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-豊中市- 地域の小さなトライを増やす 交流できる図書室「トライぶらり」

2024.04.09
新千里北町団地でシェア図書室「トライぶらり」。3月2日のプレオープン
イベントを経て、4月20日(土)から7月末までオープンする。

 

UR都市機構は4月中旬から7月末にかけて、新千里北町団地でシェア図書室「トライぶらり」の実証実験を開始する。地域住民らが主体的に運営に参加する私設図書室を敷地内に設置することで、地域の活性化を促すのが狙い。

トライぶらりは一箱本棚オーナー制の私設図書室。本棚のオーナーは、本棚使用料(月額2,000円)を支払うことで、自分好みの本を持ち込み、並べることができる。本を借りる側は無料。オーナーが支払った本棚使用料から図書室の場所代や光熱費を賄い、自走しながら運営していく仕組みだ。店番は、オーナーが可能な範囲で引き受ける。

プロジェクトを担当するUR都市機構の大田健司さんは、2020年3月に始まった静岡県焼津市の「みんなの図書館さんかく」によるコミュニティスペースづくりに影響を受けたという。「NPO法人わかもののまち代表理事の土肥潤也氏が、駅前商店街の空き店舗を活用して民営図書館を開設しました。図書館がきっかけで商店街が活性化して、新しいお店が次々とオープンしているようです」と大田さん。本棚のオーナーから費用を集めて運営する仕組みは全国に広まり、60ほどの事例がある。

新しい交流が生まれる場所に

4月からの開室に先駆け、3月2日には1日限定でプレオープンイベントを開催。約200人が訪れ、本棚7棚に申し込みがあった。「トライぶらり」は、「トライ」と「ライブラリ」を掛け合わせた呼称。「私たちが目指しているのは、地域の人がちょっとした『トライ』をする場所。図書室の店番やハンドクラフトの販売など、『トライ』が増えて、地域が楽しい場所になればいいなと思います」。

UR都市機構による「トライぶらり」の実証実験は今回で2カ所目。昨年10月下旬から12月末には、武庫川団地でも実施した。「高齢の方が地域に貢献したいと本棚を借りてくれました。多くの小学生が遊びに来て、店番をする高齢者との交流も生まれました。高齢者の居場所になったり、新しい交流が生まれたり。意義があることだと感じました。最終的にはのべ1,600人が訪れてくれました」と大田さんは話す。

地域の交流拠点づくりを、あえてUR都市機構が主催しているのには、理由がある。「私たちが主催し、地域の方との会話が生まれることで、悩みや課題を知ることができます。その声をもとにした新しいサービスや地域事業が提供できる可能性もあると考えています」。この実証実験が7月末に終了する。その後は武庫川団地と同様、UR都市機構による「トライぶらり」は終了する。大田さんは、「継続したいという希望があれば、今度は地域に根付いた人が運営者になって、交流の拠点を作っていただけたら」と期待する。本を介しての交流は何を生み出し、地域にどのような影響をもたらすのか。「トライぶらり」が生む、新たなコミュニティと住民たちの「トライ」に注目したい。

UR都市機構の大田健司さん。

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