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TOP > 〈特集〉直木賞作家・今村翔吾さんの連載コラム「吾、翔ける」 > 吾、翔けるvol.2 – 119日の御礼行脚 ”まつり旅”へ –
今、私は兵庫県と鳥取県の県境を走る車中でこの原稿を書いている。何故、そのような事態になっているのか――。
ご存知の方もおられるかもしれないが、私は5月30日より、全国47都道府県の書店、図書館、小学校、中学校、高校、大学、学童、児童養護施設などを巡り、サイン会、トークショー、講演などを行う旅に出ている。
これは直木賞受賞の記者会見の場でやると宣言したことでもある。
当初は100日ほど掛かると想定していたが、全国から300件ほどの応募があり、その全てを請けたことで118泊119日の旅となってしまった。つまり夏の間、ずっと旅に出ている訳だ。 何のためにこのようなことを始めたのか。 一つは書店さんへの恩返しである。我々作家は「書店回り」といって、書店を訪問して直接御礼を伝えたり、サイン本を作成したりする。私はコロナ前など、日本で一番書店回りをしていた作家といっても過言ではないと思う。 昨年、私が箕面市の「きのしたブックセンター」を引き継いだ時、従業員も同様に引き継ぐこととなった。店長は書店員として長いのだが、私が初めて見た作家だったという。そこでふと気づいた。
書店回りの訪問先は出版社が決めてくれるのだが、その大半が東京、次いで大阪、名古屋などの大都市。福岡、仙台でも訪れるのは稀である。 出版社も仕事である以上、人が密集しているところを中心に考えるのは仕方がないことだ。 決して人口の少なくない箕面市でも一度も訪問がなかったのだから、全国には同様の書店が沢山あるだろうと。 斜陽と言われることも多い出版業界の中、書店は地域の文化のインフラの一端を担って奮闘している。 それは都市部でも、小さな町でも変わらないはず。
そんな各地の書店を少しでも元気づけられたら。私でよいならば応援に駆け付けたい。 そんな想いが発端である。今から約二年前の2020年頃。拙作『じんかん』が自身二度目となる直木賞候補になった頃から実は考えていたことである。 そして私は作家になる前、ダンスインストラクターとして多くの子どもを教えてきた。 彼ら、彼女らに背を押され、作家になる夢を追い掛けることになった。 そして今、反対に若者たちに、夢を追うことの大切さを伝えたい。 そんな青臭い想いもあって、学校も訪問することにした。
この旅の終着地は、最後は私のデビュー作であり、多くの読者がいる「羽州ぼろ鳶組」シリーズの主人公たちの故郷、山形県新庄市。 到着は9月24日を予定している。 出版会を盛り上げるお祭りのような男でありたい。そんな願いを込めて、この旅を『今村翔吾のまつり旅』と題した。 旅の中で箕面市にも立ち寄るので、もし来て下されば嬉しい。またYouTubeでも旅の模様を配信しているので、「あほなことしてるなぁ……」と、笑いながら御覧頂ければ幸いである。 と、ここまで書いているうちに鳥取県に入った。119日、楽しんで頑張ってきます。
●7月の「まつり旅」訪問先(大阪府)● ■7/6(水) 高槻市立丸橋小学校 【講演会】、 ふたば書房(茨木店)【サイン会】、 大垣書店(高槻店、豊中緑丘店)【サイン本作成】、大阪市立市岡東中学校【トークショー】 ■7/7(木) 関西外語専門学校国際高等課程【講演会】、太子町立生涯学習センター太子の森【トークショー】、WAY書店(大阪ベイタワー店)【サイン会】
■7/8(金) 八尾市立曙川中学校【講演会】、大阪経済大学 【トークショー】、WAY書店(TSUTAYA富田林店)【サイン本作成】、大垣書店(イオンモール堺鉄砲町 )【サイン本作成】 ■7/15(金) 箕面市立メイプルホール 【トークショー・サイン会】 ■7/17(日) 水嶋書房(くずは駅店)【サイン本作成】、こども本の森中之島【トークショー・サイン会】、梅田ラテラル【トークショー】 ※一般参加の可否は訪問先により異なります。詳細は各訪問先へお問い合わせください。