コロナ禍の緊急融資が返済開始の段階へ経営の悩みについて、信用保証協会への相談を呼びかけ
2023.03.04
2023年、中小企業や小規模事業者を悩ますある問題が迫ってきた。コロナ禍の影響で売上が減少した企業の多くは実質無利子・無担保の融資で、信用保証協会の保証が付された「ゼロゼロ保証」を利用した。このゼロゼロ保証について、多くの企業が返済据置期間を終えて2023年度から返済が始まるのだ。経済の先行きが不透明な状況で、地域の企業はどんな対応ができるだろうか?大阪信用保証協会の千里支店で支店長を務める土嶋康嗣さんに話を聞いた。
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から資金を借り入れる際に保証人になる、つまり企業が融資を受けやすくなるように支援してくれる公的機関だ。大阪府内では約10万7千社、千里支店管轄の北摂地域では約1万4千社が協会の保証を受けている。
現在、企業を悩ませているのが、前述した「ゼロゼロ保証」の返済据置期間終了にともなう借入金の返済だ。協会の保証利用先約10万7千社のうち、8割弱がゼロゼロ保証を利用しており、2023年度から返済が始まる企業はそのうち3割を占める。コロナ禍の影響にウクライナ情勢や物価上昇なども重なり、経済回復の兆しがいまだ見えない中で、返済が大きな負担になると予想される。
金融・経営の両面で支援
そこで、信用保証協会では金融支援と経営支援の両面で、各企業を支援する方針だ。金融支援では、ゼロゼロ保証等の返済負担を借換により軽減できる「伴走支援型特別保証」や、経営改善・事業再生に必要な資金を借入できる「経営改善サポート保証」などの活用を呼びかけている。経営支援では、企業のニーズに応じた専門家の経営診断や、中小企業診断士の資格を有する協会職員による財務診断など、幅広い支援メニューを提供している。
また、資金面はもちろんのこと、材料の仕入れ、店舗の宣伝、販路の拡大など、企業が抱える課題はさまざま。それだけに、土嶋さんは信用保証協会だけではなく、金融機関や自治体、商工会議所など各団体の連携が大事だと説く。「現状、各機関がそれぞれで支援を行っている状況です。特に経営支援については連携することで相乗効果が生まれると考えています」。
企業の伴走者として地域の活性化に貢献
一方、協会として数々の支援メニューを用意していながら、その内容は広く知られていないのが現状だ。融資の保証を行う際は金融機関が窓口になるため、顧客になる企業との接点が少なく、提供する支援メニューや協会の存在そのものについて周知が思うように進んでいないという。また、保証業務を行う都合上、事業内容などを企業に細かくヒアリングする必要があり、警戒感を生んでしまうケースもある。ただ、協会としても、保証した企業が倒産するデメリットは大きい。土嶋さんは、「お客様の保証人になる信用保証協会は、本当はお客様に近い存在だといえます。返済のお悩みや経営上の課題をお聞きするなど、お客様と対話し、一緒になってとことん考えるのが私たちの仕事です」と語る。
手厚いサポートを行うのは、支援した企業に地域経済の活性化を担ってほしいという思いがあるからだ。「商売を続けている企業には取引先があり、従業員やその家族がいて、地域でいろんな人の暮らしを支えています。そういう企業があってこその地域経済だと考えています。事業の継続が困難になっても、何らかの支援ができないかあきらめずに考えていきたいと強く思っています」。地域経済を活性化させるには、地域に根ざす企業が元気になることが必要だ。最後に土嶋さんは「経営上のお困りごとがある方は、ぜひお気軽に信用保証協会にご相談ください」と呼びかけた。
大阪信用保証協会 千里支店 支店長 土嶋 康嗣さん
記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。