俳句コーナーVOL.55 入選作品を紹介!
2024.04.03
2月25日締切りでご投句いただいた中から、
山口昭男先生に入選作品を選んでいただきました。
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【 優秀賞 】
消印は春の光の港町
豊中市 山上 秋葵
消印で差出人の住んでいる所や旅先がわかります。掲句に地名は記されていませんが、想像が膨らみます。この便りから春が広がってゆくというのも気持ちよいことです。
【 入 選 】
冴返る屋根の真中に鍾馗さん
岐阜市 ばんかおり
瓦の鍾馗が屋根に見えます。ぶり返した寒さを訴えているような顔です。
クローバーでこの星を埋めつくせたら
豊中市 麻殖生伸子
ストレートに思いを発するのも、時にはよいでしょう。
洋館へゆるき坂道ミモザ咲く
吹田市 高嶋 文範
急な坂道でないところが嬉しい。ミモザの黄色が印象鮮明です。
春の虹後ろ姿のマエストロ
大阪市 平川 直子
演奏中は後姿しか見せない指揮者。窓の外には春の虹。演奏は続きます。
三月をドロップ飴の音にして
豊中市 山上 秋葵
ドロップの缶は懐かしい。寒さがほどけ、さあ子どもたちは野に出てゆきます。
【 佳 作 】
雪しんしん振り子時計の螺子かたき
和泉市 押見げばげば
クレヨンのいびつな丸や吾子の春
高槻市 葉月庵 郁斗
キビキビと尾で風を読む鶚かな
熊本市 貴田 雄介
聖五月カリカリに焼くパンの耳
豊中市 麻殖生伸子
土手に満つ駈けだしそうな土筆かな
高槻市 黒田 豊子
◆ つぶやき評 ◆
いつも見ている自然を凝視すれば、また違ったものが見えてきます。その自然には人間も含まれます。そこに「何だろう」とか「なるほど」という感じがわき立てば五七五の俳句に認めることです。躊躇なくです。
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