市の未来を動かす 最上位プラン「総合計画」独自性あふれる神戸市


 自治体では、全ての施策の基本となり、まちづくりの根幹をなす「総合計画」を作成している。一般的に、目指す将来像を記載する「基本構想」とそれを実現するための方向性を記載する「基本計画」、具体的な施策を示す「実施計画」によって構成されている。神戸市では、どのような総合計画のもと、どこを目指して進んでいるのか。市にうかがった。

【市民への分かりやすさを重視】
 神戸市では、「新神戸市基本構想」に2025年までの長期的な展望が描かれている。阪神淡路大震災前の1993年に作成されたものだが、「世界とふれあう市民創造都市」を基本理念に、「国際性にあふれる文化交流のまち」「次代を支える経済躍動のまち」など5つの都市像を掲げ、今でも色褪せないメッセージが息づいている。神戸市は、これをもとに第5次神戸市基本計画を策定し、目指すべき都市像として、「創造都市(デザイン都市)の実現」という方針を決定。さらに、2016~2020年までの5カ年の実施計画である「神戸2020ビジョン」を策定している。
 神戸2020ビジョンは、従来の実施計画とは異なり、市の目指す方向を市民に分かりやすく伝えるため、「施策の重点化」や「見える化」など5つの方針にこだわって策定された。職員には、施策に付加価値を加える「+design」、神戸市民としての愛着や誇りを持つ「シビックプライド」など、施策を進める上で職員が持つべき視点を明示。また、ビジョンを描いた写真集や市長のインタビュー動画も作成し、神戸が新しいステージに向かっていることを市民に分かりやすく伝えている。

【少子高齢化を抑制し 若い力があふれるまちに】
 出生数の減少と東京圏への転出超過により、政令指定都市の中で全国5位だった神戸市の人口は、2015年以降6位となった。現状のままでは、150万人都市である神戸が、2060年には人口が約3割減少すると推計される。中でも15歳未満人口の減少が著しく、75歳以上の高齢者人口の割合が増加傾向にある。
 こうした背景をふまえた神戸2020ビジョンのテーマは、「若者に選ばれるまち」と「誰もが活躍するまち」。年間出生数1万2千人の維持と東京圏への若者の転出超過約2,500人を解消することを数値目標に掲げている。特に2025年以降は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になるため、若い世代を増やし、活力溢れるまちを目指す方針だ。

【若い力を惹きつける 市民サービスを展開】
 神戸市では、大学を卒業後、東京や大阪へ流出する若者が多い。そこで、若者に魅力的な仕事づくりの一環として、2015年から起業家の育成支援を行なっている。その一つが昨年度から始まった「Urban Innovation KOBE」。ITを活用し、起業家と市職員の協働により地域課題の解決に向けて共同開発を行うもので、若者によるイノベーションが期待されている。今年度は8テーマに対して申し込み総数が昨年の約2倍の60社あり、そのうち7社が採択された。また、ポートアイランドにある神戸医療産業都市への企業誘致など、新たな雇用創出にも取り組んでいる。
 まちの魅力向上にも注力している。博物館など文化施設のリニューアルや新しいテクノロジーを体験するクロスメディアイベント「078」の開催支援、三宮の再整備など、若者に選ばれるまちづくりが進められている。三宮駅南側の交差点を中心に、人と公共交通を優先とした、歩いて買い物や音楽などを楽しめる都市空間の創出を計画中だ。一方、人口が特に減少傾向にある北区や西区では、若者への里山暮らしのコーディネートや就農支援を行い、地域の活性化に取り組んでいる。
 出産・子育て支援では、通学費助成など子育て世帯の経済的負担を軽減する細かな施策が多数展開されている。特に待機児童問題に対しては、保育所の整備だけでなく、市内の私立保育所等で採用された保育士または幼稚園教諭に対して最大140万円の一時金を支給するなど、手厚い支援を行なっている。保育人材を確保し、子どもへの質の高い保育・教育の提供につなげるという。

【高齢化や防災などが今後の課題】
 若者人口が単に増加すれば良いというわけではない。近年、職場や駅に近い場所に住む「職住近接」を望む人が増え、神戸市でも中央区に新築のタワーマンションが建設されて都心に人口の比重が傾いている。しかし、三宮に商業機能を集中させるため、また数十年後のマンション住民の高齢化や防災面を考えれば、タワーマンションの乱立は望ましいことではない。現在、市では有識者を支えた研究会を立ち上げ、今後のタワーマンションの在り方について、検討を進めているという。
 また、高齢化が進む北区や垂水区では、交通の確保が課題となっており、地域コミュニティ交通を導入するなどの支援を行っている。今後は住み慣れた地域での地域包括ケアシステムの構築や災害時の支援などが課題となる。

【一人ひとりの魅力を高める質の高いサービスを】
 様々な独自性ある計画だが、すみやかな成果を見出すことは難しい。しかし最近では、大学生と地域のコラボ事業や市民主体のイベントが生まれるなど、ユニークな取り組みが広がってきている。「今後の神戸の発展には、一人ひとりの力が大事になる。そのためには、従来型の画一的なサービスではなく、より質の高いサービスを市民に提供することが大切。全国的に人口減少が問題となっているが、人口だけにこだわらず、市民生活の質を高めていきたい」と同市の担当者は話す。一人ひとりが充実した生活を営むことができる環境を整えて神戸への愛着を育むとともに、まちのグレードを高めていくことに力を注いでいくという。


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