– 高槻市 – 高槻をぶどうの産地に『パープルMプロジェクト』が始動
2024.07.05
樫田地区にあるぶどう農園。古い木を抜いて、土壌づくりから始める予定だが、生き残っている木もあるという。
コロナ禍のリモートワークをきっかけに「農」が身近な存在に
高槻の樫田地区で新たにぶどうの生産が始まった。仕掛け人はアグリテインメント事業を推進するノウタス株式会社の髙橋明久さん。「もともとはコンサルティング会社に勤務していたのですが、妻の実家が山梨のフルーツ農家で、いずれは継いでほしいと言われていました。ちょうどその頃、コロナ禍になり、社内全体がリモートワークになったのをきっかけに、山梨で農作業をやりながら会社の仕事もやってみたんです」。
実際に取り組んでみると、1日がすごく充実したものに感じたと言う。「日が昇りきると暑くて作業できないので、朝早くから始めて8時とか9時までには出荷してそれでいったん終わり。その後はいつもどおり会社の仕事ができる。両方ともなにかを削るわけではなく、農業ってできるんだな、と思ったのが最初のきっかけです」。この体験談は同じ会社のメンバーにも共感が得られ、実家が農家や畜産農家で、といった話も出てきて、ノウタスを立ち上げることになった。
ノウタス株式会社 取締役会長の髙橋明久さん。「暮らしに農を足す。自分のスキルを農家のために生かすことができます。畑に立つことだけが農業じゃない。様々な形で農業に関わる人を増やすことが当社の目標です。」
オンライン果物狩り、育種などの『パープルMプロジェクト』
コンサルティングで、異業種への参入支援を多数経験していた髙橋さんは、就農する以外にも農家を支援できる方法はあるのではないかと考えた。
そこで、農家向けお天気情報アプリの開発や観光農園の業務効率化、ワーケーション+農業、副業兼業で農家を支援する『ノウタスフリーランス』などをスタート。
ほかにもオンラインぶどう狩り、ぶどうの粒売り、あと値決め販売、育種、シンガポールへの輸出、ぶどうビールの開発など、ぶどうに関する様々な取り組みを行う『パープルMプロジェクト』を進めてきた。
パープルMプロジェクトの第2弾商品であるビール「パープルMエール」。
以前にあったぶどう栽培の歴史高槻で新品種誕生の夢を
そんななか、ラジオ番組の共演をきっかけに交流が始まった、高槻市出身のアイドルタレント村上信五さんを、2023年4月から事業開発メンバー(非常勤)に迎え、パープルM事業のプロジェクトリーダーに据えて、ともに活動をしてきた。
「実は私も高槻出身。そんなことから、このプロジェクトを立ち上げた時に、いつかは高槻でやれたらいいよねと言っていたんです」。そこで実際に高槻でぶどうを作れるのかを問い合わせてみたところ、実は10年ほど前にJAたかつきが樫田地区をぶどうの産地にしようというプロジェクトを立ち上げ、パイロット農園という形で実施していたことを知る。しかし2018年9月の台風21号で、ぶどう畑も甚大な被害を受けたことから、そのタイミングで離農する人も増え、耕作放棄地になっていた。
そこで、高槻市に協力を仰ぎ、JAたかつきを通して地元の自治会や農家の方々に向けた説明会などを重ね、理解を得た上で6月に農園びらきを行った。
「子会社である『ノウタス高槻農園株式会社』を立ち上げ、ぶどう栽培の知識があるスタッフを採用しました。パープルMプロジェクトは、もともと長野で現役ぶどう農家のメンバーからスタートしたので、長野からオンラインで技術指導も行います」と髙橋さん。
生き残っている木もあり、少量ながら今年から収穫できるという。3年後の本格的な収穫を目指し、これから活動がはじまる。「軌道に乗ってきたら、栽培体験など、地域の皆さんとのイベントも企画していきたいと考えています。そして海外に日本のぶどうの素晴らしさを広めていきたいと思っています」。
パープルMプロジェクトのひとつとして、長野県で作られたクイーンルージュ®︎という品種(写真右)。親品種はシャインマスカットなので、皮ごと食べられる。
記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。