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演劇を通じて地域の魅力を再発見 京都発の劇団が描く旧吹田村の人間ドラマ

2023.03.07
2月18日、19日に上演した「カレーと村民」。物語の舞台は100年以上昔の旧吹田村。

 

2月18・19日、京都を拠点に活動する劇団ニットキャップシアターが、吹田のメイシアターで演劇「カレーと村民」を上演した。物語の舞台は100年以上昔の旧吹田村。なぜ京都発の劇団がこの作品を創作したのだろうか。作品の見どころや楽しみ方も含めて、同劇団の高原綾子さんに話を聞いた。

日露戦争直後の旧吹田村を舞台に

「カレーと村民」の舞台は、1905年夏の旧吹田村。日露戦争が終わり、講和会議の結果が発表された一日の出来事を描いている。舞台のセットは、吹田市内に今なお残る古民家「浜屋敷」の土間を再現したもの。安威川と神崎川の合流地点に近く、人や物が盛んに行き交う庄屋屋敷で、13人の登場人物による人間ドラマが繰り広げられる。

「カレーと村民」は2012年にメイシアターと大阪大学の共同事業として制作し、翌年に上演。その後、2020年に劇団作品として創作が始まったが、コロナ禍の影響で延期や中止が続いた。世の中の情勢に翻弄されながらも、京都や東京での上演を経て、今回の吹田上演でいわば「里帰り」を果たした。

演劇を通じて地域に親しむ

なぜ、京都発の劇団が、昔の吹田を題材とした作品を制作したのだろうか。その理由は、ニットキャップシアターがこれまで歩んできた道のりと関係している。同劇団の活動内容の一つに、「地域に密着した作品づくり」がある。これまでにも、今作の脚本・演出を手掛けた劇団の代表者”ごまのはえ” さんの出身地である枚方をはじめ、舞鶴や豊岡などでも地域密着の作品を手掛けてきた。「作品上演だけでなく、地域の劇場や自治体と協力して親交を深めて、演劇を通じて地域を元気にしたり、作品創作を再発見したり、そういうきっかけの場となることも大事にしています」と高原さんは語る。

「カレーと村民」の創作にあたっても、ごまのはえさんが吹田の郷土史家を取材し、地域に眠る当時の写真を収集するなど、地域との交流を重ねていった。そして、巡り巡ってたどりついた浜屋敷の土間を見て、今作のインスピレーションが湧いたという。

朝ドラとしても、歴史物としても

作品の見どころについて、高原さんは「13人の登場人物がそれぞれ持つ意見や考えのぶつかり合いが、最終的にどうカレーにつながっていくのか。13人のうち誰かに自分を投影しながら見れば、より楽しめると思います」と語った。また、「日露戦争後の混乱期と現在のコロナ禍は、考え方や時代が変わる大きな節目という意味でリンクするように思います」とも語り、昔の物語の中から現在にも通じる要素を見出だす楽しみ方もできるという。

高原さんいわく、「カレーと村民」はこれまで演劇を見たことがない人にもおすすめできる作品なのだとか。「朝の連続テレビ小説みたいな感覚で、誰でも気軽に楽しめます。安威川や神崎川、アサヒビールの工場など、今も残る地名や場所が劇中にたくさん出てきますから、地元の人はより楽しめると思います。3世代で見に行って『実際どうやった?』と話してみるのも楽しそうですね」。

登場人物の思いが交錯する人間ドラマとしても、当時の暮らしに触れる歴史物としても、多用な楽しみ方ができる「カレーと村民」。観劇する機会を逃した人は、ニットキャップシアターの公式WebショップからDVDを購入することもできる。

 

ごまのはえさん/大阪府枚方市出身。劇作家・演出家・俳優。ニットキャップシアター劇団代表。京都を創作の中心に全国で活動を展開している。2004年に『愛のテール』で第11回OMS戯曲賞大賞を、2005年に『ヒラカタ・ノート』で第12回OMS戯曲賞特別賞を連続受賞。2007年に京都府立文化芸術会館『競作・チェーホフ』で最優秀演出家賞を受賞。劇作家、演出家として注目を集めるほか、演劇ワークショップや演劇講座の講師としても活躍している。2016年より財団法人地域創造派遣アーティスト。

写真提供=劇団ニットキャップシアター(撮影:脇田友/2021年3月京都公演)

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