地域情報紙「City Life」が発信する地域密着のニュースサイト

-吹田- 75歳の“幸期幸齢者”が一人歩き旅へ 2年間・4000kmを一冊の本に

2023.05.29
「一緒に歩いているつもりで楽しんでいただければ幸いです」と桐原さん。
『喜寿の青春賦(ふ) 街道歩き4000km』。発行元:澪標、定価2,500円。

 

 

吹田市在住の桐原肇さん(77)が単行本『喜寿の青春賦 街道歩き4000km』を出版した。75歳となったその日から歩き始め、40余年住み慣れ、会社を経営してきた箕面・船場の地から出発。大阪・高麗橋から京街道を京都・三条大橋へ。そこから東海道53次の歩き旅がスタートした。「もともとは千葉に住んでいる、ひ孫に会うために歩いて行こうと思ったのが始まりです」と桐原さん。

出発前には長らく使っていたガラケーから慣れないスマホに変えて、道中の写真もすべて自身で撮影したという。「何の訓練も無しに突然歩き出したので、最初の1〜2日は足が悲鳴をあげました。でも京街道を歩き終えた4日目に“何とかやれそうだ”と自信が持てました」。そこから東海道53次、その後は山陽・西国街道56次、長崎街道24次、日光・奥州道中35次、薩摩・豊前街道22次、奥州街道84次を踏破。延べ161日間、4162㎞、602万歩だった。

芦ノ湖から冠雪の富士山を望んだ時は感動したそう。

しかし旅の途中、命の危険を感じたことが何度かあったという。「箱根峠でドカ雪に遭って道が見えなくなった時は、遭難も覚悟しました。何とか藪こぎして大きな道路に出ることができ、閉店まぎわのドライブインで、ご厚意で作ってもらった温かいラーメンを食べて生き返りました」。そんな旅先での出会いもいい思い出になっているという。

本文内には街道や宿場町の歴史なども記されており、桐原さんの目に映った光景の描写と相まって、まるで自分がその場所に居るような感覚になれる。「この旅は若い頃にやりたかった世界一周の旅に行けなかった“やり残し症候群”が原動力でした。私の人生の信条は“ケセラセラ・・・何とかなるさ”と、“小さな一歩”なのですが、まさに箱根峠での危機を乗り越えられたのはその信条のおかげですね」。

旧街道は道路ではなく、こういった山道が多いという。

喜寿の今も青春まっさかりだと話す桐原さん。「サムエル・ウルマン著の詩集『青春』の中で、青春とは心の持ち方を言う、と書かれています。同年代の皆さんが“幸期幸齢者”でいて、それぞれの青春を楽しんでもらえたらうれしいですね」。

記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。