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TOP > 〈特集〉直木賞作家・今村翔吾さんの連載コラム「吾、翔ける」 > 吾翔けるvol.32 -最終回-
2022年6月号から始まったこのコラムですが、残念ながらこの号をもって最終回となります。
そもそもの始まりは、私が「ボランティアでやるよ~」と言い出したことです。現在、私は新聞、雑誌などに連載を7つくらい持っていますが、そういう経緯で始まったのはここだけです。
何故、私がそのように言い出したのかというと、やはり2021年11月に箕面市の書店「きのしたブックセンター」を引き継いだことが切っ掛けです。
これまでも北摂を訪れることはあったものの、それ以上の縁があったという訳ではありません。だからこそ、こうしてご縁を頂いたことで、少しでも皆さんに喜んで貰えればという一念からでした。 当初は2年程度という話でしたが、こうして半年ほど延びたのは、少し名残り惜しかったからかもしれません。 この2年半は私という作家にとって、まさしく激動の日々でした。その年の1月に直木賞を受賞し、118泊119日で一度も自宅に帰らずに、全国の書店に御礼に回る『今村翔吾のまつり旅』を始めたのが5月末のこと。ちょうどその頃に始まった訳ですから、当初は車中で書いていた訳ですね。 2023年には佐賀県佐賀市に2店舗目となる「佐賀之書店」が、今年2024年の4月には3店舗目のシェア型書店「ほんまる」がオープンしました。
いやいや、本当に忙しかったなあ。こうして振り返れば、当時の記憶がまざまざ蘇り、思わず嘆息を漏らしてしまいます。それでも充実していたのは間違いありません。 私の人生の方向性を決めた2年半でもありました。そのような時期に、私が感じたことを、気儘に書き残す機会を与えてくださったことにも感謝しています。 この連載は今回で終わってしまいますが、勿論、書店がなくなってしまう訳ではありません。現在、書店を引き継いで3年が経ちました。これから5年、10年、いや、私が世を去った後まで、「町の本屋」として残していければよいと考えています。 今後も北摂をうろうろとしていることはあるでしょう。書店には度々足を運びますし、それ以外でもまた新たな縁が生まれつつあります。 もし何処かで見かけた時は、お声を掛けて下されば嬉しいです。作家はシャイな人が多いのは確かですが、私がそうでないことは、これを読み続けて下さった皆様なら、よくよく解っておられるでしょうから。 このコラムのタイトルのように、高く、高く、翔け続ける作家になれるように。これからも良い作品を書いていきたいと思います。 皆様、2年半の間、まことにありがとうございました。