私が好きだったのは焼きそばパンだ。コッペパンに、焼きそばとマヨネーズが挟まれ、上に紅ショウガがのっている。特段、変わったところは何も無い。が、美味いのである。この焼きそばパンを中心に、あと二つくらい買うのがベストの布陣だ。
焼きそばパンは、二つくらいしかなかったため、すぐに売り切れてしまう。四時間目のチャイムが鳴ると同時に、すぐに向かわねば間に合わない。当時、パン屋さんは一階の玄関口の近くに机を並べて販売していた。私の学校は中学一、二年生の教室が一階、中学三年生、高校一年生は二階、高校二、三年生は三階にあった。
教室が一階にあった頃はともかく、三階になってからはもう必死だ。廊下を走っているのを先生に見咎められれば時間をロスしてしまう。これは確実に間に合わない。よって競歩選手かのような速足で向かうのだ。それでも二度に一度くらいは焼きそばパンが売り切れてしまい、他のパンを主軸に買わねばならない。他のパンも十分に美味しいのだが、やはり逃した時は悔しかったものである。