地域情報紙「City Life」が発信する地域密着のニュースサイト

将来の学力に大きく影響する「読書」 幼少期から楽しく読むことを始めよう

2021.11.01

あるデータによると、中学生の約5割が教科書の内容を読み取ることができないといいます。その原因は読書をしない子が増えているから、と話す心理学博士の榎本博明さん。読書の重要性について聞きました。

 

学力の基礎となる、語彙力や読解力は
幼少期からの『読書習慣』で育まれる

 

学力の二極化が進む昨今、その原因となっているのが、子どもたちの読解力の低下です。読解力が低いと教科書に書かれている内容を読み取ることができないだけでなく、授業で先生が話していることも理解できない状況になり、結果的に学力の低下を招くことになります。逆に読解力の高い子は総じて、幼い頃から読書を楽しんでいる傾向があり、中学受験などに出てくる、難解な文章問題(小説や評論)も解いていくことができています。
映像が流れる動画やゲームとは違い、読書は頭の中で能動的に想像力を働かせて、場面を立ち上げる必要があります。こういった能動的に考える習慣も、これからのAI時代において、ますます必要な力になってくることでしょう。

本を読むと、多くの言葉に触れるため、読書習慣のある子とそうでない子では獲得している言葉(語彙)の数が違ってきます。
語彙が豊かであれば、文章を理解しやすく、文章を理解する力があれば、わからない単語の意味を文脈から推測でき、新たな語彙を獲得していくというように、語彙力と読解力の間には、相互促進的な作用が働いています。語彙が少ないと読書が苦痛になり、ますます本から離れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

わが子を読書好きにしたいのであれば、常に本が身近にある環境を作ってあげることが大切です。まだ自分で読むことができない1歳以前でも、絵本の読み聞かせからスタートすれば、親子で楽しい時間を過ごしつつ、語彙力を高めていくことができます。言葉が話せる2歳くらいになれば、読み聞かせをしながら、「どうしてこの子は泣いているんだろうね?」というふうに質問をしてあげるといいでしょう。本離れしている親御さんもこの機会に、お子さんと一緒に読書で世界を広げてみてください。

 

『読書』で得られるその他のメリット

 

読書の効果については、語彙が増える以外に、間接経験が増えることが挙げられます。本の世界に浸ることで、主人公をはじめ様々な登場人物の人柄や人生に触れられるので、世の中にはいろんな人がいるということが実感できます。こうした経験は、心の中の世界を広げてくれ、現実生活における判断力の向上にもつながっていきます。

 

【おすすめの本】

読書をする子は○○がすごい

 

著/榎本 博明    定価/990円
出版 : 日経プレミアシリーズ
Amazon、楽天ブックスで購入可

テストの問題文が理解できない、意思疎通がうまくできない子どもたち。ディスカッション型の学習をしても、発言する内容はお寒いものばかり…。読書の効用は語彙力や読解力にとどまらない。子どもが豊かな人生を送るために、いま親としてできることとは何かを説く。

 

【この方に聞きました】

榎本 博明さん

心理学博士
MP人間科学研究所 代表

東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務のあと、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授を経て、現職。著書に『伸びる子どもは○○がすごい』『ほめると子どもはダメになる』他多数。

記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。