子どもたちのために “なりたいPTA役員”への改革


 共働きやひとり親の家庭が増えている昨今、多くの小学校や中学校で、PTAの仕事が保護者の負担になっている。役員決めの際にはトラブルが起きやすく、保護者間の不公平感や不満が噴出する。また、多くの人が義務感で役員に就くため、仕事が形骸化し、「子どものため」という本来の目的が失われつつあるという。こうした中、「楽しいPTA」「役員になりたいPTA」へと変革させた学校が大阪府吹田市と神戸市にある。その2校の取り組みを紹介する。

【吹田南小の場合】
クラブ活動のように楽しく、人と人がつながるPTAに
 大阪府吹田市立吹田南小学校のPTAは、広報部などの専門部会が全て廃止になり、現在は会長や副会長など10名の本部役員のみで運営している。メンバーは、全員が立候補や保護者同士の誘い合いで自ら参加した人たち。仕事内容も人数も任期も固定せず、その時に集まったメンバーでできることを、できる時に行う。強制ではないので押し付け合いがなく、お互いが「ありがとう」と言える関係だ。クラブ活動のように楽しく、人と人がつながる居心地の良い場所になっている。

行事を大幅削減、会議はネット
 同校の地域では、転入者が増えライフスタイルが多様化している。地域や保護者間のつながりが希薄になる中マンネリ化するPTA行事や膨大な業務量に、保護者からは不満が募っていた。こうした状況を打開するべく、2015年のPTA会長久野栄二さんを中心に当時の役員が改革を始め、2016年に新制度がスタートした。
 行事や仕事は一旦全部なくし、ゼロから積み上げた。全保護者に取ったアンケートをもとに見直しを行なった結果、年間の行事数は約半分に減少、内容も見直した。一方で、地域活動や子どもの安全に関わる仕事は残し、子どもの教育のために何かしたいという思いから、音楽会や読書支援活動などは新たに始めた。運営委員会は月に一度、第一土曜の午前に開かれるが、都合がつくメンバーだけが参加する。そのため、普段はLINEや電子会議システムを利用してやりとりを行なっている。

自由に楽しく、PTAは親の居場所
 大きな変革を前に、保護者からは戸惑いの声もあった。また、地域の人々からも「地域活動に関わってくれなくなるのでは」という心配の声が多く、調整が難しかったという。しかし、実際に移行してみて「困った」との意見はなかったそう。自由度が高く楽しいから、役員も1年限りではなく2年、3年と続けられる。すると経験や知識が蓄積され、運営に余裕も出てきた。今後は、地域や市とのやりとりを行う会長をどう決めるかが課題で、「部活で毎年キャプテンを決めるように、会長も決まれば」と久野さん。そのためにも、「楽しい」だけではない、目に見えるメリットを作りたいと新たな仕組みづくりを目指している。

【本多聞中学校の場合】
50人超が立候
 補戸市の本多聞中学校では、役員を学年ごとに立候補で決めている。広報部などの専門部会はなくし、希望する仕事内容と日時を登録するエントリー制に変更。定員は設けず、現在は約50名が役員になっている。これほどの人数が集まる大きな理由は、月に一度行われる運営委員会への参加にある。同会は元々、会長や副会長など本部役員と学校の先生による単なる行事の報告会だったが、現在は役員全員と校長や教頭、生徒指導の先生とが活発に意見交換を行う場として機能している。改革当時の同校校長で、現・桃山台中学校の福本靖校長は「多様化している家庭の要望に応え、子どものためになる学校運営を行うには、保護者にも学校運営に参加してもらうのが一番です」と話す。

学校との意見交換の場に、どんどん増える参加者
 改革を進めたのは、2013年から15年までの3年間。役員を押し付け合うPTAの現状に疑問を持った当時の会長今関明子さんと、保護者との連携を深めたいと考えていた福本校長のベクトルが合った。
 「立候補したくなるPTAとは何か」を考えた時、その活動が我が子にとって有益であることだと行き着いた今関さん。まずは全保護者に取ったアンケートを元に、直接子どものためにならない行事は徹底して削減し、簡素化できることは簡素化した。さらに、運営委員会を、保護者が質問や要望を投げ学校側が答えるという実りある会に変えた。保護者からの厳しい意見も受け止め、「直すべきところは来年からではなく明日から」という福本校長の姿勢は保護者に響いた。参加は強制ではないが、回を重ねるごとに参加者が増え、今では毎回役員の8割ほどが出席する。「意見が偏らないように、普段学校から距離を置いている方やフルタイムで働く方、不登校の方、いろんな家庭の人にPTAに参加してもらうことが重要」と今関さん。

保護者の意見がすぐに反映、PTA改革が学校改革に
 改革の年の役員さんに負担をかけてしまうことが心苦しかった」と話す今関さん。役員の中には、「1年我慢すれば終わるのだから」と改革に否定的な考えもある。しかし改革により、学校には様々な変化が生まれた。「冬場のひざ掛けを許可してほしい」「図書室の開室日を増やしてほしい」など、これまでは仕方ないと諦めていたことも気軽に学校に意見できるようになり、その意向はどんどん反映されていった。今では、保護者と学校は子どものために共に手を取り合うパートナーとして、良い信頼関係が生まれている。
 改革の動きは広がりつつある。今年度からは、桃山台中学校でも新制度がスタートする予定だ。福本校長は「やるからには責任をもち、確実に成功させなければと思っています」と話す。


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阪神版
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