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-豊中市- 不登校を経て「世界を変える」ゲームトレーナーに

2025.11.03

豊中市出身で、2021年にForbes JAPAN「世界を変える30歳未満」の30人に選出されたゲームトレーナーの東佑丞さん。小・中学校では集団生活に馴染めず不登校となり、ゲームの世界に居場所を見つけて過ごしたという。中学卒業後は通信制高校に進学し、eスポーツの全国大会で入賞。現在は、ゲームトレーナーとして、ゲームを通じた学びの提供と、自らの経験を生かした不登校児とその保護者に向けたコミュニティづくりにも挑戦している。

不登校の日々と、ゲームの世界で見つけた自分の居場所

東さんが学校に行けなくなったのは小学校2年生の頃だった。「小さい頃から人の多い場所が苦手でした」と振り返る。学校を休んでいた間、共働きの両親の代わりに隣に住んでいた祖父母が面倒を見てくれたという。祖父母のパソコンを借り、朝から夕方までゲームに没頭した。やがて「学校へ行っていない=悪」という周囲の目に苦しむ東さんを救ったのは、ゲームの世界だった。「当時はオンラインゲームをプレイしていて、自分の年齢や状況を隠しながら、他のプレイヤーとコミュニケーションをとるのがすごく楽しかった。辛さから解放される唯一の居場所でした」。

フリースクールでの経験から得た自信

転機は中学3年生のとき、父親が見つけてきたテック系のフリースクールに通い始めたことだった。そこでは、通常の学習以外にも、CADやプログラミング、機械工作なども学ぶことができたという。「先生には大学教授や研究者が在籍していたので、スキルはもちろん、物ごとに対しての考え方も学べました。また、人とのリアルな関わりができたことで精神的にも余裕が生まれ、成長できたと思います」と振り返る。

ゲームを戦略的に研究する日々

中学卒業後、東さんは通信制高校のN高等学校へ。「昼夜逆転でも学べる、集団が合わなくても通い続けられるという理由に加え、eスポーツ部の充実した設備やサポートがプロゲーマーを目指す上で理想的な環境でした」。

1年生の夏に出場した、高校生eスポーツ大会「STAGE:0」のフォートナイト部門で6位入賞を果たす。当時は1日に16時間ほどプレイし、自分の動きやクセをスローで見返しては、ひたすら研究に没頭。フォートナイトの勝敗は動体視力といったフィジカルの要素だけでなく、戦略や立ち回りといった思考にも左右される。「元々の性格もあって、自然とPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回していたんです。考えることが楽しくて、どんどんのめり込んでいきました」。

大会で結果は残せたものの、東さんは上位陣との圧倒的な差を痛感することになった。「1日16時間プレイし、あれだけ分析しても上には上がいる」。この気づきは、プロゲーマーを目指していた東さんにとって大きな挫折となり、将来を見つめ直すきっかけとなった。それから、「物ごとを分解して伝えるのが得意だったので、教えることに向いているのでは」と考えるようになり、ゲームトレーナーへの道を決意する。高校1年生の冬から、ゲームのオンライン家庭教師「ゲムトレ」で活動を開始し、現在は30~40人の子どもたちを指導している。

ゲームは人を成長させるコンテンツ

ゲームトレーナーは、技術を教えるだけの指導者ではないという。「問題を見つけて解決策を考え、計画を立て、実行し、振り返る。このようなプロセスを自然に体得できるように指導しています」。保護者からは『物ごとへの向き合い方が変わった」という声も多いという。「ゲームはマイナスイメージも根強いですが、人を成長させる可能性を秘めたコンテンツだと思います。ただし、その効果は、ゲームとの向き合い方や扱い手によって大きく変わります。その可能性を最大限に引き出す方法を示すことこそが、ゲームトレーナーの重要な役割です」。

8月30日には出身地である豊中市の勝尾寺で、学校になじめない子どもや、その親に向け、「親子でゲーム」というイベントを開催した。「自分の経験が誰かの役に立つんじゃないかと思っています。ゲームに対する価値観も変えたい」と、今後はゲームトレーナーを続けながら、コミュニティづくりにも携わっていきたいと話す。


東 佑丞さん
LabFamiliar代表。ゲムトレ所属トレーナー。 Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2021受賞。全国高校生e-sports大会Stage:0 6位入賞。

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