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-吹田- 江坂公園が装い新たに開園 地元吹田の企業が込めた思いとは?

2023.05.12

4月8日、江坂公園がリニューアルオープンした。カフェやレストランなどの新設に加え、図書館や大型遊具、トイレ、休憩所も大幅に改装し様変わりを果たした。吹田市のPark-PFI事業(※)で指定管理者に選ばれ、公園の運営管理を行うグリーンホスピタルサプライ株式会社のWell-Being推進Groupで部長を務める白石敦司さんに、生まれ変わった江坂公園へ込めた思いを聞いた。

※ Park-PFI:国や地方自治体の公募を通じて、公園の管理者を民間事業者から選ぶ制度。選任された指定管理者は、公園の運営や整備のほか、飲食店など収益施設の設置を行うことも可能。実例として、大阪城公園の再整備などが有名。

「地元への恩返し」ではじめた公園事業

リニューアルした江坂公園には、公園の緑に溶け込んだデザインが特徴のカフェやレストラン、公園のシンボルでもある大型遊具「バオバブツリー」などを新設。敷地内の江坂図書館には子どもの読み聞かせスペースや飲食可能エリアを設けたほか、屋外に電源コンセント付きのベンチを導入するなど、細部へのこだわりも見せる。江坂駅前のビル群に囲まれていながらも、緑の豊かさを感じながら多種多彩な方法で利用できる地域の拠点として、装いを新たにした。

江坂公園の指定管理者を務めるのは、吹田市春日に本社を構えるシップヘルスケアホールディングス(以下、SHIP)のグループ企業である、グリーンホスピタルサプライ(以下、GHS)だ。GHSは医療機器の供給や病院のコンサルティングをはじめとしたヘルスケア関連の事業を核としており、一見すると公園の運営とは無縁に見える。江坂公園の指定管理者に応募した理由について、白石さんはこう語る。「もともと桃山公園(吹田市桃山台、4月9日リニューアルオープン)の指定管理業務に手を挙げたのがはじまりでした。SHIPは吹田市春日で創業し、昨年30周年を迎えた企業です。節目の年を迎えて『地域への恩返し』ができないかと考えている中で、桃山公園と江坂公園の公募が相次いで開始され、どちらの事業も『われわれがやらねば、誰がやる』という気持ちで取り組みはじめました」。

グリーンホスピタルサプライ株式会社 公共事業プロジェクト 担当部長 白石 敦司 さん

「知恵を絞り、汗をかく」創業者の教え

一方で、「公園の指定管理業務が難しいのは十分承知していました」とも語る白石さん。病院向けのノウハウは豊富なものの、公園事業は新たな挑戦だったという。外部の企業に全て任せてしまう選択肢もある中で、SHIPの創業者である古川國久さん(現・代表取締役会長)の教えにもとづき「自分たちでできることは、知恵を絞って汗をかく」方法を選んだ。例えば、図書館の運営などの窓口業務は専門業者への委託が一般的だ。経験がない中で自社運営を選択し、社員やパートを募集、研修する所から始めた。カフェの運営についても、病院や介護施設へ食事を提供するグループ会社(シップヘルスケアフード)が担っている。「委託ではなくSHIP独自のやり方で江坂公園の在り方を考えたい」と白石さんは話す。

「 PARK CAFE BRANCO」。カフェ内にブランコを設置。公園内でのくつろぎ、遊び心を演出した。

にぎわいを生む地域のシンボルとして

公園という公共施設をリニューアルする上で大切にしたのは、「この地域には何が必要なのか」を現場目線で考えることだった。白石さんは「吹田市や地域のみなさんと膝を突き合わせ、とことん話し合いました」と振り返る。

地域の声を反映させた例として、白石さんは一つの例を挙げた。「当初は、図書館前の広場を一面の芝生にする構想でした。ただ、地域の声を聞くと、『近所でボール遊びをできる場所がない』と。ボール遊び禁止の公園も多いですが、あえてそういうエリアを作って、遊びながら周りに配慮することを覚えてもらうのもいいのでは、と考えて、人工芝のエリアを縮小してボール遊びができるスペースを作りました」。

白石さんたちが連日連夜にわたって心血を注ぎ、ついにリニューアルオープンを果たしたという江坂公園。4月8日のオープン初日には、公園の敷地を埋め尽くす程の人が押し寄せた。大勢の子どもたちが歓声を上げながら遊具で楽しむ姿を見て、白石さんは「自然と涙が出ました。逃げずに取り組み続けてよかったです」と感慨深げに語った。

今後は公園内でのイベント開催も検討しているという。街のにぎわいを創り、地域のシンボルとして長く愛される公園を目指して、新たなスタートを切った。

新設の「good spoon江坂公園店」。緑豊かな環境や景観と調和するデザイン設計で、開放感のあるテラスでの食事が楽しめる。

 

大型遊具「バオバブツリー」は、わんぱく広場の大型遊具を完全リニューアル。都市部にありながら、自然と人が共生し文化を育む江坂公園の独自性を追求した。吹田市初の「インクルーシブデザイン設計」の大型遊具となる。

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