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-箕面市- アーバンリサーチが箕面のNPO法人と協業アップサイクルを通して雇用とやりがいの創出へ

2025.02.06
ブランド名は共有、共同、常識、良識を意味する「common (sense) 」と郵便・提示する・標柱を意味する「post」を組み合わせた造語。MULTIPURPOSE BAGはサイズ展開が豊富で、収納ボックス、植栽の鉢カバー、ゴミ箱など、用途は自由。

 

2018年、業界に先駆けて廃棄衣料品のアップサイクルブランド「commpost(コンポスト)」を立ち上げた株式会社アーバンリサーチ。製作しているのは、箕面市のコミュニティセンター「らいとぴあ21(箕面市立萱野中央人権文化センター)」に通う就労支援を必要としている人たちだ。異業種協業のきっかけと現状、今後の展望を聞いた。

アップサイクルが難しい廃棄衣料を色分けすることで商品化に

近年、問題視されているアパレル業界の廃棄衣料。2017年当時、株式会社アーバンリサーチも少なからずこの問題を抱えていた。アーバンリサーチの執行役員萩原直樹さんは、廃棄繊維を色で分けてアップサイクルする技術を生み出した京都の研究者グループColour Recycle Networkに依頼。衣料は異なる素材が混合し分別が容易ではないため、アップサイクルがむずかしいとされてきたが、この技術で新素材を作り、商品化する方向となった。

異業種協働により就労困難者の雇用創出へ

アーバンリサーチにとって廃棄衣料のほかに課題だったのが、店舗拡大にともなって増員したスタッフに対し、障がい者法定雇用率(常時雇用する労働者数と雇用しなければならない障がい者数の割合)が追いつかないことだった。「そこで紹介してもらったのが、箕面市にある暮らしづくりネットワーク北芝(以下北芝)でした」と萩原さん。北芝は、箕面市萱野にあるNPO法人で、「らいとぴあ21(箕面市立萱野中央人権文化センター)」の運営を行っている。障がいを抱える方や職につくことが難しい方の就労支援をしており、「雇用を生み出したい」という両者の思いがつながり、協働で商品を作ることとなった。

株式会社アーバンリサーチ 執行役員 萩原直樹さん、株式会社URテラス マネージャー 中西清佳さん

在庫切れが続いても他業者に頼まず現状維持

北芝に製作を依頼するにあたり、意識したのは作りやすさ。commpostの第一弾であるMULTIPURPOSE BAGは生地を直線縫いし、端を折り返すだけのシンプルなデザインだ。ミシンがかけやすい生地の厚さにもこだわった。「バッグは自立した方がいい、口は開いていた方がいいなど、いろんな提案をいただきました。製造をお願いしたのではなく、いっしょに作り上げたと思っています」と萩原さん。

販売がスタートすると予想以上の売れ行きですぐに一部完売したそう。生産数を増やすにも、現状の体制では増産がむずかしい状況。半年間、在庫切れが続いたが、売上を優先するより、取り組む価値を重視した。その際、自社の障がい者スタッフにも生産を手伝ってもらい、法定雇用率の改善につながった。

アップサイクルで生まれたのは撥水性のある樹脂素材。ボックスが自立しつつも、折り返しやすい固さになるよう試作を繰り返した。

店頭に並ぶ商品は作り手にとっての“誇り”

リリース翌年に北芝の紹介でMULTIPURPOSE BAGが箕面市のふるさと納税返礼品に。2020年にはcommpostをきっかけに、アーバンリサーチが障害者の社会参加を推進する国際的な活動The Valuable 500に加盟した。2021年はグッドデザイン賞受賞。大阪・関西万博への出店も決定し、commpostも店頭に並ぶ予定。萩原さんは「今後はサーキュラーエコノミー、つまり資源の効率的な利用と循環を図り、廃棄物の発生を最小限に抑える取り組みを強化したい」と語る。

立ち上げから6年、「北芝のあるスタッフさんが、自分で手がけた商品を見たくて、今まで一度も行ったことのないアーバンリサーチの店舗に足を運んでくれたそうです。うちの店舗スタッフはcommpostがどれだけ素晴らしい商品なのか熱弁したそうで、その方は『それを作ったのは私だと思うと、すごく誇らしい』ってキラキラした目で話してくれたんです。売上を伸ばすより、こういった部分にこの協働の価値があると再確認できました」。

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