-茨木市-築200年の古民家に新たな息吹を 人がくつろぎ、集う文庫カフェ
2022.10.09
茨木の西国街道沿い、宿川原町にある「土かべ文庫」は、週末の金・土曜のみ開いている本と珈琲の店。築200年でかなり傷んでいた古民家を、ほぼセルフリノベーションでよみがえらせた店主の綾田さんに、きっかけとそこに至る想いを聞いた。
当初は倉庫にするつもりが 眺めているうちに心変わりして…
幼い頃から本好きだったという綾田さんは、東京での出版社勤務を経て、書籍保管(出版倉庫)の業務を行なっていた。「もう少し広い場所はないかと探していたところ、この物件と出会いました。当初は解体して倉庫を建てるつもりでしたが、立派な梁や味わい深い竹天井を眺めていると、これをどうにか活かせないものか、と考えが変わっていきました」。
そこで綾田さんは、リノベーションすることを決意。建物は少し傾き、傷みも激しかったため、まずは傾きの修復と屋根の葺き替えを古民家専門の大工に依頼した。「内装は大工さんに教えてもらったり、いろいろ調べながら約2年かけてすべて自分で施工しました。床には杉板を張り、本棚も作成。苦労したのは、土間にある竹天井です。かなり煤(すす)をかぶっていましたが、大工さんが磨けば飴色になるよ、と教えてくれて」。広間の天井も土間と同じ雰囲気にしたくて新たに竹を買ってきて綾田さん自身が編んで張ったという。
カフェとして利用するもよし、本を探しに来てもらうだけでも
この古民家との出会いは、綾田さん自身の働きかたを見直すきっかけにもなった。「ちょうどその頃、体を壊したこともあり、一旦仕事に区切りをつけようと思いました」。縁に導かれるように仕事を縮小し、週末ここに通ってリノベーションにいそしむのは、とても楽しい時間だったと話す。
キッチンが設置された土間。タイルも自身で貼り、土壁も塗り直した。電気工事士の資格を取得して、照明も自らつけたそう。
土かべ文庫は、その名のとおり、数多くの書籍が並んでいるほか、カフェとしても利用できる。「広間に並んでいる本は購入できるので、本を探しに来ていただく方もいますし、本を片手にコーヒーを飲みながら2時間くらいゆったりと過ごされる方もいらっしゃいます」。また不定期で開催されるゾーイさんのスパイスカレーの日やたまに居残り文庫ということで20時まで開けていることも。「絵本も置いているのでお子様連れから幅広い年齢の方々に楽しんでいただけているのがうれしいですね。庭にある納屋はゲストハウスにリノベーションしていますし、他にもこの空間を活用して楽しいことができればと思っています」。新たな役割を持った古民家は、これからその魅力を多くの人に伝えてくれることだろう。
西国街道沿いの雰囲気に馴染む佇まいの外観。
【土かべ文庫】
茨木市宿川原町10-17
金・土 11時〜18時
記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。