地域情報紙「City Life」が発信する地域密着のニュースサイト

-豊中市- 約20年ぶりに水道料金を値上げ 転換期を迎えた水道事業のこれから

2024.11.28

水道料金はいつ、どれくらい変わる?

豊中市は来年2月1日から、実に20数年ぶりとなる水道料金の値上げを発表した。背景には、老朽化した水道管の更新や耐震化などにかかる費用の高騰や、私たちのライフスタイルの変化があるという。

今回の値上げは水道料金だけでなく下水道使用料も対象となり、上昇幅は使用量の区分ごとに異なる(図参照)。例えば、2か月で20㎥使用したとして試算すると、現行の水道料金と下水道使用料の合計額は3,260円となるのに対して、改定後は4,358円となり、値上げ額は2か月で1,098円となる。2か月の使用量が40㎥だと、現行の7,836円から改定後は9,154円となり、1,318円の値上げだ(金額はいずれも税込)。

 

水道料金と下水道使用料は2か月に1度請求される

実際に新料金が適用される時期については、偶数月が検針の場合は4月検針分から、奇数月の場合は5月検針分からとなる。なお、事業者などに多い毎月検針のケースだと、3月検針分から適用される。豊中市では12月上旬から中旬にかけて6回の市民説明会を開き、今回の改定内容や背景について説明を行う方針だという。

 

値上げに踏みきった背景とは?

まず挙げられるのが、老朽化した水道管の更新に関する問題だ。市内に張り巡らされた約817kmの水道管は、その多くが高度経済成長期の1960~70年代に整備されており、一般的な法定耐用年数である40年をすでに超えている箇所も多い。豊中市では、独自の更新基準年数を設けて費用を抑えつつ、年間約8.5kmずつ更新を実施しているものの、世界的な物価高騰を受け、かかる費用も年々増加している状況だ。

もう一つの問題には、水道事業の収入減少が挙げられる。豊中市に限らず、多くの自治体の水道事業は税金に依存しておらず、水道料金が収入源となっている。つまり各世帯が使う水道の量が減れば、収入の減少に直結するのだ。昨今では節水機器の普及が進んでいるほか、豊中市の人口は微減傾向にある。2022年度の事業決算では前年度に引き続き、給水にかかる費用が水道料金による収入を上回る、いわゆる“原価割れ”の状態に陥った。現行料金のまま推移すると2026年には赤字が発生する見込みとなり、その状況を改善すべく今回の料金改定へと至った。

 

豊中市独自の取り組み漏水などに素早く対応できる「ブロック化」

水道料金の値上げとともに、地域住民にとって大きな関心事であるのが、水道管の災害対策だ。豊中市では、漏水などの非常事態に備えた「配水ブロック化」を進めている。

この取り組みは、市内の給水区域を44ブロックに分割し、水量や水圧を管理するものだ。災害などで漏水が発生した際、通常であれば広い区域で断水を余儀なくされてしまうが、ブロック単位で管理することによって断水エリアを最小限に抑え、素早い復旧が可能になる。1979年から進めてきたこの取り組みは、2023年度の時点で40ブロックが完成しており、2027年度内には全てのブロックの整備が完了する予定だ。

 

水インフラの転換期を迎えて

これらの取り組みを含めた上下水道への理解を深めてもらうため、豊中市では広報活動にも力を入れている。市民の生の声を集めつつ、施設内の見学会などの催しも行う「上下水道モニター制度」や、職員たちが企画立案から撮影・編集まで手掛けた解説動画の公開など、取り組みの種類は多岐にわたる。そのほか、災害発生時に備えたハンドブックの配布も行っており、今後も水道にまつわる情報を広く発信する活動に注力する方針だ。

 

 

記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。