの予防研究グループの報告によると、日本人のがん死亡の原因として代表的なものがタバコと感染症だが、食生活や運動不足が影響するケースはわずかで、実はそれ以外は「要因不明」である場合が多い。双子が同じがんにかかる確率を調査したフィンランドのデータによると、両方ががんにかかったのは一卵性でもわずか13%で、遺伝が原因であるケースもそれほど多くない。また、がんを防ぐと言われる食物には確実と認定されているものはなく、サプリメントでビタミンを大量摂取した結果、健康になるどころか肺がんの罹患率が18%上昇したという実験結果もある。大阪国際がんセンターがん対策センターの中山富雄氏は、「がんは多くの場合原因不明で、確実な防御因子もないのが現状です」と話す。

【早期発見に繋げる 各種検診の受診率】
 予防策がない以上、がん検診による早期発見は非常に大切だ。協会健保組合は、各企業に対し従業員への「職域がん検診」の実施を指示している。しかし、実施の最終的な判断は企業に委ねられており、大企業に比べると中小企業では実施率が低くその内容もまちまちだ。こうした問題に対し、国では職域がん検診の基準となる指針を定めることを決定し、精力的にサポートする動きを見せ始めている。兵庫県では、健康づくりに取り組む企業や団体を「健康づくりチャレンジ企業」として登録し、従業員数が300名以下の企業に対しては、乳がんや子宮頸がんの受診費用を全額または一部補助するなど企業のがん対策をサポートしている。
 非正規の従業員や専業主婦など、職域がん検診を受診できない人には、各市町が実施するがん検診が提供されている。しかし、高齢者が多い兵庫県の山間部の市町では受診率が高いものの、全国と比較すると県内の受診率は全体的に低い。中山氏によると、検診の方法によっても受診率は大きく左右されるという。例えば、日程が決まっている集団検診より、自分の好きな日にかかりつけ医で受診できる個別検診を行なっている自治体のほうが受診率は高い傾向にある。また芦屋市では、2012年から採便した検査容器の郵送で大腸がん検査ができるようにしたところ、受診者が増加したという。費用も受診率に影響している。芦屋市では、肺がん検診の受診率が県平均と比べ2倍以上高いが、これは肺がん検診のみ受診費が無料であるためと予想される。また大阪府箕面市では、5つのがんで個別検診を無料で行なっていることが功を奏し、あらゆるがん検診で受診率が高い。

【受診率向上のための各市町の取り組み】
 受診率の向上を目指して、各自治体は様々な取り組みを進めている。神戸市では、一定の年齢の方に対し受診勧奨のハガキを送付するとともに、40歳になると1年間5大がん(胃・肺・大腸・子宮・乳がん)検診全てを無料で受けられる無料券を送付している。阪神間では比較的高い受診率を維持している芦屋市では、働き盛りの若い世代の受診を促すため、受診記録や生活改善の自己記録ができるように、昨年から40、50、60歳の市民に健康手帳を配布。この中にがん検診のリーフレットも含め、早くから健康に興味関心を持ってもらうための環境を整えている。ただ、テレビなどで有名人のがん発症が話題になると、受診率が大きく上がる傾向にある一方で、こうした市の取り組みに対する市民からの反応は薄い場合が多く、検診への意識をどう高め、どうアプローチするかが多くの自治体で課題となっている。

【予防や早期発見に求められる対策】
 早期発見できれば、手術や内視鏡など治療法の選択肢は多い。放射線治療など新しい治療法もたくさん出ているので、まずは検診を受けてほしい」と話す中山氏。「肺がんを調べる腫瘍マーカーの“シフラ”の場合、40%のがんが見落とされ5%の人はがんではないのに陽性反応が出ます。腫瘍マーカーの中で最も精度が高いとされるシフラでもこうですから、早期診断には血液検査ではなく画像診断が必要です」。さらに重要なのは「正しい知識を持つこと」と中山氏。インターネットに出回るネガティブな情報に振り回されず、国立がん研究センターなど公的な機関から情報を入手することを勧めている。
 がんはあらゆる死因の中でも死亡数でワースト1であり、かつそのうちの約3割をも占める。国や府県でも新たながん対策推進計画を立てている最中だが、「自治体は、若い世代にもっと手厚いサポートをしてほしい」と中山氏。今後、早期発見が必要な若い世代を検診にどう呼び込めるか、国、そして自治体の本気度が試されている。


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