緊急課題。あと10年しかない? 行き場を失う ごみの行方


 自然環境を保護する活動が広がる一方で、毎日排出されるごみの量やその処理には、いまだ多くの問題がある。自治体はどのような取り組みをしているのだろうか。また、市民としてできることは何だろうか。

【ごみの排出量は減少するも、食品ロスは深刻】
 ごみの総排出量は、2012年度をピークに全国的に減少傾向にある。しかし、家庭から排出される生活系ごみには、まだ食べられるのに捨てられている食べ物、いわゆる「食品ロス」が多く、その量は全国で年間約630万トンにものぼる。また、生ごみの排出も多い。
 神戸市は、啓発によりごみの総排出量は平均値に抑えられているが、燃えるごみのうち約8%が食品ロス、約20%がリサイクル可能な紙であるという課題を抱えている。

【最終処分場は全国的にひっ迫】
 排出されたごみのうち、資源ごみ以外、つまり可燃ごみの焼却灰や不燃ごみ、工場のごみ、工事現場の建築廃材や建設残土などは全て最終処分場に運ばれ、埋め立てられる。近畿圏の最終処分場は、自治体が所有するものと広域で共同利用するものの2種類がある。自治体が所有する最終処分場では、山間などに不燃ごみや焼却残渣を埋め立てているが、残余容量には余裕がない。1998年度と2015年度を比較すると、最終処分場の数は、大阪府で16施設から12施設に、兵庫県では63施設から40施設にまで減少している。一方、処分場を自己保有していない自治体が排出するごみや、自己所有の処分場で埋め立てできないごみは、近畿圏の自治体が共同で出資する、広域的な最終処分場に埋め立てられる。これは「大阪湾フェニックス事業」と呼ばれ、神戸、尼崎、大阪、泉大津の4カ所にある埋立処分場で棄物が処分されている。

【あと10年。猶予のないフェニックス】
 最終処分場の残余容量は減る一方だが、近畿圏の内陸部はすでに土地利用が進み、自治体や事業主が個々で新たな処分場を確保するのは極めて難しい。そこで長期的・安定的に廃棄物を適正処理するために生まれたのがフェニックス計画である。大阪、兵庫をはじめとする近畿2府4県168市町村から発生する約1億トンもの廃棄物を受け入れている。人口にすると約2千万人分で、これは近畿2府4県の総人口の約9割にものぼるという。
 埋め立てによって生まれた土地は港湾として活用され、地域の発展に貢献。緑地やコンサート会場などとしても有効活用されている。しかし、このフェニックス事業にも限界が近づいている。予定では、残余容量がゼロになるのは10年後の2027年だ。また4カ所の処分場のうち、尼崎沖・泉大津沖の2カ所はすでに進捗率が90%を超えており、神戸も73%を超えている。全ての処分場が満杯になると新しい処分場が必要になるが、現時点ではまだ、次の埋立処分場の整備に向けた検討を開始した段階で、計画から受け入れ開始まで約10年間の期間が必要とされている。また、整備には約1千億円の費用がかかるという。ごみ減量推進活動を行う「ごみ減量ネットワーク」の北井弘さんは「フェニックスは安い価格で受け入れを行なっていますが、もうもたないのだということを積極的に市民に周知するべきです。自治体の危機感が足りません。ごみ処理を続けるには、今の施設を20年、30年と維持させるしかない。そのためには、最終処理するごみの量を減らさないといけません」と話す。可燃ごみ、不燃ごみ両方の減量が早急に求められている。

【求められるメーカー努力】
 北井さんによると、フェニックス事業がある関西では最終処分量を減らす施策があまり打たれなかったため、ごみの減量化に出遅れているという。環境省による2015年度の1人1日当たりのごみ排出量ランキング(人口別)で全国トップ10に入っているのは、関西では京都市と奈良県野迫川村のみだ。「市民レベルの取り組みだけでは最終処分量を減らすことは難しい。メーカーや事業者の努力も必要です」と北井さん。リサイクルできない商品を作らないこと、簡易包装にすることなどが企業に求められている。しかし、包装を簡易化することが「売れなくなるリスク」につながるとの危惧から、一歩が踏み出せない企業も多い。この問題に対し、神戸大学経済学部の石川雅紀教授が「ごみじゃぱん」というNPO法人を設立。ゼミの学生が主体となって簡易包装の普及に取り組んでいる。その一つが、「減装(へらそう)商品」だ。通常に比べて中身あたりの容器包装の重量を一定の基準に照らして評価認定し、商品にマークを印字したり、地域の店舗でPOP掲示するなどして推奨。販売実験によって消費者の意識調査を行い、メーカーにその声を届けている。現在では山崎製パンから減装マークを印刷した商品が発売されるなど、全国に広がりつつある。

【“減量”優先の取り組みを】
 ごみの分別の方法は自治体の財政力や処理ルートによって異なるが、区分が細かくなるほど分別の習慣がついて、リサイクル量は増えるという。しかし、「分ければ良いというものではない」と北井さん。「“3R”の優先順位を知ることが大切です。減量(Reduce)、再使用(Reuse)、再資源化(Recycle)の順で進めるべきで、まずはごみの減量に取り組んでほしい」と話す。具体的には、リサイクルできないものを作らないように市民がメーカーに声をあげること、そのような商品を買わないこと、日頃から子どもと一緒に分別し、ごみ出しをすることなどを提案している。また石川教授は、「分別しなさい、ではなかなか解決しない。無理をせず、自然とごみが減っていく社会が理想」と意識改革の必要性を説く。北井さんは、「自治体のごみ減量講座や工場見学に参加し、自治体も子どもの環境学習を積極的に進めてほしい」と話す。
 なお、大阪ごみ減量推進会議では、ごみ減量について学ぶ無料のセミナーを来年1月まで開催中。詳しくは大阪ごみ減量推進会議のHPで。


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