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そこに“ものがたり”がありました 北摂のマチカド 第1回 北野商店〈茨木市〉

2019.12.16

何年も前から佇み、不思議と人々が集まるあの店にはどんなストーリーがあるのか。編集部が体感しお届けします。第1回目は茨木市の「北野商店」さん。そこには長い歴史のなかで、個性豊かな常連客たちとの交流や店主と女将さんのアツいおもてなしがありました。

JR茨木駅から線路沿いにアーケードを歩くと「立呑処」の看板が見えてくる。酒店が営む朝から開いている立呑み店だ。昼の13時、扉を開けるとすでに先客がカウンターに数人。常連客がコップ酒や缶ビールを片手につまみやおでんを食べている。客が自分で冷蔵庫から酒缶を取り出したり、酒をレンジで温めたり、セルフで楽しむその自由さに驚く。常連客はこの店について「落ち着く」と口を揃える。


大正11年から続く立呑処 酒とおでんと人間模様
初代店主・北野重助さんが茨木市福井村で酒米の販売をはじめ、大正11年(1922)、4代目・北野重次郎さんが現在の場所で酒の小売りと立呑みの店を出したのが、ここ「北野商店」のはじまりだ。現在は、6代目店主・北野文雄さんと奥様の女将が店に立つ。

女将に話を聞くと、「おじいちゃん(文雄さんの父親)の話では茨カンさん(茨木カンツリー倶楽部)の創業時(大正12年創業)からうちはお付き合いさせてもらってたみたい。茨カンさんの料理人さんがうちで醤油とか調味料、お酒を買って運んでたんだけど、『北野さん持って来てもらわれへんやろか』とお願いされて、茨カンさんまで持って行ってたみたい。当時は自動車じゃなくて、荷車にビールやら積んで引っ張るのよ。辯天さんの坂、あそこすごいでしょ。自分の力だけでは引っ張られへんから、主人のお父さんが子どもの力で荷車を押して手伝ってたと聞いています」と話す。「歴史やね」。常連客も思わず頷く。続けて「うちの店、長い人で60年通ってる。主人がランドセルを背負っている時から知ってる人が一番長いです。

「客同士が詮索することもなく、気楽に自由な時間を楽しめるのが良いところ」と話してくれたのは、立呑みが好きで高槻や池田にもよく呑みに行くという常連客のYOSHIさん。この日は夜勤明けにふらりと。

昭和2年生まれの92歳になる人がうちのお客さんの最高齢!さっきパチンコ行ってくるわ言うて帰った人いてはるけど、その人は82歳」と、女将が教えてくれた。「そういう私は38」と、すかさず冗談を挟んでくる常連客は、「ここは良い店。落ち着きますわ。ここで一番怖い人はこの人(女将)や。ママが客の体調を良く見てて『はい、だめ!もう終わり』って(笑)」と、女将との掛け合いを楽しむ。「大体見てきてたらわかるのよ、この人がこれ以上呑んだら酔っぱらっちゃうって。一歩店の外に出て足がふらついてこけたりしたら大変」。長年見てきたからこそわかる常連客の年齢や体調を、店主と女将が気にかけながら様々な人間模様が繰り広げられている。

昭和48年、5代目店主である文雄さんの父親が作り始めてから、継ぎ足し続ける出汁のおでんは北野商店の名物。あっさりとしたやさしい味わいで愛され、テイクアウトもできる。時間帯によって訪れる客層が異なり、日中は仕事を引退した人や夜勤明けの人、夜は仕事帰りの人が多い。最近では女性の一人客も訪れるそうで、「時代が変わってきましたね」と、店主はしみじみ。

呑むだけではない 自然と集まる安心の場に
昨年6月の大阪府北部地震発生当日、13時頃店を開けると常連客が集まって来て呑んでいたそうだ。「みんな『どうやった?』ってお客さん同士状況を話してましたね。ガスが止まっていたのでカセットコンロでおでんを出しましてね」と店主が当時を振り返る。さらに9月に大きな爪痕を残した台風21号の時も、シャッターを開けたら外で常連客が待っていたという。「外はバケツやらいろんなものが風で飛ばされているのに、4、5人来はった。店を閉めようと思ってたけど、お客さん来はったら開けないと」。

約20年通う82歳のいっちゃんは、「週に来ない方が少ないな。もう癖みたいなもんや。自分の家やと思ってる」と話す。自身が作ったというマイカップに酒を入れ、自らレンジで酒をあたためる姿はまさに自分の家のよう。

たとえ災害時の大変な状況でも自然と客はここに集まる。こういったコミュニティがあるからこそ、情報共有の場となり、安心できる場として愛され続けているのだろう。女将が話す。「ここに来るだけでもリハビリになっているんです。家におったらじっと座ってるだけでしょ。ここまで来るのはしんどいと思います」と、高齢の常連客を想う。訪れる人たちは呑むだけが目的ではなく、会話をしたり何気なく過ごせるこの場の存在を大切にしているのだろう。

北野商店の歴史の長さを感じられる、2代目・北野重太郎さんの名前が書かれた明治38年の歴が飾られている。

6代目店主の北野夫妻。

[取材協力] 北野商店

住所
茨木市駅前1-3-8
電話番号
072-622-2036
営業時間
10時~20時
定休日
日曜・祝日休み

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