東日本大震災から10年
地域文化の力を伝える特別展開催中
2021.04.10
岩手県の釜石市の南部藩壽松院年行司支配太神楽
(なんぶはんじゅしょういんねんぎょうじしはいだいかぐら)
国立民族学博物館(吹田市)で、特別展「復興を支える地域の文化―3・11から10年」が開催されている。5月18日まで。
実行委員長・日髙真吾さんによると、東日本大震災では、郷土芸能の再開が復興の原動力となった。そこで、第1章では三陸に伝わる郷土芸能「仰山流笹崎鹿踊り(ぎょうざんりゅうささざきししおどり)」(大船渡市)、「大槌城山虎舞(おおづちしろやまとらまい)」(上閉伊郡大槌町)など6つの芸能を紹介。復興を後押しする地域文化の可能性を探る。会場には祭囃子が流れ、衣装をまとったスポーツ用のマネキンが芸能特有の動きを細部まで再現。現地の雰囲気を伝えている。
第2章では、被災した文化財を救出し、保管する「文化財レスキュー」の活動を紹介。石巻市釜谷地区で救出された、同地区の檀那寺「観音寺」の「大般若経」や、獅子舞で用いる「獅子頭」などが展示される。これらは同地区で江戸時代から続く「大般若経巡行行事」で用いられるもので、「大般若経」は地域住民によって自主的に瓦礫の中から拾い集められ、技術者の指導のもと修復作業が進められた。
第3章では、宮城県西部に位置する牡鹿半島鮎川浜の捕鯨文化などを紹介し、地域文化が災害をきっかけに意識され、あらたに研究が進められていくことを伝えている。第4章では、明治29年の津波を伝える岩手県釜石市の「海嘯遭難記念之碑(かいしょうそうなんきねんのひ)」など、被災の教訓を後世に伝える記録を展示する。
12枚の大漁旗が会場を彩り、復興を支えてきた漁師町の地域文化に触れることができる本展。同館の人文知コミュニケーター神野知恵さんは「地域の人のために行われてきた東北地方の郷土芸能は、これまで関西ではあまり知られてこなかった。外出が難しい状況ではあるが、たくさんの人に来てもらえたら」と話している。
関連イベントとして、南三陸町の漁村・波伝谷(はでんや)に密着した「願いと揺らぎ」、石川県輪島市皆月の山王祭をめぐる人々を描いた「明日に向かって曳け」の上映会なども開催。要事前申し込み。詳しくは同館ウェブサイトで。
記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。