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-摂津市- 町工場の技を見て、触れて、作る「せっつキッズファクトリー」参加企業の魅力も伝わる場に

2025.01.04
溶接体験をする子どもたち。岩田さんをはじめ、熟練の職人がサポートした。

 

摂津市商工会と摂津市の共催で、昨年10月に行われた『せっつキッズファクトリー2024』。ものづくり体験のワークショップやエンターテインメント、フード&マルシェなど、工場見学だけにとどまらない内容で好評を博した。参加企業のひとつである(株)東洋工作所の岩田さんに当日の様子やその意義について話を聞いた。

鳥飼地区の5つの町工場が参加して開催された

今、全国で産業振興の目的で注目を集めている『オープンファクトリー』。ものづくり企業による工場見学だけでなく、地域の一体性や魅力づくりとして進展を見せている取組みである。今回、摂津市では鳥飼地区の5つの工場で、『せっつキッズファクトリー』として開催した。

参加企業は『上野鉄工(鳥飼本町)』、『アサヒ工作所(鳥飼本町)』、『カネタ(鳥飼中)』、『ワコーメタル(鳥飼本町)」、『東洋工作所(鳥飼銘木町)』の5社で、工場見学のほか、鉄で作るマグネットアートやレジンキーホルダーづくりなど、各社が持つ技術に触れることができる、ものづくり体験のワークショップなども行った。

東洋工作所の技術の一つである溶接を子どもたちも体験

そのうちの一社である東洋工作所は、プラント配管・溶接工事・製缶・機器据付等を中心に請け負う会社。「最近ではバイオマス発電所のプラント配管工事を手がけました。タンクを作ったり、階段、架台、手すりなどのほか、機械器具の取り付けまでトータルの施工が可能です」と話すのは同社代表の岩田さん。クライアントからすれば、すべて一社に任せられるメリットは大きく、全国から依頼が次々と舞い込むという。

東洋工作所が手がけた茨城のバイオマス発電所のプラント。

中でも同社が誇るのは、精度の高い溶接技術。「せっつキッズファクトリーでは、弊社の技術を体験してもらおうと子どもたちに溶接にチャレンジしてもらいました。感想の中に“溶接面の黒ガラスからから見る炎がとてもキレイでした”とあり、普段なかなかできない体験をしてもらえたのでは、とこちらもうれしくなりました」と岩田さん。

株式会社東洋工作所 代表取締役 岩田 光正さん

子どもたちに「仕事って楽しい」と伝えるのは大人の役目

東洋工作所ではこの『せっつキッズファクトリー』に社員一丸となって取り組んだ。壁に描かれたカラフルなタイトル文字やイラストはドラム缶の製造を行っている若手社員が描いた。「群馬や広島の現場に出向いている社員にも、なんとか都合をつけて帰ってきてもらいました。このイベントに参加することで、これまでの価値観がガラッと変わる確信があったからです。実際この日を境にベテラン社員からは“ここはもう少し、工夫した方が良かったよね”と前向きな意見も聞かれ、業務にも今まで以上に主体的に取り組む姿勢が見られるようになりました」。

ポップなイラストとタイトルが子どもたちを出迎えた。

また業界のファンを増やすことも参加目的の一つであった。楽しそうに働いている大人の姿を見ることで、あまり知られていない製造業や建設業の仕事に興味を持ってもらえたら、という思いがあったという。

新業態で建設業界を変える溶接技術を生かしたアイアン家具

「製造業や建設業に就きたいという子どもたちが少ないのは、実際にその仕事場を見たことが無いからだと思うんです。このイベントを通じて、地元である摂津にはクリエイティブな町工場がたくさんあることを知ってもらって、将来の職業選択の一つになればうれしいですね」と岩田さん。

また、東洋工作所では新業態として溶接の技術を生かしたアイアン家具の製作をスタートさせている。せっつキッズファクトリーでも、キッチンカーによるフードの飲食場所として、屋根付きやブランコ型のベンチが人気を呼んだ。今後、これらを建設現場の休憩所に置いて、建設業界の楽しい職場づくりに貢献できたら、と考えている。

岩田さんが作ったアイアン家具。溶接の技術を何か活かせないかと生み出したアイデア商品。

 

岩田さんが製作した廃棄予定のドラム缶を再生させたテーブルと椅子。せっつキッズファクトリーの担当者である摂津市商工会の白谷さん(右)と摂津市産業振興課の福田さん(左)も興味津々で座り心地を確認。

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