2021年の春頃だっただろう。事業承継に関する仕事をしている友人と食事をした時のことだ。他愛もない話の中で、彼は「大阪府の箕面市に後継者を探している書店がある。お前やってみたら?」と切り出した。彼としても半ば冗談だったと思う。確かに作家も書店も広く出版業界の中にはいるが、あまりにもかけ離れているのも事実。それは無理だろうと返したと思う。だが、その店が無くなってしまえば、駅から歩いて行ける書店はなくなってしまう。高齢者は特に困るのではないかという話は、心に引っ掛かるものがあった。
食事が終わる時、まずは一度、書店の社長さんに会ってみようかなと私は友人に返答した。それから一月ほどで件の書店に足を運び、「私でよければやってみます」と、社長さんに答えていた。