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【SDGs】半世紀かけて育んだ緑と歴史で新たな未来のモデルを目指す万博記念公園

2021.12.06

EXPO2025大阪・関西万博を間近に控え、再び脚光を浴びている万博記念公園。1970年の万国博覧会では、当時の最新設備・機構を採用し、人々に未来への希望を与えた。閉幕後は、時代に歩調を合わせて少しずつ形を変え、地元住民の憩いの場としてなくてはならない存在となった。半世紀かけて緑を育み歴史を刻んできた公園は、コンテンツを活かしてSDGsにも積極的に取り組み、さらなる“未来”のモデルとして期待されている。

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森再生の過程で出た残材をチップや堆肥に

万博記念公園と言えば緑豊かな森。博覧会終了後に取り壊されたパビリオンの跡地を整備して作られ、人の手が加えられない“自然植生”を目指してきた。その結果、緑の量としては森を再現できたものの、背の高い木以外が育たないという問題があった。公園の指定管理者「万博記念公園マネジメント・パートナーズ」の伊藤保葉さんは、「森づくりのためには、ある程度人の手を入れる方が木も育ちやすいんです」と話す。同社が運営を開始した約3年前から、府と協力して樹木の管理を強化することに。間伐して木々の中に光を取り入れることで、健全な森の姿に戻していくなど一定の効果が期待できるという。

その際に出る剪定枝、間伐材といった“残材”を一ヵ所に集め粉砕してチップにし、さらに熟成させた堆肥もつくっている。チップは舗装材として、堆肥は花壇で利用するほか、園内でも販売。ガーデニング用品として好評を得ている。また、園内にあるレストラン「薪窯ピッツァ・カフェ ノースガーデン」では薪も使用するなど、森の育成を目的として排出された残材をより効果的な形で自然に戻すサイクルを作っている。

園内の一角にある「残材ヤード」。昨年は枝や幹など樹木類だけで2,826㎥の残材が集まった。

水や電気を園内で循環

循環型エネルギーにも注力している。芝生や樹木などへの散水やトイレ洗浄の水は、エリアによって地下水や池に溜めた雨水をくみ上げて利用。また、モノレールからも見える太陽光パネルは、環境に配慮した公園を目指してNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同研究により、最大電力200キロワットの太陽光発電設備を2005(平成17)年に設置。園内の電力として利用し、消費電力量やCO2排出量の削減に貢献している。

太陽光発電設備を自然文化園南西斜面に設置。

平和学習ほか教育の場として活用

太陽の塔をはじめとする博覧会当時のアート作品や展示品、そして国際的な研究拠点でもある国立民族学博物館が公園敷地内に有り、文化的価値も高い。

中でも注目は、愛媛県宇和島市市長だった中川千代治が1951年、ニューヨーク国連本部に贈呈した「平和の鐘」のレプリカだ。鐘は自身の戦争体験から「二度と戦争をしてはいけない」と決意した中川が、平和活動のために世界各国を回り、ローマ法王をはじめ多くの賛同者の支持を得て鋳造したもの。1970年博覧会時には、国連本部から借り受けて展示された。現在のレプリカは博覧会中にニューヨークにあった姉妹鐘で、今なお継続している平和活動の象徴でもある。これら文化施設や史料は子どもたちの教育の場としても活用が広がっており、今後はプログラムをさらに充実させる予定という。

EXPO’70 パビリオン前にある「平和の鐘」。

ウォーキングや公園管理で健康維持

来園者が自然とふれあいながら健康を育む場でもある。園内のノルディックウォーキングコースは、国際ノルディックウォーキング連盟(INWA)と特定非営利活動法人日本ノルディックフィットネス協会(JNFA)の公認で、2012(平成24)年にアジアで初めて認定されたことでも知られる。また地元ボランティアなどが公園管理活動にも参加。花壇の植え替えや清掃など、楽しみながらできる社会貢献として地元住民にも好評だ。

このほか、都市部にある広大な土地という立地を活かし、防災拠点に指定されるなど公的な役割も担う。夢を与えた50年前から、地道な取り組みで循環の仕組みを作り上げ、次の世代へと引き継いできた公園。馴染みある憩いの場所をいつもと違う視点で見れば、きっと新しい発見があるはず。


 

PROFILE

万博記念公園
写真は公園西側に広がる花の丘。取材時はコスモスフェスタが開催中で多くの人が訪れていた。伊藤さんが手にしているのは、間伐材をもとにつくられた幹チップ。堆肥化してコスモス畑にも使われている。
https://www.expo70-park.jp/

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記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。