エストニアの人たちに服選びのポイントを聞いてみると、素材へのこだわりに驚かされます。例えば、インナーやルームウェアには、着心地のよいオーガニックコットンを選ぶ人が多い印象です。しかも、彼らはただ肌ざわりや着心地だけで服を選ぶのではありません。

　冬の寒さが厳しいエストニアではウールの衣類が人気ですが、どの牧場のどんな種類の羊か、さらに誰がどんな工程で作っているのかまで気にかけて選びます。食文化でも触れた、素材の「透明性」を大切にする精神は、着るものを選ぶ際にも見て取れます。

　そういった文化を背景に、古着やアウトレットを選ぶ人も多くいます。また、廃車のガラスを再利用して、丈夫なペンダントやイヤリングへと生まれ変わらせるなど、アップサイクルの考え方も浸透しています。その他にも、若い人たちの間では、自ら洋服の修繕を行う人が増えているそうです。

　そんなエストニアを代表するブランドが、「Kelpman Textile(ケルプマン・テキスタイル)」。エストニアの巨匠・Mare Kelpman(マレ・ケルプマン)氏が2012年に立ち上げたブランドで、シンプルな色づかいながらも洗練されたデザインが魅力的です。環境負荷に配慮した上質なウールを使用し、製造工程で化学繊維が混入しないように徹底した品質管理を行っています。

　近年はケルプマン以外にも、エストニアの著名なデザイナーが手がけた家具やインテリアを日本でも見られるようになりました。ミニマルでありながら、機能面とデザイン性を両立させた匠の作品は、きっと日本のお宅にもよく馴染むと思います。

　素材の透明性を重視し、シンプルで上質なものを長く大事にし続けるエストニアの暮らし。衣類やインテリアを日常生活に取り入れてみると、きっと暮らしに豊かさが加わることでしょう。

記事作成日：2022年6月