定年男性の地域デビューのきっかけに 都市型農業に取り組む「豊中あぐり」
2021.06.01
豊中のまちづくりを担う団塊の世代との取り組み
豊中市社会福祉協議会でコミュニティソーシャルワーカーとして活躍する勝部麗子さん。コミュニティソーシャルワーカーとは、生活が困難な家庭など、支援を必要としている人や地域に対し、援助を通して地域と人とを結び付けたり、生活支援や公的支援制度の活用を調整するための専門職。勝部さんは2004年に日本初のコミュニティソーシャルワーカーとなって以来、様々な支援を行っている。
豊中市社会福祉協議会 福祉推進室
室長 勝部麗子さん
大阪府豊中市生まれ。1987年に豊中市社会福祉協議会に入職。2004年に全国で第一号のコミュニティソーシャルワーカーとして、地域住民の力を集めながら様々な取り組みを行っている。
取り組んでいる活動の一つに、定年男性だけが参加できるコミュニティがある。定年男性は地域から孤立しがちで、全国の都市部での課題にもなっている。豊中市も千里ニュータウンができて50年が過ぎ、定年を迎える男性が増えているという。「定年男性の孤立は、孤独死やアルコール依存などさまざまな問題につながることもあります」と勝部さん。またそれとは別に、豊中市は農地が少ないため農業の先細りが懸念されている。そこで勝部さんは、定年後の男性に農業を通して地域との関わりを持ってもらうことを思い立った。2016年、宅地を耕し収穫や販売、地産地消イベントにも参加する都市型農業のコミュニティ「豊中あぐり」を立ち上げた。
地域活動のギャップに戸惑う
しかし、思わぬ壁に直面してしまう。「効率を重視し指示命令系統のない活動に戸惑ったり、企業勤めの感覚が抜けない方もいました」。参加者たちは、多くの時間を企業で過ごしてきたが、地域活動は企業での働き方とは違う。そこで勝部さんは率先してコミュニケーションの橋渡し役を務めることにした。すると少しずつメンバーが足並みをそろえ、互いを支え合う体制に変化していった。「名刺を作ったり、それぞれの得意分野の仕事を割り振ったりしながら競争社会で生きてきた人を共生社会に取り戻す試みが続きました」。
阪急岡町駅近くにある岡町農園。住宅地にあるため、害虫や匂い対策をしっかりと。足場はレンガを置き、スタイリッシュに仕上げている。
豊中あぐりから地域デビューを目指して
農業未経験者ばかりだったにもかかわらずそれぞれが工夫を凝らし、米やジャガイモなどを栽培していく中で、参加者は次第に農業に没頭していったという。2018年から参加している平野恭介さんは「妻に紹介されて参加しました。野菜づくりははじめてですが、どうすれば上手く育てられるか仲間と一緒に調べたり、考えたりするのは良い刺激になります」。今では豊中あぐりが生活の中心になっているそうだ。
豊中あぐりのメンバーとして活動する平野恭介さん。今では家庭菜園をするほど野菜づくりが趣味に。
「収穫した作物を料理し販売することが喜びになり、また、その中で地域の方々と繋がることが生きがいになっているはずです。活動を通して、社会に参加するきっかけを作ることができれば何よりです」。勝部さんは「豊中あぐり」という場で、定年男性の新たな道を見出し、なおかつその力を豊中のまちづくりにも活かしているのだ。
芋焼酎「豊中あぐり」
菜園で収穫したさつまいもを焼酎に。会員拡大のツールに使われている。
◆「豊中あぐり」は2021年7月末発行予定の「北摂まち本」にも登場予定です。
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