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〈MONTHLY OF TOPICS〉魅力的なまちづくりに欠かせない 地域のコミュニティの役割とは

2021.04.30

地域のコミュニティの役割とは何か、どうすればその活動で心豊かで魅力的なまちにできるのか――。都市計画や、まちづくりが専門の茨木市在住の久隆浩・近畿大総合社会学部教授は、それを長年研究してきた。そして昨年来のコロナ禍が、地域コミュニティの重要性を改めて浮き彫りにしたと考えている。

久さんによると、社会を動かす仕組みには、行政が担う「公」、主に経済分野の「私」、コミュニティが支える「共」の三つがある。平常時は自治会や市民活動団体などの「共」に頼らなくても、「公」と「私」でやっていける。「私」の部分でお金があれば多くが解決でき、それが難しければ「公」である行政に頼めば何とかなる。

コロナ禍で浮き彫りになった
地域コミュニティの必要性

しかし、コロナ禍では経済が止まり、「私」が当てにならなくなった。行政は法や制度で動くため、機動的に必要な対策を進められない。結局、頼りになるのは「共」、地域の支え合いということになる。例えば茨木市では昨年、飲食店を支援しようと、市民や事業者が市限定の飲食宅配サービス「イーバーイーツ」を立ち上げた(宅配は3月末で終了)。震災など災害でも「共」が支えになるのは同じだ。久さんは「地域で自分が動くことでこそ、周りにも助けられる。そのことに多くの人が気付いてほしい」と思う。

日々の消費行動を見直すことが
地域の活性化につながる

さらにもう一つ、考えてもらいたいことがある。地元のお店を大事にすることだ。行政の助成金をもらった市民活動団体の会計報告に、大規模ホームセンターの領収書があった。久さんは「地元の金物屋を使えませんか」と尋ねた。「高いし、品揃えも限られるし……」。車が使えるうちはいいが、高齢で乗れなくなったとき、近くのお店がなくなっていたら?「必要な品は取り寄せてもらえばいい。少々高くても身近な店で買い物することは、将来困らないための『保険』と考えて」。日々の消費行動も地域をつくる重要な要素だと強調する久さんは、外食もなるべく茨木の店を使う。

「北摂と一口に言っても、閑静な住宅街、多様な土地利用が複合した下町と、それぞれに地域性がある」と久さんは言う。「でも地域を愛する人がスクラムを組んで支え合っていくことで、地域の元気をつくり出していくことができるという点は、どこも共通すると思う。支え合いはコロナ禍を経てますます大切になっている」。

久教授がファシリテーターを務める北千里地域交流研究会の様子。 20年にわたって開催されている。

久 隆弘 教授
近畿大学総合社会学部 総合社会学科 環境・まちづくり系専攻 教授
都市計画・まちづくりを研究。関西各地の現場に入り、まちづくりやNPO活動、市民活動、商業活性化、地域福祉、コミュニティ・ビジネスなど総合的に支援している。


◆久教授は2021年7月末発行予定の「北摂まち本」にも登場予定です。
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