2024年2月、全国から約7000名の小学生がエントリーしたプログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix 2023 」で、箕面市のプログラミングスクールに通う小川智也さん(当時12歳)が見事優勝を果たした。2歳からパソコンに触れはじめ、成長するにつれてプログラミングに没頭するようになった、これまでの彼の人生を追った。
-身近な不便から生まれたアイデア-
同コンテストでは、全国の小学生が開発したアプリなどのオリジナルの作品がプレゼンを経て審査された。近畿エリアの予選を勝ち抜き、全国の舞台に立った小川さんは、「表彰で名前を呼ばれるまで、本当にドキドキして息苦しかったです」と、栄冠を勝ち取った前後の状況を振り返る。
小川さんが開発したアプリの名は「いえPay」。キャッシュレス時代の家庭で起こりがちな「小銭を持っていないから、おこづかいを渡せない」という問題を解決するために開発された。QRコードを活用して利用者同士(親と子)のアプリ内で、金銭の残高や履歴を管理するwebサービスだ。「夏休み中に家のお手伝いをしても、すぐにおこづかいをもらえないことがあったんです。これはキャッシュレス化が進んだせいだと考えて、家の中でも使えるキャッシュレス決済の仕組みを作りました」。家族間で生まれた身近な課題から着想を得たという。
「Tech Kids Grand Prix2023」優勝時の小川さん
-2歳で触れたパソコン、両親も驚愕の急成長-
小川さんとプログラミングとの出会いは幼少期までさかのぼる。「赤ん坊の頃から、おもちゃよりもリモコンやキーボードに興味を示していました」と振り返る母のひとみさん。2歳の半ばに差し掛かったころには、両親のパソコンでタイピングソフトを触りはじめていたという。その成長はまさに日進月歩で、幼稚園児のころには大人が読むようなパソコン関連の本を読んでいたというから驚きだ。
小学校へあがるころには、プログラミングに関する本を読むまでに成長し、自己紹介をするホームページも作った。「HTMLコード(webページを制作するための特殊な言語)を書き換えたら、ホームページの見た目が変わる。それが面白くて」と、小川さんはプログラミングにますますのめり込んでいった当時を振り返る。
9 歳の誕生日プレゼントはキーボード
-暮らしから生まれるヒント-
しかし、息子の知識が急速に深まっていく様子に、両親は戸惑いを感じていたという。「だんだん、質問されてもわからないことが増えてきました」とひとみさん。そこで小川さんが3年生になるころ、地元のプログラミングスクールへと通わせることに。すぐさまその実力が認められ、スクールの講師から「才能がある」とのお墨付きをもらった。しかし、もはや自分たちでは理解できないほど上達してしまった我が子の力量に、両親は半信半疑。「本当に才能があるか証明してほしい」と、そんな両親の想いからコンテストへの挑戦が始まった。5年生で挑んだ最初の挑戦では近畿エリアの決勝まで進んだものの、全国大会への出場は叶わず。そして2度目の挑戦となる直近の大会で、前述した通り見事頂点に上りつめた。もちろんスマホやタブレットの操作もお手の物で、学校では、先生や友人たちから頼られる「IT担当」的な存在となっている。友だちが小川さんの家まで調子の悪いスマホを持ち込んで、「ここはどうすればいい?」と尋ねることもしばしばあるそうだ。
そんな小川さんが開発するプログラムは、常に使う人の目線に立ち、暮らしの中の困りごとを解決できるものを目指している。「いえPay」の開発が夏休みのお手伝いをきっかけとしたように、家庭や学校における生活で直面した課題をきっかけにすることが多いという。「小さなころから、家電量販店に行くと2時間ぐらい帰らなかったんですよ。ゲームやおもちゃには全く目もくれず、掃除機とかドアホンとか、親からすると『なぜそれを?』というものに興味を示していました」と語るひとみさん。暮らしに寄り添う姿勢は、案外こうやって育まれてきたのかもしれない。
リビングで壊れたパソコンを分解中
-将来の夢はIT長者か、それとも?-
現在、中学1年生になった小川さんは、今年秋にI T パスポート試験に合格。通常この資格は、大学生や社会人が取得するもの。「就職するまでには、基本情報技術者試験の合格もしておきたい」と、将来的には技術者向けの資格も取る考えだ。他方、学校の勉強では「英語は得意だけど、数学が難しい」と年齢相応の一面も。将来については「どの学校でもプログラムは独学でやれる」と考え、地元の進学校へ進みたいという。
そしてその先に見据えるのは、IT企業への就職だ。「現状1人で開発していますが、複数人と共同で、もっと大規模な開発をやってみたい」と、新たな挑戦への意欲を見せる。「いつかはLINEみたいなメッセージアプリも作ってみたい」と壮大な目標も密かに抱く。ちなみに現在は、プログラミングに打ち込むのと並行して個人事業主としても開業しており、「文章力はプレゼンの時にも役立つから」とブログも運営中。13歳を迎えたばかりのプログラマーは未来への道筋を描きながら、日々進化を続けている。
<小川さんのHP>
https://ogatomo.net/
【取材協力】
箕面プログラミングキャンプ
TEL: 072-723-7667
営/平日11時~21時・土日祝13時~21時