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高槻市・樫田地区の町おこしに  「どぶろく樫田」第2弾 今冬発売

2021.11.01

高槻市の樫田地区で育った「きぬひかり」を使用し、地元の人たちの手で作り上げた「どぶろく樫田」。今年3月に発売すると間もなく1,300本が完売するなど話題を呼んだ。製造元の高槻酒文化研究所(芥川3)の代表であり創業189年の老舗酒店「西田本店」(住所同じ)を営む西田直弘さんは「このどぶろくが、町おこしの一助になればうれしい」と話し、第2弾の製造に向けて準備を進めている。

※トップ画像は「どぶろく樫田」第1弾を手にする西田さん。西田本店にて

 

「地元のどぶろくを残したい」
原から樫田へバトンタッチ

 

樫田地区1

風光明媚な樫田地区

高槻市の原地区と樫田地区は2007(平成19)年に「どぶろく特区※」として認定されており、間もなく製造を始めた原地区「畑中農園」のどぶろく「原いっぱい」が長年親しまれてきた。しかし製造元の事情により2018年で生産中止に。

西田さんは「地元のどぶろくがなくなってしまうのは、もったいない」と、存続させる方法を模索するも覆ることはなかった。そこで自ら有志を集めて会社を設立。樫田地区の農家と契約を交わし、近くに醸造所を建てた。

酒類の製造免許取得など不慣れな手続きに奔走し、昨秋にようやく製造の目途が立った。コロナ禍の影響を受け、当初の予定より遅れて今年3月に醸造をスタートさせた。

樫田地区2

樫田地区の田んぼ。「どぶろくをきっかけに、ぜひ樫田地区に足を運んでみて下さい」と西田さん

 

手探りの醸造
「初めてとしては100点」

 

ほぼ全員が素人だったため、造り酒屋の指導を受けながら手探りの醸造だった。醸造期間の3週間は毎日朝晩の2回、気温や室温をチェックしに樫田を訪れ、発酵の様子を見ながら混ぜ具合も変えていく。

「生まれた子どもを育てるように、寒ければ毛布を巻いて、温かい時は扇風機を回しました」と振り返る。

醸造所

樫田地区にある醸造所。今年は友の会会員を募り、11月に見学ツアーを予定している

出来栄えについて、「辛口ですっきり、キレがあってさわやか。どぶろくは酸味が強いといいますが、これは比較的柔らかい。初めてとしては100点だったのではないでしょうか」と笑顔で話す。度数はやや高めの17度だったが、「ありがたいことに、お客さんが『リキュールや牛乳で割って飲んだらおいしい』など、飲み方をSNSで拡散してくれました」

第1弾は想像以上に評判を呼び、瞬く間に完売した。

醸造所看板

醸造所に掲げられた看板

 

情熱の源泉は
地元への思いと“ロマン”

 

70歳を超えてからの新たな挑戦。何が西田さんをつき動かしたのだろうか。

「高槻のどぶろくを終わらせたくない、という気持ちが一番にありました。あとは、これまで小売の酒屋としてやってきた自分が、一度は作る側になってみたい、というロマンでしょうか。色々な人に声をかけて、『西田さんがそんなに言うなら』と協力してくれた。私1人では絶対にできなかったことです」

店外観

芥川商店街を抜けてすぐにある西田本店は創業189年

これまでも地元コミュニティの会長を務めるなど、地域振興に力を入れてきた西田さん。集まってくれた仲間と共にどぶろく造りという1つの目標に向かって情熱を燃やし、第1弾の完成にこぎつけた際は喜びを分かち合った。

メンバーのほとんどが他に仕事を持つため、毎日のチェックが欠かせないどぶろく造りは今のところ年1回のみ。「まずは3年、しっかりいいものを作って広めていきたい。将来的には、冬から春にかけて2,3回作れるようになればと思います。そのうち、醸造に興味を持つ人も出てきてくれるとうれしいですね」と西田さんは話す。

 

※どぶろく特区
「濁酒(どぶろく)」の製造において、年間の製造見込み数量が6キロリットル以上なければ酒類の製造免許が取得できないところ、認定特区で要件を満たせば6キロリットル未満でも製造免許の取得が可能となるもの。高槻市では、構造改革特別区域計画「高槻・とかいなか創生特区」(どぶろく特区)が平成19年、大阪府で初めて認定を受けた。

どぶろく樫田(720ml)2,300円。今年は12月5日から1,500本限定販売。西田本店で購入可能。予約受付中。問い合わせは同店(072-685-0200)

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