-茨木市-茨木市の取り組みから見る水道の現在と未来
2024.10.28
茨木市の水道管の総延長は約800kmに及び、そのうち法定耐用年数である40年を超えた管はおよそ20%。ニュータウン開発などを背景として1960~70年代に敷設が進んだ近隣の市よりも低い水準でもあり、市街化区域の拡大抑制によりコンパクトな居住地域を形成してきた茨木市ならではの特徴だ。中長期的な管理運営方法を基準に、市内全域の水道管路の老朽状況や重要性の評価を行い、優先度の高いものから更新を進めている。なお更新された新たな管の実質的な耐用年数は、外面に新たな塗装技術を施した管を採用することにより、特に長いもので80~100年の寿命が見込めるという。
2018年の大阪北部地震では、配水管の被害はまぬがれたものの、大阪広域水道企業団の村野浄水場からの受水停止があったことから、複数の水源を確保することの重要性が再認識された。茨木市では、重要度が高く代替機能のない基幹管路(※)を中心に整備を行っており、中でも注目すべきなのが震災時のバックアップ体制だ。大阪広域水道企業団の村野、三島(万博公園)および茨木市の十日市の各浄水場からの受水体制を再整備し、震災などによって一部が停止しても、他の浄水場が受持つ形で安定供給を確保しているという。
バックアップ体制の図
さらに災害時の給水体制の強化にも取り組む。タンク容量 1,700 リットルの給水車を配備したほか、市内11カ所の配水池に緊急遮断弁を設置し、8カ所に耐震性貯水槽を整備した。そのほかにも、隣接都市との相互連絡管の整備など、応急給水体制の確立を図っているところだ。
※茨木市では、導水管、送水管、配水本管(口径 400mm 以上)を基幹管路と定めている。
北摂7市で最も安い水道料金
一方、水道事業の財政面でも将来を見据えた取り組みが始まっている。茨木市の水道料金は、北摂7市の中で高槻市と並んで最も安価な水準を維持してきた。この背景には前述した茨木市のまちづくりも関係している。税金に依存せず水道料金でまかなう水道事業において、人口の数は収入に直結する。彩都西部エリアの開発や新駅の建設、大学立地などの駅周辺整備などに伴い、いまだ茨木市の人口は微増傾向を維持しているため、2010年の改定以降、料金の値上げは実施せずに維持することができた。
1か月・20立方メートル使用料金(メーター使用料含・消費税込)出典:茨木市 水道料金北摂7市比較
しかしそれでも、今後の人口減少や施設の老朽化に伴う更新需要の増加により、料金の見直し自体はいずれ実施する必要があるという。茨木市では50年先を見据えたシミュレーションを行い、2030年度に8%程度の料金改定を検討している。この改定により、さらに10年後の2040年度でも持続的な組織運営ができるとの見通しだ。なお、実際の料金見直しがなされる場合、審議会で議論した上で、市議会へ諮る必要がある。前述した時期や上げ幅は、あくまで現時点での試算である点に注意しておきたい。
安全安心をPRしつつ、水道をより身近に
ところで、いまだ「水道水はまずくて飲めない」とのイメージが市民の間にも根強いという。茨木市ではそのイメージを払拭すべく、安全でおいしい水の提供にも力を入れている。水質検査は法令で定められた51項目に加え、独自に33項目を加えた基準で実施し、検査結果をホームページ上で公開。また、地域のイベントにも参加し、給水車を使った応急給水体験のほかに、いわゆる「利き水」体験を実施している。体験した市民はミネラルウォーターと飲み比べてみても、違いがわからないことも多々あるという。今後も市民との接点を持ちながら、イメージアップに向けた取り組みを継続していく考えだ。
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