-吹田市-「木のお金」がつなぐ子どもと地域の新しい姿
2025.02.01
イベント会場の店舗で働き、木のコインを報酬として受け取る。そのコインを使って好きなものを買う。子ども通貨「mocca(モッカ)」は、子どもたちと地域の交流を促進させる新しい取り組みだ。2023年5月の開始以来、4,500人以上の子どもたちが参加し、延べ12,300回以上の仕事体験を生み出している。また、大阪・関西万博の機運醸成と、地域の魅力向上を図ることを目的とした吹田市との共同事業である。
誰にでもやさしい「働いて稼ぐ」体験
moccaの仕組みはシンプル。例えば地域のお祭りなどのイベントにおいて、運営側は3つのブースを設ける。参加する子どもたちは「受付」ブースで説明を受け、「求人」ブースで働きたい店舗を選ぶ。仕事は5分程度の短時間で、呼び込みやチラシ配りなど、無理なくできる内容だ。仕事を終えると店舗から小切手をもらい、最後に「銀行」ブースで、木製コインのmoccaと交換する。1枚で100円に相当し、会場内の店舗で買い物ができる仕組みだ。
地域をつなぎ、循環させる「通貨」
「通貨とは誰かのために使い、地域の循環をつくる道具でもあります」と語るのは、株式会社midicaの西川聡志さんだ。幼少期から自然が大好きだった西川さんは、「自然の魅力を発信できる仕事を自分でつくりたい」と早くから起業を模索しはじめ、会社員や調理専門学校での学びを経て独立。当初は自然体験イベントの企画運営からスタートした。
転機は2023年。イベントの企画運営に携わっていた、堺市の開口(あぐち)神社で毎年5月に行う祭りの実行委員に任命されたことだったと振り返る。「子どもの成長を祈念する」神事の本質を踏まえ、「大人と子どもの接点をいかに作るか」を考えた末、moccaの構想が生まれたそう。
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株式会社midicaの西川聡志さん
moccaのコインには、万博記念公園の間伐材など、地域にゆかりのある木材が使われている。一枚ずつ職人が切り出し、連携する就労支援施設で協力企業のロゴなどをレーザーで刻印する。「お年玉でさえキャッシュレス決済の時代です。でも本来、お金のやりとりの中には人と人との温かみがあるはず。木の温もりを通じて、それを伝えたかったんです」。
子どもも大人もmoccaを通じて交流を
moccaの運営を資金面で支えるのは、理念に賛同する地域の企業だ。子どもたちが受け取る1枚100円相当の原資や運営費などは、企業の協賛金から捻出されている。この仕組みがあるため、イベントの出店者は金銭的な負担なく、仕事に来る子どもたちを受け入れることができる。
店舗での仕事を終えた子どもたちには、小切手の裏に「ありがとう」「頑張ったね」といったメッセージが添えられ、地域の大人との貴重な交流の機会となっている。また、子どもたちが積極的に呼び込みを行うことで、普段は通り過ぎるブースに立ち寄る人が増えるのだとか。
2025年度は3月9日(日)「吹田日和×mocca(吹田市・ Dew阪急山田)」、4月6日(日)「TAMARIBA(箕面市・森町中央公園)」に参加予定だ。
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