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CULTUREコラムVOL.22 梅花から「令和」を込めて

2021.08.08

ゲリラ豪雨とスサノオノミコト

梅雨が明けて、本格的な夏の到来。大きな積乱雲は、力強さを感じさせてくれます。ただ、気になるのがゲリラ豪雨。

日本の神話に思い起こされるのは、スサノオノミコトです。『古事記』では、海原を治めるように命じられるのですが、役割を果たしません。成人して髭がみぞおちにとどくまで、亡き母に会いたいと泣きわめいています。泣くさまは、「青々とした山を枯らし、川や海をすっかり干上がらせてしまった」といいます。歩けば「山や川がどよめき、国土がすべて震えた」とあります。高天原(たかあまのはら)という天上界からは、災いをもたらす神として追放されました。

ところが、ひとたび出雲(島根県)に降り立つと、ヤマタノオロチを退治した英雄神に変化します。ヤマタノオロチは、眼がホオズキの実のように赤く、ひとつのからだに八つの頭と八つの尾があったそうです。ヒカゲノカズラや檜・杉などが生え、長さは谷八つ、山八つにもわたっていました。その腹はいつも血にまみれ、ただれていたといいます。ある時期になると村にやって来て、娘を食べたと伝えられています。

谷八つ山八つもの大蛇が、檜や杉の木を背負って動く様には、大雨による土砂崩れを思い浮かべてみてください。それによって起こる河川の氾濫が、大蛇として物語化されています。ある時期とは、台風の季節を指します。氾濫を鎮めるために、娘は生け贄にされていました。

こうした習俗を打ち破るように、ヤマタノオロチを退治したのが、スサノオノミコトでした。カメに酒を準備させ、飲んで眠ってしまったところを切り刻んだとあります。その尾から出てきたクサナギノツルギの名は、聞いたことがあると思います。

スサノオノミコトは、出雲まで出かけなくても、近所に素盞嗚尊神社(須佐之男命神社)を探すことができます。田んぼや河川等があると、暴風雨を鎮めている様子が想像されます。

台風の季節も変わり、一時の雨も激しさを増しています。昨今のスサノオノミコトは、あちらこちらで多忙を極めているのではないでしょうか。

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梅花女子大学教授 市瀬 雅之

現代訳から原文までを用いて『万葉集』に文学を楽しむほか、『古事記』や『日本書紀』等に日本神話や説話、古代史をわかりやすく読み解く。中京大学大学院修了 博士(文学)。著書に『大伴家持論 文学と氏族伝統一』おうふう 1997年、『万葉集編纂論』おうふう2007年、『北大阪に眠る古代天皇と貴族たち 記紀万葉の歴史と文学』梅花学園生涯学習センター公開講座ブックレット 2010年。ほか執筆・講演・講座多数

 

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