CULTUREコラムVOL.23 梅花から「令和」を込めて

旧街道と国宝
高槻市・茨木市・箕面市を貫く国道として、171号線があります。その近くに西国街道と呼ばれる道があることをご存じでしょうか。場所によっては、江戸情緒を感じさせる建物に出会うことのできる旧街道です。『万葉集』が編まれた時代には、山陽道と呼ばれていました。
地図を開いて、奈良市から山を越えないように、大阪へ入ることを考えてみてください。山麓を石清水八幡宮まで北上すると、淀川にあたります。枚方市から高槻市に、川を渡るところの薦(こも)が有名だったようで、三島を詠む万葉歌を紹介したことがあります。第26代継体天皇陵とされる今城塚古墳、太田茶臼山古墳を右手に見ながら歩くことができます。ずいぶん北へ遠回りをしていますね。地図では、わかりやすい171号線の方を辿ると、池田市から西宮市の国道2号線へと出ることができます。その先が神戸市。物を運ぶ陸路は、奈良から険しい峠を越えることを避けて、急がば回れをしていたようです。都が京都に遷っても、北摂地域を通る道に変わりはありませんでした。今日でも物流の拠点を担って、発展している様子を確かめることができると思います。
さて、交通の利便性が良くなると人が集まります。奈良時代に藤原仲麻呂のもとで活躍した石川年足(いしかわのとしたり)という高級官人がいました。墓誌が高槻市で発見され、国宝に認定されています。『万葉集』は、天平勝宝四年(752)に催された新嘗会(にいなめえ)の肆宴(しえん)で、孝謙天皇の詔に応えた生前の歌を、次のように残しています。
天(あめ)にはも五百(いほ)つ綱延(つなは)ふ
万代に国知らさむと五百つ綱延ふ
天尓波母 五百都綱波布
万代尓 国所知牟等 百都々奈波布
(巻19・4274番歌)
新嘗会のために建てられた大宮の装飾を神話のように、「天にはたくさんの綱がはりめぐらされています。古から今に続くように(それは未来までも)国が栄え続けるようにと(願いを込めて)、たくさんの綱がはりめぐらされています」と言祝(ことほ)いでいます。
年足の墓誌が発見されたのは文政3年(1820)のこと。遺されたものが、私たちにいろいろなことを教えてくれます。
◊ ◊ ◊ ◊ ◊
梅花女子大学教授 市瀬 雅之
現代訳から原文までを用いて『万葉集』に文学を楽しむほか、『古事記』や『日本書紀』等に日本神話や説話、古代史をわかりやすく読み解く。中京大学大学院修了 博士(文学)。著書に『大伴家持論 文学と氏族伝統一』おうふう 1997年、『万葉集編纂論』おうふう2007年、『北大阪に眠る古代天皇と貴族たち 記紀万葉の歴史と文学』梅花学園生涯学習センター公開講座ブックレット 2010年。ほか執筆・講演・講座多数

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