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-高槻市-「しぶしぶ参加」の現状を変えたPTA改革

2024.10.06
高槻北高校教諭の水口さん(左)と前PTA会長の重村さん(右)

 

保護者が協力しやすい環境づくりとは?

PTA活動と聞くと「できればやりたくない仕事」と考える人は多いだろう。高槻市の北東部に校舎を構える大阪府立高槻北高校においても、毎年の役員選出など多くの課題を抱えていた。ところが近年、大胆な改革に乗り出し、徐々に成果を挙げているという。

「人が集まらない」従来型の組織運営

高槻北高校のPTA活動において長らく課題となっていたのが、役員を引き受けてくれる人材を毎年探し出すことだ。数年前の同校では、各クラスから2人のクラス委員を選出。さらに広報活動や環境整備、進路指導支援や保護者交流など、多様な活動を行う専門委員会に多くの保護者が参加していた。

大所帯の組織を運営する人員は立候補者を募るだけでは集まらず、教員側が定数確保に奔走していた。組織をつつがなく運営するため、例年通りの取り組みを繰り返すのがいつしか慣習となり、淡々と物事が進んでいく活動状況だったという。同校の教諭としてPTA運営に関わる水口翔太郎さんは、「やむなく引き受けてくださる方も多く、組織全体の活動意欲は高いとは言えませんでした」と振り返る。

制約によって動き出した変革

一つの転機のなったのがコロナ禍だった。外出や交流の機会が制限されて活動できない状況が続いた。同校のOBでもあり、2022年度から2年間PTA会長を務めた重村秀則さんはこう振り返る。

「会議の場では『特に報告事項はありません』と繰り返されるばかりでした。一方で広報活動や環境整備の仕事は変わらず忙しく、委員ごとの負担に偏りが生じていたんです」。

水口教諭と重村前会長は、会議を終えた後にたびたび意見を交わしながら、変革への決意を固めることに。舞台裏で起こった小さなやりとりから、同校のPTA改革は始まった。

スリム化と並行した、新たなアイデア

まず着手したのが、委員数の削減だ。クラス委員の選出数を2名から1名へと半減。さらに専門委員の数も活動実態に合わせて全体で3割削減した。従来は介護や持病など特別な理由がない限り委員の辞退はできなかったが、その制限も撤廃した。無理に大量の人員を確保する方針から転換したことで、結果的に活動意欲の高い保護者が集まるように変わったという。

一方、大胆な削減によって人手不足に陥るリスクもあった。そこで効果を発揮したのが、新たに設置した「協力委員」制度だ。体育祭や文化祭などの大きな行事に限り臨時で参加を募るこの委員について、設置の前段階としてアンケートを実施したところ、「行事のみであれば手伝える」との意向を示した保護者の数は、従来の委員の総数をはるかに上回っていた。

家事や仕事で多忙な保護者でも参加しやすい制度を設けたことで、PTA活動への心理的な障壁は大きく下がった。重村前会長は「体育祭や文化祭などでは、役員席から間近で子どもの様子が見られるんです。こんなに楽しい時間は他にありませんよ」と、活動でしか得られない体験があることを力説する。協力委員への参加は、PTA活動の楽しさや学校の魅力を間近で感じてもらう、きっかけ作りでもある。

協力委員制度で体育祭に参加する保護者

実は存在する「協力したい」層を信じて

人員の削減や辞退理由の緩和といった改革を進めるにあたり、「誰も役員を引き受けなくなるのでは」と懸念の声もあったという。しかし、「子どもが通う学校の運営に、なんらかの形で関わりたい」という保護者たちの潜在的な協力意欲が後押しとなり、具体的な改革へと踏み切ることができた。現在は総勢100名を超えているという協力委員の数が、その方向性に間違いはなかったことを示している。

水口教諭は「PTA活動を広報する活動にも力を入れていきたい」と今後の意気込みを語りつつ、最後にこう締めくくった。
「委員数の削減や活動内容の見直しなど、前例を変えることに不安を感じるかもしれません。でも、協力してくれる人は必ずいるんです。思い切って実行することが、何より大切だと思います」。

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